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上海 外灘からの眺め

上海に行ってきた。初めての上海。
中国には、西安に行ったことがあるけれど、団体旅行だった。
今回は、初めての個人旅行。
緊張もあるけれど、わくわくする気持ちの方が大きかった。
豫園、新世界、田子坊、外灘、朱家角。
そして上海以外では、蘇州へ行った。
今回書きたいのは、外灘。
多分、上海へ行く人は、間違いなく外灘からの景色を見るだろう。
東方明珠塔と上海タワー。
背後には洋風な建築物。
ずっとこの景色に憧れていた。
上海についてすぐ、行きたかった。
しかし、友達が疲れてホテルで寝てしまったので、1日目には行けず、2日目の夜に行った。
南京路の後ろの九江路をまっすぐ歩いて行くと、東方明珠塔が正面に見える。見えるけれども、なかなか着かない。
歩きたばこの男の人を追い越し、音のしない電動バイクとすれ違う。
冬の冷たい風が吹いてくる。
突き当たりの中山東一路に着くと、よく見る外灘の景色が広がっていた。
「こちらは出口です。入口は左側です。」と繰り返されるされるアナウンスに従って、左の階段を上がる。
きらびやかな夜景の中に、写真を撮ってあげるよ、という呼び込みの人達の声や観光客の様々な言語が聞こえてくる。
これが、外灘か。
ずっと見たかった景色。

2日目は、友達と離れての行動だった。
私は、高速鉄道に乗って蘇州へ行き、帰りにまた外灘に行った。
どうしても、また外灘の夜景を見たかった。
その日は、一人、南京路を歩いた。
道の両側には高級そうな店が並び、賑やかな音楽が流れている。
まがいもの。
ふと、そんな言葉が浮かんだ。
この街は、本物のように見せて、実はまがいものの街なんじゃないか。
かつての租界で、確かに豊かな歴史があるのだろうけれど、
今の南京路は、無理にライトアップされて、人を集めて、楽しそうな世界を作っている。南京路を少し入ったところで、ストリートミュージシャンが明るいクリスマスソングを演奏していた。
まがいものの街。
本物だけれど、作られた街。
そんな気がした。
それでも私は、外灘の夜景を見たくて、歩を進めた。
きらびやかな光に吸い込まれる蛾のように。
捕まえられるとわかっていながら、外灘へ行った。
昨日と同じく、外灘から見る夜景は美しかった。
人出は昨日より多く、賑やかさは更に増していた。
次々と色を変える東方明珠塔と黄浦江を行き交う船を見ながら、なぜ私はこの光の街に魅了されるのだろうと思っていた。
きれいだ、という言葉だけでは足りない何か。
川の両岸に見える景色の差かもしれない。
ネオンがきらびやかな東側と、洋風の建築物が並ぶ西側。
現代と過去の交錯。
そのせいかもしれない。
東方明珠塔を背景に、外滩观景台(The Band Sightseeing Platform)と書かれた掲示板に赤い「人民有信仰 国家有力量 民族有希望」という文字が光っている。
私は、豫園で買った、25元の懐中時計を取り出した。
蓋には、外灘から見える景色が彫られている。
時間は、7時を過ぎていた。
そろそろ夕食を食べに行こう。
懐中時計の蓋を閉じて、私はもう一度、川からの景色を見つめた。

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