トヨタ会長発言から終身雇用を再考する
トヨタの会長が「終身雇用は難しい」と発言しました。それに対し、様々な論評がネット上に上がってきています。「終身雇用は当たり前」という考え一辺倒ではなく、いろんな角度から議論されることは良い流れだと思います。今日は、個人的に気になった2つの記事を取り上げます。
ひとつめはこちら。
ふたつめはこちら。
個人的には、前者の意見に賛同するところが多いです。
企業で人事として働いている人ならば誰でも、終身雇用が制度疲労していることを肌で感じているのではないでしょうか。そのひとつの現象として、「45歳以上はリストラ!?問題」や「定年後再雇用問題」を抱えている老舗企業は多いのではないでしょうか。
そもそも、ひとつの企業に一生涯身を捧げる代わりに若い時の給与は安くさせてね、年とともに少しずつお給料を上げますね。という年功序列とも密接に関わる終身雇用制度。私が新卒で会社員になった2002(平成14)年の段階でかなり無理があり、実際、昭和世代のおじさま方のようには給与は上がりませんでした。若かりし日の私は、それをとても不満に思っていました。笑
”今のままの”終身雇用制度は昭和の時代、少なくともバブル崩壊前まではうまく機能していたのではないかと思います。しかし日本を取り巻く経済的な環境が変化し、平成の30年分をJUMPするほどまでにこの制度を放置してきたことが大きな問題だと思います。
話を「ひとつめの記事」と「ふたつめの記事」に戻します。ポイントは「どの観点で人を大切にするか」だと思います。
「一生、ひとつの企業で働きたい」と思う人にとっては、終身雇用は「良い」制度でしょう。良い時、良くない時はあってもトータルで見たときに成果を上げており、そこで築いていく自分のキャリアにもある程度満足ができるなら「一社を勤め上げる」ことは双方にとってWin-Winです。
一方で、企業には解雇する権利はありませんので、社員が「居るだけである程度の給与が確保できる」という思考に陥り自らのキャリアについて考える機会を失うことにも繋がりやすいと考えます。
一方、転職が一般的になってきた昨今、終身雇用は転職者にとって時に「不利益」となることがあります。「勤続年数」がものを言う職場や制度が多いのは、終身雇用を前提としているからです。「転職後半年は見習い期間なので有給休暇は取れません」という制度、スキルを認められて入社したはずなのに、何とかなりませんか。苦笑
折しも「人材不足」という問題にすでに十分足を突っ込んでいる日本。終身雇用の制度設計を見直し、転職市場の流動性を高めることで、企業が求める「優秀な」人材が集まり、個人のキャリア(給与面含む)も自由度が増すように思います。
私が熱烈に支持するのは、東京大学・柳川範之先生の提唱する「40歳定年制」です。なにも40歳で会社を辞めろという理論ではなく、40歳で一度、自分のキャリアの行き先を考えるような制度にしませんか、というものです。
企業で働くミドル・シニアの研究に携わっていますが、60歳や65歳で「定年です」「再雇用です」と言われても今さらどう立て直したら良いのか戸惑っている人が多いのが現状です。
新卒で入社し、40歳になったら企業から今後について問われると分かっていれば20代・30代の働き方も多少は変わるでしょうし、企業も社員に対し、様々な新しい制度的サービス(複業の許可など)を検討する必要が出てくるでしょう。結果として、転職市場の流動性は高まり、年功序列によらない給与体系も登場すると思います。
いずれにしても、大きな変革には痛みが伴うもの。それが怖くて「現状維持」というのが、想定できる最悪のシナリオだと思います。
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