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菓子箱に入ったリーフレットに救われてきた

お菓子の箱に入ったリーフレットが大好物である。これがあるだけで、箱のお菓子が2割増し、いや3割増し、美味しく楽しくなること間違いない。

まず詰め合わせであれば、何を選ぶかという楽しみがある。見た目で選ぶのも良いのだが、できればリーフレットを熟読し、これもいいなあ。きみもいいねえ。とドラフト会議を楽しもう。

ひとまず1つ選ぶ。そしてもう一度そのお菓子の説明をじっくりと読む。食べ物、特にお菓子は、味や構成の説明を読んでから食べたい。これはなんだろうと思ってしまうと、思考に支配され、なんだかよくわからないまま食べ終わってしまうのが悲しい。

どのようなところで作られているのか、作るときのこだわりも知りたい。企業の想いや理念も知ることができると大変嬉しい。ますます目の前のお菓子がありがたく感じられる。しみじみと噛みしめる。

食後も、もう一度読む。次は何を買うか想いを馳せる。もうひとつ食べられそうなら、また次を選ぶ。

以前勤めていた職場には、たくさんたくさんお中元やお歳暮が届いた。キャビネットの上に箱がずらっと並ぶ様は壮観であった。

お菓子が配られる時は机の上に置いてあるか、箱が回ってくる。悲しいかな、ゆっくりとリーフレットを読んでいる時間はない。ぱっと取ってさっと回すのがルールだと信じていたため、後ろ髪を引かれる思いで隣の方に渡していた。(食べる時はホームページを読んでいた。)

だからお中元やお歳暮の時期の残業は少し嬉しかった。年末、まわりの方は皆帰ってしまい、おなかを空かせてよく1人カタカタやっていた。区切りの良いところで、お菓子をいただいた。なにしろたくさんあるので、余ったお菓子はご自由にどうぞと箱ごとキャビネットに並んでいる。ひとり静かなオフィスで、ゆっくりとリーフレットを眺め、ひとつ選ぶ。熱いコーヒーと一緒に、ひと息つく。おいしいな、幸せだなとしみじみ感じた。

ずっとパソコンを見つめていたため、紙に印刷された文字が愛おしい。ずっと眺めていたい。この素敵な写真と文章を何度でも読んでいたい。

そう思いつつ、もうひと頑張りするかとやる気が少しずつ戻ってくる。そうした日が何度もあった。今日も残業になりそうと悲しい気持ちで夕方を過ごしていても、箱たちが目に入ると励まされた。どんなに夜遅くなっても、唯一待っていてくれる存在だった。

そうしてようやくお歳暮の箱が空になる頃、私は退職した。

今はもうあんなに大きな箱にお目にかかることはない。自分で小さめの詰め合わせを買って、またはバラ売りで楽しんでいる。ホームページやSNS(noteもあったり)もじっくりと見る。

誰にも気を遣わず邪魔されない。時間だってたくさんある。とっても楽しく嬉しく堪能しているが、あの菓子箱が並ぶ様子にときめいたことや、夜中のオフィスでの静かなお茶会をもう経験することはないのだなと、すこし懐かしく羨ましく思い出す。

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