佐藤優氏の「先生と私」は、極上の高校受験戦記であり、それを見守る両親論。
2023年の5月も半ばを過ぎました。今日は土曜日の20時前ですが、長女は塾に行ってます。週2回の授業に週末もなんだかんだで月2~3回はテスト対策が入ってくるため、不在がちです。これに部活だからホント、今どきの中学校1年生は大変です。
それを親としては見守るしかないわけですが、小3の下の子の勉強を見つつ(四谷大塚のはなまるリトルシリーズを買ってきて、最近やらせ始めました。これについては後日レポートします。)、子を見守る親ということから、昔読んで今も折に触れて手に取る一冊である佐藤優氏の「先生と私」を思い出しました。(あちこちボロボロで、テープで補強しています。)
本書は知の巨人・佐藤優氏の15才までの記録で、高校受験で埼玉公立の頂点・名門浦和高校に合格するまでを、昭和後期における埼玉県大宮市周辺の雰囲気が肌感でリアルに体感できる筆致で描く傑作。
私自身も平成初期の中学生~高校生生活を大宮周辺を根城に過ごしましたので、本書の舞台をありありと脳裏に描くことができ、大変大切な一冊なのです。
さて、本書は前述したように佐藤優氏の高校受験シーンが核にあり、佐藤優氏は浦和高校と早大学院を受験。早大学院には惜しくも落ちてしまいますが、浦和高校には見事合格します。
早熟な佐藤優氏の当時の思考過程や行動描写も素晴らしいのですが、本書が素晴らしいのは2点。一つは、塾の優秀な先生たちが受験という枠組みをある意味超えた指導を投げかける中で佐藤優氏の知性が大いに刺激・触発されていく場面。特に、国語の先生や数学の先生との交流が素晴らしく、現代の塾において同じような関係が容易に成立するとは思えませんが、こうした貴重な出会いと気づきを得られる点は、学校以外の塾という空間に身を置くことの大きな魅力なのだと思います。
もう一つは、早熟で優秀、向学心の強い佐藤優氏を見守るご両親の姿。親子ながら、中学生である佐藤優氏を一人の独立した人格として尊重し、見守るご両親の姿が素晴らしいです。こんなご両親だからこそ、佐藤優のような知の巨人が生まれたのか?それとも、佐藤優氏のような子の親であることを通じて、こんなご両親になっていったのか?たぶん、どちらもが正しい両者の関係性だったのではないかと思います。
しかしまぁ、最終章の「父の背中」は泣けたなぁ、男親として。
「ゲームばっかやってないで(orダラダラしていないで)勉強せい!宿題やったんか?」という自身と子供との関係性を見つめ直さねばと、いつも本書を手にとると身につまされます。