【2022年邦楽ベスト10】今年の邦楽をどのnoteよりも先に振り返ってみた
今年は音楽をとてもよく聴いた1年でした。
といっても、音楽との付き合い方は基本的には変わっていないんですが、今年は子供が生まれて育児休暇を取ったり車を買って頻繁にドライブしたりと、サブスク、Spotify(金なくなったら値上げっておまえDAZNかよ)を常に回しながらの生活が多く、好きなアーティストを軸に聴くこともありましたが、室内で音楽が流れる時間が長くなっていくぶんエアチェックをする機会も増えたんです。かつてはFMや飲食店や服屋や街頭から流れる音を追いかけて、アーティストと曲名を知って、その曲を買ったり借りたりしていました。それが今はサブスクで自分が好きなアーティストをフォローしておいたらアルゴリズムがつくられていてこっちがこたつで寝てる間におすすめの曲をどんどん集めてプレイリストが完成してしまう。必ずしも全てが自分の好きな曲ではないしそんな人工知能に負けてたまるかとDigって名曲を見つけてくる(そのアーティストをフォローしておいたらアルゴリズムがつくられていてこっちがこたつで寝てる間におすすめの曲をどんどん集めてプレイリストが完成してしまうのだが仕方なく共存している)生活を過ごしているとどんどんと聴く機会が増えるんです。
今年聴いた新譜でどんないい曲があっただろう。そして順位付けするとどうなるだろう。人工知能にはできないプレイリストに愛を注入したくなり、まだまだ11月中旬の肌寒い程度な季節ではありますが、どのnoteよりもきっと先に、上場して厳しくなったであろうnoteでコンプラに気をつけて、ベストテン形式でお伝えしていきます。
【第10位】
キャラバン / サカナクション
まず第10位はサカナクションでキャラバンです。サカナクションはそんなに聴いてこなかったですがこの曲は好きです。サカナクションは一言で言えば青く魚っぽくいうと光りものっぽく、最近ちゃんと音楽聴き始めた高校生とか地方から上京してきた大学生とかが踊れそうなダンスミュージックっていうイメージです。大学生がお酒を覚えて初めて飲めるのがライトなビールやカシオレみたいな鳥貴族を正面から好きなお店と言ってグーグルマップにピン指すような浅さに似ていて。まだ酒の沼に入っていない人が好む音楽だと思っています。なので聴いてる人が年相応ならいいんですけど、ダブルスコアな私が大絶賛したら私が青魚になる。この曲は藤原ヒロシのラジオ番組を聴いていた時にたまたま流れてたんですね。で、これもまあイントロからもうサカナクションなんです。歌い出しもサカナクションなんですよ。サカナクションサカナクションって感じだったんですけど、よくよく聴いていくと、よかったんです。後ろのダブはまあベタですしビートもサンプラーに無料でついてくるおまけかと思うくらいベタですけどそのベタベタなエンタメ演芸を昇華することができるのは天才じゃないかって。歌詞の一部を取り出すと「砂漠のラクダ使い 春夏秋冬はあっけない 砂漠のラクダ使い うろ覚えの秘境 砂漠のラクダ使い 恋心掛け合い 行こう 砂の町 1人でも行こう」なんかちょっと…うん、ま、別に韻固くも巧くもないんで心地良くないですけど、なんか可愛い。これですよ。そう。この可愛さなんですよ。よく行くお店を聞いたら恵比寿のフレンチじゃなくて「鳥貴族」と笑顔で言える後輩可愛いじゃないですか。同い年の同郷の彼女と一緒に東京出てきてまだ付き合ってるけどもうちょっとおしゃれな東京の子と遊びたいって思ってて最近聴き出したのがサカナクションとブルーノ・マーズだったら最高じゃないですか。朝まで何件もハシゴして先輩たくさん紹介してあげたくなりますよね。好きなアーティスト紹介してあげたくなりますよね。そういうことです。好きなアーティストがサカナクションじゃないと始まらないおしゃれの階段はあると思うんですね。そう考えるとダブルスコアなおっさんがノミネートしていい曲なのかやはりわからなくなってきますが2022年はどこかベターで青かった頃の記憶を欲したのかもしれません。
【第9位】
SPLASH / FNCY
第9位はFNCYのSPLASHです。ZEN-LA-ROCK、G.RINA、鎮座DOPENESSの三人からなるユニットですね。もう何年ぐらいやってるんでしょうね。もう結構ベテランな印象ですが一時期ちょっとブランクがあるとはいえこの曲は一年振りだそうですね。で、なんかすごい夏っぽい曲なんですけど10月下旬リリースだしアー写はダウンジャケットだし。年中キマった顔した岡田って奴が大学の頃にいました。身体が寒いからって真夏にダウン着てまだ寒いまだ寒いって言ってどこかへ行ったきりそのまま大学でも見なくなった奴でしたけどいつの時代もヤクはダメですね。好きなアーティストが活動休止になっちゃうから。ジャケのデザインもなんか溶けてますね。夏発売が延期になったんですかね?まあそんなことはどうでもよくてとにかく曲がすごくいい。リリックの入れ方や音の出し方がこれまで聴いたことがない絶妙な塩梅で簡単に言うとキマってます。ハウスのヒップホップは輪廻転生を経てこれからどんどん増えると思うんですけどもう底上げられちゃった感がありますね。リップ・スライムが売れたの20年前だったからなんですね。この曲はとにかく刺さりました。ベテランないぶし銀がポップな解釈してダサくなかったらそれはもう100点ですね。9位ですが100点です。
【第8位】
雨模様 / ぷにぷに電機, ぺのれり
はい第8位に入れたのは、ぷにぷに電機とぺのれり雨模様です。これ聴いた時になんだろな、まだこんないいアーティストいるのかって驚きました。まあいいアーティストっていうのは永遠に出てくるだろうし時代にマッチしたアーティストが売れていくんでしょうし来年も恐らくそんな感動はいっぱいあるんでしょうけど、で、このぷにぷに電機だってぽいっちゃっぽい、今っぽいっちゃ今っぽい、いけ好かないっちゃいけ好かない聴きやすくて若干面倒くさそうな文系トンマナ外さずにやってきました感、コンセプチュアルだなとは思うんですけど、でもこれはこのアホなジャンルとは全く違う部分があって、それがジャズ解釈なんですよね。一万回聴いても飽きない心地良さがあるしっていま単位は「回」じゃないみたいですね。一万再生。そして千再生ごとにまた違う気付きがあるだろうなっていう楽しさがあるんです。だからこのジャンルでこう、この時代に迎合してる風に見せといて才能を隠し持ってるところが大好きですね。
【第7位】
萃点 / GEZAN with Million Wish Collective
第7位はGEZAN with Million Wish Collectiveの萃点です。はい。なんだろな、GEZANの魅力ってインプロだったと思うんですけど去年一昨年ぐらいからは何かちょっとライブが激情型じゃなくなっていて昔からメッセージ性がすごく濃いバンドだったけどBODY ODDで見せていたフレンドシップという枠を超えてもっとこうWORLDでPEACEな印象を受けるなと。それは時にライブハウスを抜け出してしまっていてフリーダムなフェスティバルを超えてしまったような寂しさがファンの身には持ってしまうんですけどもういいです。青山円形劇場でも池袋の東京芸術劇場でもどこでもライブとも演劇ともミサともとれない、ジャンルレスなGEZANというジャンルの音楽ないしは表現をしてくれればそれで十分かなという風に思えるようになったのでこれを第7位にランクインしました。私はまだ笑わずにGEZANを観れています。泣きはしませんが。「萃点」。読めない漢字、意味のわからない日本語で好きな曲だと聴き続けていたのはサブスクのデジタル音源ならではの味わいなのかなと思っております。で、なんの意味?熊楠先生かなにか?
【第6位】
Mango Loco / JP THE WAVY
第6位に選んだのはJP THE WAVYのMango Locoです。この曲ってエナジードリンクのモンスターの新商品用に書き下ろされたタイアップソングらしいですがタイアップソングってすごい転調ででかいサビ入れて耳馴染み狙って音を作ってる大味なものが多いですけどモンスターがJP THE WAVYに躙り寄ってる感じなのでWin-Winだと思いました。これこそがJP THE WAVYに曲を依頼した代理店の希望でしょうし飛んできた球をきちんと自分の技法で大ホームランで打ち返すプロフェッショナルさを感じました。とにかくかっこいい。
歌詞を求めていない時に聴きたいアーティストってこれまで電気グルーヴ一択だった(といえばうそになる)んですが一時期サブスクから抹殺された時もといビートルズやグレイトフル・デッドやエアロスミスからさんざん儲けさせてもらってるやつが偽善ぶって抹殺してきた時、歌詞を求めていない時に聴く歌ものがなくなった時に救われたのがJP THE WAVYでした。後にリリックにも刺さったので一度で二度美味しい体験でもありました。
【第5位】
fork / オカモトコウキ
どんどんいきましょう。第5位はオカモトコウキでfork。突然のメロウですけどオカモトコウキでしかできない許されない脆さみたいなのがあります。まあ音楽版藤原ヒロシNIGOではありますけどポップチューンに上がるかどうかは別としてこの曲がおしゃれかどうかっていうところは別としてOKAMOTO'Sファンがどう思うかは別として私はこの曲を聴きながら夏になりつつあった青山通りを歩いていて徐々に増えつつある人の群れと揺れる木々が重なった時に落ちた涙に嘘はない感動を得た曲でした。
20年前?30年前?40年前?のジャパニーズポップスへの影響やその現代解釈を感じますし繊細で丁寧でよく聴いたらすごいデジタルでレコードだと思っていたらMPEGだったような存在。それは肩透かしではなく馴染みあるニュートラルな感覚で古風な町に世界一おしゃれなカルチャーが入っていくような感覚を覚えるんですよね。京都にエースホテルができた時の文化と文化の混ざり合いから生まれた洗練されたカルチャーの息吹をこの手の曲から感じることが多いです。ちなみにエースホテル京都で朝を迎えたら備え付けのレコード・プレーヤーは昨晩に散々遊んだので仕舞いにしてローカルテレビ局に目を向けてよ~いドン!を見ながら三代澤康司にラジコをあわせてからスタンプタウン・コーヒー・ロースターズへ酸っぱいコーヒーを啜りに行くのが一番おしゃれな過ごし方です。絶対。
【第4位】
DOG EATS GOD / Dos Monos feat. 筒井康隆
第4位はDos Monosフィーチャリング筒井康隆ですね。予定調和なポリリズム、文系漂うリリックは敢えて踏まずジャジーで手だれ。JAZZ DOMMUNISTERSがハンカチ咥えて咽び泣きそうな筒井康隆コラボレーション。ついでにTBSラジオで新番組とは。N/Kフォロワーゆえ売られた喧嘩は買いに来て欲しいけどコロナの後遺症大丈夫なんだろうか。いろいろ大丈夫なんだろうか。さて曲に戻るとこれといって新鮮ではないけど「ここに文学を入れてきたYo!」っていうところは次のジェネレーションかなと思ってよく聴いていましたが去年もよく聴いたDos Monos。去年と今年は大きく違います。TaiTan溺愛文系女共が嫌がりそうだけどセルアウトしにかかってきている感。文系青年感を隠さなくなってきた昨今、来年以降どういった展開をするのかを興味深く見ている。音楽と文学を行き来するようなマルクスラジオは名著だけどこの類の輪廻転生は時代に合わないのでラップにしっかり両足入れてこれまで誰も見たことないGIGをかましてほしい。でないと2022年までに蒔いた種がなんてことなく土に還ってしまう。と思うのです。
【第3位】
スター / 坂本慎太郎
第3位は坂本慎太郎のスターを選びました。去年一番好きだったんですけど今年もまたとんでもなくよくって「幻とのつきあい方」から10年、坂本慎太郎はずっと私のスターです。天才が天才たる円熟味を増した(なんと)55歳がこんな最高なフォークを作るなんてそれをリアルタイムで聴けるのは本当に幸せ者です。「物語のように」っていうアルバムに入っていて全曲最高なんですけど、その中から選んだのがこの「スター」です。「悲しい用事」も「恋の行方」も「それは違法でした」も全て味わい深く坂本慎太郎フィルターを通して日本や疫病や戦争やいろんなものをのぞき込めるのは悦ですね。来年、坂本慎太郎の新譜を聴く瞬間は世の中どうなってるんだろうなんて思いながら今日も坂本慎太郎を聴いています。
【第2位】
PEAK TIME(KM "Back to 2006" Remix) / tofubeats
第2位はtofubeatsのPEAK TIME (KM "Back to 2006" Remix)です。KMのリミックス版を選んだのは気持ちいいからです。それだけ。一秒も無駄のない気持ちよさ。最高です。ずっと聴いてますけど一曲のなかにアゲて下げてアゲてなクラブごっこな楽しさは在宅で怠けた身体な上にVISIONが解体された現在は私の体操曲です。原曲よりリミックスに惹かれるのってなんか、旨い飯屋にいつものように入店していつもの日替わり定食を頼んだら、あれ、この前よりなんか美味しくなってるなと感じ、その日替わり定食を作ったのは店主の息子だったみたいな喜びを感じます。聴いてる時だけは円相場がアホみたいに安くなっていても東京都の感染者数が10,000を超えても謂れのないクレームに首を二回転半捻ってもげても聴けば幸せ感じます。スーパーで買い物して車を出す時に再生すればさあ家帰ったら子供風呂入れて料理作るぞ!ってギアが入るんですよね。麻婆豆腐のような辛さが肝な料理はいま乳幼児と妻を想ってNGなので糖分控えめな肉豆腐かシンプルに湯豆腐なんていいかもしれませんね。冬は豆腐が美味しい季節。
【第1位】
Carnival / 後藤 輝基
今年はなんといってもこれですね。後藤輝基のCarnivalです。藤井隆プロデュースのカバーアルバム。長渕剛フリークなジェッタシーですがその前に80年代ポップスシンガーだったのが衝撃でした。「フット後藤のアルバムが出る」と知った最初はなんとなくネタものかなと思ってそれはそれで楽しみだったのですがスレンダリーレコード発のカバー・アルバムと知ってナウ・ロマンティックじゃないほうのカバー・アルバムと知って、聴いてやられました。特に好きなのが1997年リリースの宝生舞カバー「Carnival」。私自身原曲を知らないのかもう覚えていないのかわかりませんがこんな名曲を掘ってくる藤井隆(か澤部渡)の高感度なアンテナ。いつまで経ってもコロナで外出しにくい状態で、でもそうも言ってられないから4人くらいなら飲みに行ってもいいかなぐらいのアンニュイで生ぬるい2022年の気持ちをこの曲が表している気がします。今年じゃないと刺さらない曲でした。