亜急性期脳卒中者の装具処方時期〜骨盤、股関節、膝関節の動きに着目した研究
こんにちは!
理学療法士をしているyukiです。
本日紹介する内容は、”装具処方時期”の検討を行った論文です!
しかも、亜急性期とかなり早い時期での装具処方のタイミングを検討しています。
装具をどのタイミングで処方するべきか、臨床的に悩むことは多くないでしょうか?
今回の論文はその点に関する1考察が行われた研究になり、早い時期の使用と遅い時期からの使用が各関節に運動学的にどのような変化を及ぼすか検討しています!
装具処方に悩む若手臨床家にとって有益な情報になると思います!
では、論文はこちら↓
この論文の詳細です。
掲載雑誌:Gait & Posture, 2018
Impact Factor:2.349
参考文献数:23本
では、内容に入っていきます!
はじめに
足クリアランスの低下は、脳卒中後にしばしば見られる歩行パターンの重要な変化である。
足クリアランスの低下の原因
股関節と膝関節の屈曲低下(Woolley SM, 2001、Chen G et al. 2005)
足関節背屈低下(Woolley SM, 2001、Roche N et al. 2015)
が主な原因で考えられています。
足クリアランス低下に対する戦略として、
・ぶん回し歩行(Chen G et al. 2005、Stanhope VA et al. 2014)
・股関節屈曲増大(Roche N et al. 2015)
・骨盤挙上(Chen G et al. 2005,Stanhope VA et al. 2014、Cruz TH et al. 2009)
などによって代償的な運動が行われている。
短下肢装具(AFO)は、歩行を改善するために使用され、特に遊脚期のクリアランスを改善することが報告されている(Leung J et al. 2009)。
先行研究では、慢性期の脳卒中患者を対象にAFOにより立脚初期、遊脚期、つま先離れにおける足底屈を防止することがわかっている(Tyson SF et al. 2013)
脳卒中後にAFOを導入する最適なタイミングはまだ詳細に分かっておらず(Tyson SF et al. 2013)、臨床においては、脳卒中後早期にAFOを導入した場合の効果を研究することは重要である。
一方で、脳卒中後早期のAFO使用により改善が得られると報告(Cause B et al. 2015)がある一方で、早期の使用で筋肉の廃用につながる可能性も報告され、回復の遅延や長期的な歩行障害につながることが懸念されている(Geboers JF et al. 2002、Lairamore C et al. 2011)。
3D歩行分析は歩行中の関節運動を定量化する上で重要なツールであり(Harlaar J et al. 2010)、AFOの運動学的効果を評価する上で貢献する可能性がある。
運動学を捉えることで、AFOが歩行パターンに及ぼす影響を定量化することができる。
これらによる結果は、足関節の分析だけでなく、骨盤や股関節、膝関節の代償的な運動の影響も観察ができる。
AFOは足関節の運動学と歩行速度に良い効果があり、
膝関節や股関節の運動学には効果がないことが明らかとされている
(Gok H et al. 2003、Park JH et al. 2009)。
足部の背屈運動が不十分な場合に足クリアランスを改善するために、股関節の屈曲や骨盤の傾斜などの代償動作が報告されているため、AFOの効果を検討するため、前額面の評価をすることは妥当である。
筆者らが以前行った短期的な結果の報告では、AFOを装着して歩行した場合、足関節背屈には良い結果が得られたが、骨盤と股関節には影響を与えなかった。
効果が得られなかった理由として、対象者は1回の介入を行っただけであり、他関節のレベルでの代償的な動作まで学習されなかったことが考えられる。
AFOを処方するための長期的な追跡データはまだ報告がされていない。
本研究の目的↓
亜急性期脳卒中患者に対して、
2つの異なる時期(早期と後期)にAFOを装着することが、
骨盤と股関節における前額面、股関節・膝関節における矢状面での
運動にどのような影響を及ぼすかを比較すること
効果は26週後に評価を行った。
筆者らは、早期でのAFO処方が、後期での処方に比べて、他関節や骨盤による運動を学習しやすいと予測した。
前額面での変化:遊脚時の骨盤傾斜、同側下肢の外転減少を予測
矢状面での変化:遊脚時の股関節と膝関節の屈曲減少を予測
対象と方法
研究デザイン:無作為化比較試験
対象者:
選択基準
1. 片麻痺患者(初めての脳卒中)
2. 18歳以上の方
3. 脳卒中後6週間以内
4. リハビリ介入が行われている方
5. 簡単な口頭指示の理解が可能な方
6. AFOの適応の方(初期接地異常、遊脚期のクリアランス低下、立脚期の麻痺側荷重能力低下)
除外基準:
重度の統合失調症、歩行に障害をきたす心疾患、肺疾患、整形外科疾患を有する方
ランダム化の手順
以下の2つの群に割り付けた。
1. 試験開始からAFOを処方した群(早期群)
2. 9週目からAFOを処方した群(後期群)
Functional Ambulation Categories(FAC)にて、無作為化前に層化するために支援を受け入れて歩行する場合(FAC0~2)と支援を受けない場合(FAC3~5)に用いられた。
AFOについて
・関節部のないプラスチック式短下肢装具が処方されフレキシブル、セミリジッド、リジッドの3種類のうち個別に1つを選択して使用された。
・対象者は病棟、治療中、外出(外泊時)を含めて、1日中AFOを使用するように指示された。
研究手順
・3D解析は、両群で、研究の1週目、9週目、17週目、26週目の4回で実施(それぞれT1、T2、T3、T4とされた)。
・全ての測定は、AFOを使用した場合としない場合で、無作為化された順序で実施。
・AFO使用の後期群は1週目は装具なしでの測定となった(9週目から使用のため)。
データの収集と処理について
・動きは6台のカメラを用いるVicon MX13システムを用いて行われた。
・補助具の使用は認められた。
・AFOの有無でのマーカーの位置は変えずに測定が行われた。
・データの処理は、Vicon社の下半身Plug -In -GaitモデルとMatlabで開発したソフトウェアが使用された。
評価項目
・主要評価:26週目の骨盤傾斜、股関節外転・内転、股関節と膝関節の屈曲・伸展
・歩行速度は上前腸骨棘マーカーの平均速度を計算することで評価した。
・全ての角度について、遊脚期の最小値と最大値、初期接地時とフットオフ時の値を算出した。
統計解析
・SPSSバージョン19を使用。
・Shapiro-Wilk検定にて正規性の確認をした。
・運動学の評価:Bonferroni補正による多重比較検定を実施
・人工統計データは、t検定またはMann-Whitney検定、カテゴリー変数はカイ二乗検定を使用
・両群のベースラインはAFOを使用していないT1の時期に実施。
・主要評価においては、T4時点で実施し、t検定またはMann-Whitney検定を実施
・副次評価、26週間時点で実施し、混合モデル反復測定分析を実施し、群と時間の相互作用を比較した。
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脳Life 〜PTのための英文Review〜
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