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2.社会から必要とされていない私
私のことを、おおまかに知っておいてもらおう。
私はバブル崩壊後に生まれた、いわゆるゆとり世代だ。性別はXX。ご多分に漏れずセーラームーンが好きで、美奈子ちゃんのロングヘアに憧れていた。
小学校では「ふつう」の児童だった。同学年にいた多動の男児に目をつけられ、そこから男性が苦手になる。
中学時代に家庭の機能不全具合を理解してしまい、家庭では虐待、学校ではいじめに遭いながら不登校児として生きていた。
高校は一年未満で退学した。上記の経験を糧に教師になる夢を持ち、地元の私立大学へ高認合格を経て現役で入学する。
大学では一年次からボランティアをし、教師への階段を着々と上がっていたが、三年生に上がる前の春休みに同学年の学生に性加害を受ける。
被害者となり、記憶がない部分があることを後から知ることになるが、精神的には最悪の状態が続いた。両親や一部の友人は「私に非がある」と眼前で言い放った。両親からの援助はなく、当時付き合っていた同級生に私の生活を託し、帰る場所はなかった。
被害の傷は治癒せず、なんの支援も受けられないまま、生活のため働くことになった。私の唯一の志望理由は「男性がほとんどいない場所」。近しい場所を探して、私は百貨店の化粧品売場に就職した。
美容部員を約10年ほど続け、虐待や性被害などで苦しむ人に寄り添いたいという気持ちと、強制終了させられた大学生活を取り戻すべく地元の国立大学夜間主コース法学部を受験するが、不合格。不合格通知は、きょう届いた。
おもしろい結果が出たので共有しよう。
「高校中退」「大学中退」などの傷だらけの経歴を持ち、今まで何度も面接を受けてきたが、「性被害に遭った」と言うと、必ず落ちるのだ。
どの業種の転職面接でもそうだったので、とある面接で「家庭の事情」と大学中退理由を濁すと、見事に受かった。スキルアップをし社内で成果を出した後の転職活動でも、性被害のことを話すと落とされ、隠すと受かった。
今回の大学受験も、ほんとうのことを伝えると落とされるかもしれないという不安が拭えなかったが、法律は私たちのような弱者を守ってくれるものだと確信し、志望理由書に記載した。不合格通知を見たときは、わらってしまった。
私は、社会から必要とされていない。一生苦しんでいろと、沈黙の言葉で罵られた気がした。
私の学力が足りなかったのはじゅうぶんに甘受している。しかし、これだけは言わせてほしい。「私以上に法学を欲している人はいるのか」。
そんな情緒的な訴えは、健常者からしたらどうでもいいのだ。ただ私は、大学が欲するレベルの人間ではなかった。それだけの話だ。
しかし、これを毎回くりかえす人生を想像してみてほしい。毎回ちがう人間に笑顔で否定される人生を想像してみてほしい。互いに人のかたちが保てているだけでも御の字と言えよう。
というわけで、第三者に骨まで砕かれ、八月朔日という生きた骸を葬るために、こうやってながながと記すことにしたのだ。
ちなみに、加害者の同級生は留年などすることなくしっかり大学を卒業し、小学校教員になっている。
日本とは、教育とは、司法とは、きっとそういうところなのだろう。