脳卒中後の歩行回復を予測するための要因は?
こんにちは!
理学療法士のyukiです。
急性期から回復期、維持期に至る過程で、その方の歩行能力は何を指標に予測していけば良いか、悩む場面があるのではないでしょうか?
発症時の状態や運動麻痺、筋緊張、それまでの既往歴など考えることは多いですが、何か予測する指標を持っているだけでも、その経過をおいながら適切な治療提供が可能になると思います。
そこで、本日は歩行能力の予後予測に関連した内容を確認していければと思います。
紹介する論文はこちら↓
この論文について
掲載雑誌:Stroke, 2005
Impact Factor:7.190(2019-2020)
はじめに
時間の経過とともに繰り返し測定を行った縦断的研究の結果は、神経障害と神経障害の回復が、時間経過とともに非線形の回復パターンを示すことがわかっている(Duncan PW 、Kwakkel G et al. 1999、Kwakkel G et al. 2004)。
脳卒中後の時間経過自体は無視されているが、脳卒中後の機能回復を理解する上で
最も重要な要因の1つであると報告
(Gresham GE et al. 1986)
これまで、筋力、共同運動麻痺、半側空間無視などの障害の回復と、脳卒中後の歩行などの障害の回復との間の縦断的時間依存関係を調査した研究はない。
結果として、脳卒中後の自立した歩行の回復に対する時間経過がこれらの機能的変化との影響はよく理解がされていない現状である。
さらに、バランス制御などの特定の障害と制限の関係性について、脳卒中後の歩行を改善するための最適な治療戦略を選択するのに役立つ。
一方で、過去20年以内に、ランダム係数モデリングなどの新しい統計手法が開発され、各個人内の反復測定の依存性が修正された(Zeger SL et al. 1992、Diggle PJ et al. 1994、Goldstein H et al. 2002)。
この手法を用いると、個人の繰り返しの測定の依存性に対して考慮されながら、共変量間の横断的および縦断的関係性を同時に考慮できる(Goldstein H et al. 2002)。
ランダム係数分析は示された回帰係数が集合的な横断面(つまり、被験者間変動)と決定要因と結果の間の縦断的関係(つまり、被験者内変動)を反映することができる。
これは、被験者間の絶対差が時間の経過に伴う変化を超える場合の制限を構成している。
その結果、縦断的な被験者内関係は、横断関係によって多かれ少なかれ影響されない(Twisk JWR, 2003)。
これは特に、反復測定間の期間が比較的に短く、被験者内相関が高い場合に発生する可能性がある。
脳卒中の場合はこのようになることがよくある(Kwakkel G et al. 1999、Goodwin N et al. 2003)。
このような制限のために、変化スコアのみをモデル化することで、横断成分が分析から除去されるモデルを使用することを選択しています。
縦断的変化スコアをモデル化することで、歩行能力の変化に対する筋力、共同運動麻痺、バランス制御などの基礎となる機能改善の影響の理論的根拠を明らかとすることができる。
本研究の目的
1. 下肢筋力、下肢相乗作用、半側空間無視、バランス制御に対して時間依存共変量を用いて、ベースラインの歩行能力と患者特性、その改善を評価し、脳卒中後初期の1年間の障害と機能制限に対して二変量縦断的関係を調査した
2. 時間関数として、歩行の機能改善を予測するため、多変量ランダム回帰モデルを用いて評価した
対象と方法
対象者:脳卒中患者101名(平均65歳)
対象者属性:
1. 30〜80歳の方
2. CTまたはMRIにて中大脳動脈または前大脳動脈領域の最初の虚血性脳卒中の方
3. 初期評価時に歩行が困難であったもの
4. 心臓疾患、肺疾患、整形外科的疾患などの既往歴がないもの
5. コミュニケーションが可能なもの
6. 記憶と理解が良好なもの
7. 書面または口頭にて同意が得られたもの
測定値について
歩行に対する障害からの回復の縦断的な影響を調査するため、歩行能力で観察された変化を様々な障害に対して18回繰り返して測定を行い、1次変化スコアをモデル化した(Kwakkel G et al. 1999)。
脳卒中発症から、数日後、10〜20週後、26週、38週、52週目に追跡測定が行われ、全ての評価は治療の割り当てを知らされていない1人により評価された。
歩行能力は、Functional Ambulation Categories (FAC)で評価された。
FACは、6つのカテゴリーで構成されており、患者が歩行を行うために必要な身体的サポートの程度に応じて段階化された評価である。
測定中に、歩行器などの歩行補助具の使用は認められていた。
年齢、性別、脳卒中の大脳半球、および社会的支援については、時間に依存しない共変量として分析された。
不全麻痺の重症度、相乗作用の段階、立位バランス制御、半側空間無視の重症度は、ランダム回帰モデルの時間依存共変量として分析された。
運動指数(Motricity Index)は、上司と下肢の筋力評価のために行われた。これは、脳卒中後の不全麻痺を確実に評価することができる。
四肢ごとに最大100点で点数化され、上肢においては肩関節、肘、手首の評価、下肢においては股関節、膝、足部の動きを評価することができる。
バランス課題では、Timed Balance Test (TBT)を用いて実施された。これは5つの構成要素から作られ、時間経過に応じて徐々に支持基底面が減少する課題で評価される。
Fugl-Meyer Assessment(FMA)は、運動能力を評価するために使用される。
この評価では、上肢、手関節、手指や下肢の動きを評価する内容で構成されている。基本的には、それらの共同的な動きの程度に合わせて点数がつけられる。
最後が、Letter Cancellation Task (LCT)で、対象者は5行の文字を含む1枚の紙に、アルファベットの文字の中から特定の文字を交差させるように行われる。麻痺側と非麻痺側の交差した文字の数の違いがスコア化される。
統計解析
・ランダム回帰分析はMLwiNを使用して実施。反復一般最小二乗法を使用して回帰係数を推定した。
・ランダム回帰分析(ランダム係数分析)を実施する前に、時間依存共変量の測定間での変化を計算した。次に、変更スコアをプロットして、モデルへの仮定を確認した。
時間は独立した共変量を構成するため、ランダム回帰分析により、不等間隔の測定時点の縦断的な分析が可能となる。
FACでの歩行能力と共変量との縦断的関連の可能性を評価するため、
初めにFACの変化と、年齢、性別、脳卒中病変などのベースラインにおいて時間に依存しない共変量解析を行い、時間依存共変量であるMI-leg、FM-leg、FM-バランス、TBT、LCTの変化を調査した。
続いて、標準化された回帰係数が計算されて、FACスコアに基づき歩行の機能回復を予測するための多変量回帰モデルが評価された。
・全ての検査で有意水準を0.05とした。
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脳Life 〜PTのための英文Review〜
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