「わたしの部屋」暮らしレシピ #8 松見坂こばやし<南瓜の煮物編>
暮らしの中で、いい感じの料理を家に来た人に振る舞ってみたい。
またはお気に入りの器に料理を盛って、部屋の感じも少しフレームに入って写真を撮りたい、と思っている方は多いのではないでしょうか。
現在ステイホームの中、「おうち時間」という言葉が当たり前となり、男性も女性も家で過ごす時間がとても増えた様に思います。
知人から、男性が会社に行かず、家で仕事をする様になったので料理に目覚めた、という話を聞きました。
かくいう僕も、家で過ごす時間が増えてきたおかげで、何か自分で料理に挑戦してみようという気になり、本屋さんで気になる料理本をパラパラとめくっている日々を過ごしています。
日頃から空間やうつわとの相性、トータル的にバランスの取れた料理がいいなと思っていました。
そんな料理のレパートリーを増やしたいと思い、普段から懇意にさせて頂いている、渋谷、松見坂小林さんに相談に行きました。
シンプルでいて、色も綺麗。器や部屋の空間との相性の良い家庭でできる料理、何かありませんか?とお尋ねしたところ、南瓜の煮物とじゃがいもの煮っ転がしなんかいかがですか?とのご返答。
僕好みなご提案で、無理を言ってお店で作り方を教わってきました。
その時のレポートを2回に分けてこの暮らしレシピでご紹介していこうと思います。
松見坂小林さんは渋谷からほど近い、5年前にオープンされて、その丁寧なお仕事と繊細なお料理が評判で様々な人が訪れるお店です。そのお人柄もとても素敵でついつい通ってしまいます。
僕が以前勤めていたギャラリーで、今度お店をオープンするからとうつわを購入して頂いてからのお付き合いです。
では早速、南瓜の煮物から作って頂きましょう。美味しそうな写真と一緒にどうぞ。
まず南瓜を切ってもらいます。1/4にカットして、食べやすい大きさに。
中央の皮を剥きます。包丁を使うと綺麗になりますが、難しいため、家庭だとピーラーで剥いてよいそうです。
これで南瓜は見栄えがよくなり、かつ食べやすくなります。
小林さんの話を聞いていると、どうも料理屋さんと家庭とでは炊き方が違う様です。
なんで炊き方が違うのですか?とお聞きすると、ご飯が食べれるか食べれないかで味付けが異なるということでした。
コースで出されるときに、一品の味が濃すぎると最後まで料理が食べれなくなってしまう。
コース全体の味のバランスをみて味付けするのがお料理屋さんの味付けで、家庭ではご飯のお供になるかどうかが味の違いの様です。
なるほど、考えてみれば確かにそうですよね。
お店でお料理食べて、店主にレシピを聞く方もいらっしゃいますが根本的にその部分が違うので、味付けは家庭というのを意識しなければなりません。
食べる量も順序も違いますからね。
南瓜は皮を下にしてカツオ出汁を入れます。家庭では野菜のだしが出るのでお水でも。
炊くときに、鍋に南瓜を山盛りに入れて炊くと味のブレが出てしまうので、南瓜の並びは一段で炊きます。
出汁を入れる量は南瓜の列が少し頭が出るぐらい。お酒大さじ2.3杯、三温糖(少し雑味のある砂糖が美味しい)、みりん大さじ2杯ほど。醤油。
全て入れて中火で炊きはじめます。
いずれも味付けは少しずつ。煮詰まって来るのを計算して、入れすぎない事がポイントです。
クッキンシート、もしくはアルミホイルで落とし蓋をします。
香りが逃げない様にする為と、熱が全体に行き渡る様にする為です。
一つ一つのちょっとした事が丁寧ですね。
ある程度沸騰したら味見です。
小林さんの味見用の漆の盃。
僕は自宅でお気に入りの陶器の盃で味見しています。
馬盥といって、少し浅めの盃です。
盃はサイズもちょうど味見にいいですし、毎日使うと盃が育っていきます。
楽しい時間です。
煮詰まるのを計算して、この味見の時点では薄めの味にしておきます。
形が崩れるので、あまり鍋は動かさずに。
煮ていて、最後、味が薄いなと思ったら出汁を少し足しても大丈夫です。
煮詰まってきたら竹串で柔らかさを確認して完成です。
煮過ぎてドロドロになってしまう、という方は最初の出し汁が多過ぎの場合がある様です。
何事も少しずつ調整していく事が大事だなと思いました。
すぐに蓋をとると南瓜がパサパサになってしまうので、荒熱が取れるまで蓋をしておきます。
出来上がりがこちら
艶々としていて、美味しそう。
熱々でも美味しいし、少し冷めても美味しい。
今回僕はより家で使うシーンを想像するため、グレーの鉢と、天目の黒の鉢を自宅から持っていき盛り付けてみました。
特に黒という色は野菜の色を鮮やかにしてくれます。
この鉢は瀬戸の加藤春岱作。幕末頃のうつわです。
鉢にゴロっと盛って、各々取り皿で食べる、というスタイルが好きなので村木雄児さんの小皿も持参。
なんとなく自宅で作って食べるイメージが出来ました。
今回驚いたのは、小林さんはほぼ目分量で味付けされていた事。
少しずつ、やり過ぎない味付けで、最後に調整していく事。
家で何品も作るのも楽しいですが、この様にじっくり一品、丁寧に作ることも楽しいですね。
ただ南瓜を炊くだけだと思っていたのですが、この様に丁寧に作っていく所を見ていると様々な気付きがありました。
実際におうち時間で試してみたいですね。
きっと美味しくて、素敵な写真も撮れるかなと。
次回はじゃがいもの煮っ転がし編です。
使用したうつわと合わせて楽しんで頂ければ幸いです。
おわり
LAPIN ART 坂本 大
現代のうつわと古美術骨董を取り扱うLAPIN ART OFFICE ディレクター。本プロジェクトを通して、自分の大切な物との向き合い方を、自らが描く理想の暮らし方とギャラリストとしての知見を掛け合わせながら提案する。
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