電子書籍で柳宗悦を読んでみた。
この表紙は、長らく避けていた電子書籍です。柳宗悦(やなぎむねよし)の『工芸文化』。仕事の資料として至急手に入れたかったのですが、なんせマニアックな内容かつ古い発行。もしやと思いAmazonで検索したら、一瞬で手に入りました。書店で探すと取り寄せになるのか、意外と棚に並んでいるのか、よくわからないのですが。
昨年からの自粛生活で、今まではためらいがちだったオンラインの打ち合わせや自宅でのリモートワークが必要に迫られて行われました。試行錯誤ありながら、いろいろなことが少しずつ変わっていくのだと思いますが、本はやっぱり紙の手触りとインクの匂いが欲しいです、私は。でも、場合によっては文明の利器にお世話になって助かることも。使い分けですね。
楽天マガジンも取っていて、いつも紙で読んでいる雑誌が読めるようになっていたので見てみたら、なんか、デザインが単調でカッコよくない。こんな雰囲気の雑誌だったっけ?誌面のリニューアルでデザインを変えたのか?
で、書店でその雑誌を見てみたら、電子版よりずっといいんですよ。
これは紙の力か?電子書籍では、情報は伝わるのだけど、何かが足りない。
出汁のきいていないお吸い物というか・・・。
紙の厚さや手触り、色などが情報をより奥行きのあるものにしてくれているのだと思います。
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おまけ。仕事で書いた原稿をリライトして、『民藝』について少し。
『工芸文化』は、日本での民藝運動をリードした柳宗悦の著書。
民藝と美術の違いや日本人の「美意識」についてなど、興味深い内容です。
柳は、バーナード・リーチや河合寛次郎、濱田庄司といった陶芸家と共に、現在まで続く『民藝』のジャンルを確立しました。
「民藝」とは「民衆的工芸」のこと。大正時代末期に思想家・柳宗悦(やなぎ むねよし)氏らによって名づけられた。1936年には東京・駒場に日本民藝館を創立し、柳が初代館長に就任。その後も、機能的な美しさを備えた日々の暮らしの道具を保存し、普及、発展させる運動は広まり、全国に民藝館が設立されていった。
観光客向けに作られたお土産物屋さんの民芸品のことではありませんよ~。
芸術家ではなく、名もなき作り手が黙々と作り続けてきた陶器やガラスの器、籠、織物といった手作りのものを指し、民藝運動では、日常で使われてこその美しさ「用の美」を提唱しました。「用の美」カッコいい言葉です。
おしゃれな雑貨屋さんに置かれている現代の手作りの器なども考え方のルーツは民藝ですね。
柳の長男はインダストリアルデザイナーの柳宗理(やなぎそうり 1915~2011)。バタフライスツールやシンプルでお洒落なキッチン用具のデザインで知られています。
柳宗悦は思想家であり、宗教学者でもあるので、民藝についての思想は「生きるとは」とオーバーラップし、民藝運動を追っていくだけでも、日々の暮らしや人生哲学に新しい発見があります。
●日本民藝館
https://www.mingeikan.or.jp/