小話「どこにでも持ち運べる窓」
ちょっと待って。会議する前にこれを取り付けさせてね。
……ああ、これ? これはね、窓。この会議室、窓がないから持ってきたんだよ。換気しろってうるさいこのご時世なのに窓がない会議室しか予約できなかったから仕方なくね。
それにこれ、どこの世界にも繋げる事が出来るから自分が行きたい場所に設定する事が出来るんだよ。今日なんか外暑いから涼しいところに繋いじゃおうよ。長野の上高地とかなら涼しいかな。
いい窓だよね。だけどA5の紙くらいの大きさしかないから自分は窓の外に出られないんだよ。まぁこのご時世でどこにでも出かけられないから窓を知らない世界につなげてみているだけでもいいもんだよ。
ただね、窓を開けっぱなしにしてると窓より小さい物なら入ってきちゃうんだよね。この前は海の中に窓を繋げてたら、うちで飼ってる猫が窓を勝手に開けちゃって部屋に水がわーって入ってきちゃってさ。すぐに窓閉めたけど、勢いがすごかったから部屋がもう少しで水没するところだったよ。
……よし、これで準備が出来た。さぁ会議始めようか。
※こちらはライティングゼミではないんですが、天狼院書店開催のイベントで作ったショートストーリーです。