[詩]龍と月詠_風雅の響き
龍は風を追いかけながら
空に螺旋を描いて消え
消えたはずの月が
いつのまにか僕の手のひらに
淡くひんやりとした光を乗せていた
月は詠み手で龍は風をつかむ
でもその詩はいつも途中で途切れる
風が運ぶ言葉はどこかへ行く
行き先を知らないままただ漂って
静かな夜の空にひとつの穴を開ける
風雅はそこにある
姿を見せるのでもなく言葉になるでもなく
ただ僕らの命の中に息を潜める
それを知っているのはきっと龍だけだろう
そして、
君も
龍ぞ舞ひて、月影を裂き、
雲の彼方へ、風雅を連れゆく、
天にこだます、詠(うた)の響き、
蒼き夜空、静かに染まりぬ。
風はさやぎて、龍を包み、
月はひそかに、影を映せり、
雲間に消ゆる、その姿、
美しき嘆き、風の哥(うた)よ。
龍の目に、月が揺るる、
風雅の心、夜を飾りぬ、
星の涙が、静けさに舞ひ、
その刹那(せつな)、夢は宙に消ゆ。
風は誘へり、月詠の声、
龍と共に、空を巡りぬ、
この夜に残る、光の余韻、
風雅な響き、心に刻まむ。