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“お母さん”と呼ばないで。

先日、ショッピングセンターで目的の場所に向かって一目散に歩いていたら、“お母さん!”と呼ばれた気がした。私には声変りをし始めたばかりの中学生の息子がいるけれど、その時は一人だったし、何より女性の声だったので、まさか自分が呼ばれているとは思わずにスルー。それでも、“お母さん、お母さん!”と何度も呼ぶ声がしたので、何だろう?と声のする方を見たら、何のことはない、ティッシュ配りのお姉さんが、私を呼び止めようとしていた。私が覚えている限り、そういうシチュエーションで私が“お母さん”と呼ばれたのは初めてだった。

いや、私、あなたのお母さんじゃない。

自分の子どもより、ずい分年上の人に“お母さん”と呼ばれるのは、正直あまりいい気分ではない。私は器が小さいので、イラっとして、絶対止まってやるものかとそのまま速足で駆け抜けた。その女性は、私以外の人にも“お母さん、お母さん!”と声を掛けていたので、“私だけじゃなかった…”と、ちょっと溜飲は下がったけれど、それでも、しばらく嫌な気分が残った。
私はたまたま息子の“お母さん”だれど、そうでない人もいる。お母さんである可能性が高い年代だろう…ということで、悪気がないのも分かるのだけれど雑だと思う。そして何より、知らない人に“お母さん”と呼ばれることを、自分でもびっくりするほど、不快に感じてしまった。“息子のお母さん”という意味以外の“お母さん呼び”は、できればお断りしたい。その方もそういう意味で使っているわけではないのは百も承知だけど、思ってしまったのだ。

私は、あなたのお母さんじゃない。

“お姉さん”じゃないと判断したのだろうけれど、“お姉さん”じゃ、どうしてもダメなのだろうか?“おばさん”は、言われて嬉しい人はいないよねー。というか、呼ばないとダメ?
“そちらの赤いカバンの方~”とか、持ち物で気づいてもらうとか??
“こんにちはー”とあいさつで振り向いてもらうとかは??

そんなことを考えながら歩いていたら、少し離れたところから今度は“お姉さん!”と呼ばれた。ウォーターサーバーのセールスの人だった。
やっぱり、これこれこれ!どうしても呼びかけたいなら“お姉さん”だよ!と思いつつ、ニコッと笑ってスルーした。結局、スルーするけどね。でも、気分が違う。きっと、相手の方だってニコッとスルーされた方が良かろう。さっきのお姉さんに、“お母さん”がいかに良くないか、教えに行きたいくらいに思ったけれど、念だけ送っておいた。私は器も気も小さいのですよ。

不特定多数の方に、ティッシュを配ったり、セールスをされる方、“お母さん”は、思っている以上に危険です。相手を“お姉さん”じゃないと判断したとしても、頑張って“お姉さん”と呼ぶのは仕事の一環と割り切ってもらえないだろうか。きっとそれがお互いのため。









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ナハエリコ
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