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Netflix『さよならのつづき』を観て。〜ラストも納得した私の感想〜
ネタバレありです。
私はとにかく1話目から泣きました。
あまり多くは語らないヒロさん(三浦友和)が、さえ子が苦しいときに、いつも心のそばにいてくれるのが、またいい。
生田斗真の雄介。明るくて「誰かの柔軟剤になりたい」といい、いつも周りを笑顔にする。
でも、彼の家庭背景は深くは描かれてないが、何か抱えていた描写はあった。
仲が良い家族で育ってない私としては、重なるものがあった。自分がその環境が辛かったからこそ、周りを明るくしようとする。環境から生まれた、周りの人を明るくする、幸せにしようとする、世の中のいい面を見つけようとするその姿勢。さえ子(有村架純)はその背景を後に知るが、そんな雄介を愛していた。
健吾(奥野瑛太)の雄介への愛の深さ。この奥野さんの演技がまた惹き込まれる。健吾そのものだった。健吾の愛した人が雄介だったなら、雄介の愛する彼女へのプロポーズに協力して、花火を打ち上げるのも、本当に自分(健吾)が愛している人(雄介)の幸せを願うからこそ、できる行動だと思った。
ミキ(中村ゆり)の立場は確かに辛いが、自分の好きな人の心臓が生きていると思ったら、それが自分が1番愛していた人の心臓なら、さえ子のように、倫理観なんて関係なく、成瀬(坂口健太郎)の身を借りた雄介を、雄介の心臓とかつての記憶を持つ成瀬自身をも、愛してしまうだろう。
“不倫”という言葉だけに踊らされたくないし、“不倫”なのか?とすら思う。自分の母の、自分の父の、自分の子どもや家族の心臓が、他の人の体で生きていたら。もう2度と会えないのだとしたら。心臓だけでも会いたいと、誰だって思うんじゃないだろうか。
健吾は会いたくないと言ったけど、愛した人が自分を覚えていない怖さや、雄介という人間を愛していたからこそ、会いたくないのもあっただろう。しかし、偶然成瀬に会ったとき、成瀬の記憶が健吾を覚えていてくれたときの、あのシーンも忘れられない。
そして何よりも、ピアノのシーンに惹き込まれる。
生田斗真も、坂口健太郎も、このために半年間練習をしたという記事を読んだ。このシーンは実に印象的であった。今この文章を書いているのも、このシーンでの発見があり、ペンを手に取った訳だが。あとで記す。
他の人の感想を見て多かったのは、最後の、「りんごの収穫に、ミキがさえ子を毎年誘うシーンに納得できない」という、感想だった。
しかし、このシーンより前に描かれていた、さえ子とミキが話すシーンで、ミキの「わかりますよ。」に対して、さえ子が「わかる訳ないじゃないですか。」「生きてるじゃないですか。」という。
成瀬は、成瀬の持つ雄介の心臓は、最後、ミキの実家の農園で息途絶える。
ミキはここで、自分が1番愛した人を亡くすのだ。「わかる訳ないじゃないですか。」と言われていたが、最愛の人を亡くして、初めて「わかった」んだと思う。もはや、この苦しみは、さえ子とミキにしかわからない。成瀬が亡くなったからこそ、本当の意味で愛した人を失うことの苦しさを知り、ミキなりの誘いで、2人は同志になったんだと思う。
そして、1番話したかったピアノの話に戻る。あの曲はThe Jackson5の『I Want You Back』だ。懐かしい、誰もが知る世界的ヒットソングだが、私は歌詞の翻訳を知らなかった。翻訳を調べて、また泣いた。
I Want You Back / The Jackson5
戻ってきて / ザ・ジャクソン5
Let me tell ya now
聞いてくれないか
Uh-huh
When I had you to myself
君が僕のものだったとき
I didn't want you around
僕は君を疎ましく思っていた
Those pretty faces always made you stand out in a crowd
かわいい顔の君は人混みでもいつも目立っていたよ
But someone picked you from the bunch
でも誰かが君を人混みの中から見つけた
One glance was all it took
一目惚れだったんだ
Now it's much too late for me to take a second look
今や もう一回僕を見てもらうのには遅すぎる
Oh baby give me one more chance
ベイビー 僕にもう一度チャンスをくれないか
(Show you that I love you)
(君を愛してるって証明するから)
Won't you please let me
君の心の中に
Back in your heart
また戻ることはできないか?
Oh darlin' I was blind to let you go
ダーリン 君を手放すなんて何も分かってなかった
Let you go baby
君を手放すなんて
But now since I see you in his arms
でも今 君が彼の腕の中にいるのを見ると
(I want you back)
戻ってきてほしい
Yes I do now
本当なんだ
(I want you back)
戻ってきて
Ooh ooh baby
ベイビー
(I want you back)
戻ってきて
Ya ya ya ya
(I want you back)
戻ってきて
Na na na na
Tryin' to live without your love
君の愛なしで生きていくなんて
Is one long sleepless night
眠れない長い夜みたい
Let me show you girl
証明させてよ
That I know wrong from right
僕が改めるから
Every street you walk on
君が道を歩くと
I leave tear stains on the ground
僕の涙の跡が地面につく
Following the girl
鬱陶しく思っていた
I didn't even want around
女の子の後をつけている僕
Let me tell you now
聞いてくれ
Oh baby all I need is one more chance
ベイビー もう一回チャンスがほしい
(Show you that I love you)
(君を愛してるって証明するから)
Won't you please let me
君の心の中に
Back in your heart
また戻ることはできないか?
Oh darlin' I was blind to let you go
ダーリン 君を手放すなんて何も分かってなかった
Let you go baby
君を手放すなんて
But now since I see you in his arms
でも今 君が彼の腕の中にいるのを見ると
All I want
僕が欲しいのは
All I need
僕が必要なのは
All I want
僕が欲しいのは
All I need
僕が必要なのは
Oh, just one more chance
ただもう一回のチャンス
To show you that I love you
君に愛してるって伝えるための
Baby!
Baby!
Baby!
Baby!
Baby!
Baby!
Forget what happened then
あの時のことは忘れてくれ
(I want you back)
(戻ってきて)
Let me live again
もう一度生き返らせて
Oh baby I was blind to let you go
ベイビー 君を手放すなんてバカだった
But now since I see you in his arms
彼の腕の中にいる君を見てる僕
(I want you back)
(戻ってほしい)
Spare me of this cost
僕を許してくれ
(I want you back)
(戻ってきて)
Gimme back what I lost
失ったものを取り返したいんだ
Oh baby I need one more chance ha
ベイビー もう一度チャンスが必要なんだ
I showl ya that I love you
君に愛してるって示すための
Baby!
Baby!
Baby!
I want you back
I want you back
I want you back
I want you back
I want you back
※そのまま翻訳するとカタコトが出てきたので、翻訳されていた方のを引用させていただきました。
雄介が、成瀬の身体を通して、最愛のさえ子へのラブソングをずっと伝えていたのではないか。さえ子は、最愛にして亡くした雄介の心臓の音を、心を、成瀬を通して感じていた。
愛する人に生きて欲しくて、他人の心臓を運命的にもらった。その命に宿った最愛の人へのかつての記憶も、成瀬の一部として認めたくないけど認め、最後ハワイへ送り出したミキ。これも、成瀬を愛しているからこその決断だったのだろう。
倫理観という概念だけで観るには勿体ない。
運命という言葉もこの作品では何回も出てくる。さえ子の言うように、運命は自分で選択してきたものである。
雄介がピアノに込めていた「SMILE」のメッセージ。泣きたいときも、無理やりかもしれないけれど、それでもなんとか前を向いて、仕事に打ち込んだり、雄介が一緒に住もうと言っていた家で珈琲を入れて微笑んだり、職場の人や健吾、そして成瀬の前でも笑顔を見せたりする、さえ子。雄介の送っていた「SMILE」の意味を知る前から、さえ子は雄介と一緒にいた時間の中で、愛する雄介からその意味を受け取っていたんだと思う。成瀬が、成瀬と雄介の心臓が、その鼓動が、それにまた気づかせてくれ、本当は泣きたいさえ子の側にいてくれたことで、また笑えたんだと思う。
この物語のつづきも、残されたさえ子やミキ、健吾たちが、きっと、自分たちで運命を選択し続けていくのだろう。