CMC_Meetup高知 Vol.5 参加記録
昨年のCLS高知 戻り鰹編の投稿から、あっという間に5ヶ月が経っていました。この間に私は、地元・高知の大学の採用面接を受け、合格し、およそ2ヶ月半前に単身で高知にUターンしてきました。全学のキャリア開発を担当します。
27年ぶりの高知生活は、毎日刺激がいっぱいです。昔からの友人だけでなく、2019年の2回目の成人式の幹事だった同い年メンバーや、CLS高知で出会った方々など、周囲の方々に恵まれて暮らしています。
そして2024年4月13日(土)は、初めてのCMC_Meetup高知に参加しました。コロナもあり、実に5年ぶりの開催なのだそうです。CMCはコミュニティ・マーケティングを学ぶためのコミュニティで、東京を発端として現在は全国各地に広がっています。
今回のCMC_Meetup高知の最終的な参加人数は55名!過疎のトップを走る高知に、学ぶためにこんなにも大勢の人が集まるのだということが最初の衝撃でした。人口の多い東京でも、イベントにこの人数を集めるのは大変なことですよね。
1.コミュニティ・マーケティングとは?
われらがかずちゃん(藤田一洋さん)の司会でスタートしたCMC_Meetup高知。彼もまた、神奈川からのIターンで高知に暮らしています。
頭出しは、コミュニティ・マーケティングの提唱者・小島英揮さんより、そもそもコミュニティ・マーケティングとはなんぞや?というお話から。畑違いの人事畑から参加した私にとっては非常にありがたい時間でした。「アウトプット・ファースト」を掲げる小島さん。終了後すぐに資料も共有してくださいました!
コミュニティ・マーケティングとは、ファン(顧客)を通じて商品・サービスの良さを拡散することでビジネスを加速させる手法。例えば営業が自社製品をおすすめするより、口コミの方が購買意欲・購買の確度は高まります。昨今のデジタル時代にもマッチしており、特に自走し始めればスケールしやすく持続可能なのもメリット。
かく言う私も、マーケティングの知見はほとんどないにもかかわらず、CLS高知やCMC_Meetupに参加しているのは、友人・知人からのお誘い(口コミ)やSNSがきっかけだったりします。
大切なことは「コミュニティ"を"作る」のではなく、「コミュニティ"で"ビジネスを加速・拡大してゴールまでの近道を作る」こと。小島さんはいつも「勝利条件」を明確にしておくことの大切さを強く訴えかけていますが、それがないと何がどうなったら成功なのかがわからなくなり、コミュニティの存在意義があやふやになってしまうわけですね。過去にも小島さんから公の場やその後の懇親会などで同様のお話は聞いてきたのですが、こうして体系立てて学ぶのは初めてで、ようやく基礎的なことが理解できた瞬間でした。
コミュニティ・マーケティングがパワフルな手法であることがわかると、多くの企業・団体から小島さんのもとに講演や授業の依頼が舞い込んできたそうです。毎回小島さんだけが話をするのも(小島さん的に)つまらないので、事例も話してもらうことにしたのがCMC_Meetupが生まれたきっかけなんだとか。
2.事例① 一般社団法人nosson(日高村)
事例トップバッターは、nosson代表の小野加央里さん。日高村にIターンで移住され、日高村&仁淀川流域のために活動しています。
冒頭でPCが動かなくなるトラブルもご愛嬌。すぐにいろんな人が助けに来て、その間、なんとかつなぐ小野ちゃんの姿に、むしろ場がほっこりと温まった気がします。
日高村には、フルーツトマト、芋けんぴ、仁淀川という3つの日本一があります。私としては、一つひとつは日高村と結びついていたけれど、「3つの日本一」と言われるとより目を惹きますね。
さらに、日高村は実は、人口が増えている地域。それは個人的な実感もあります。Uターンしてから出会う若者(Iターン)の多くが日高村に住んでいるのです。nossonの「コツコツ」の取り組みが支えているのでしょう。
例えば「いきつけいなか」。これは、移住前のコミュニケーションで移住のミスマッチを減らそうという取り組みです。オンラインで話したり、実際に日高村を訪れて地域の方々とお話ししたりする機会を設けています。2年間で創出した関係人口人数はのべ249名!スゴイ。
最近では、「スーパー関係人口創出メンター制度(通称:スパ関制度)」という名の、日高村に住む地域おこし協力隊や起業家の事業支援を始めています。地域に「外のモノサシ」を取り入れるって大事ですよね。しかもスパ関No.001は小島さん、No.002は春日井製菓・おかしな実験室長の原智彦さん。CLS高知でおなじみのお二人のサポートとは、なんとも豪華です!!!
そして話題は、移住者を中心とした地域コミュニティへ。「移住」や「地域活性」は、他の三事例とは異なり、具体的な商品がありません。そんな中でのコミュニティづくりには他とは違う難しさもあるだろうと思います。小野ちゃんの「みんなで」盛り上げていく野望、応援しています!
懇親会で小野ちゃんと話す中で、小野ちゃんの魅力は「助けられ力」だよな〜と思いました(&伝えました)。初めて高知で小野ちゃんに会ったのも、CLS高知で知り合ったプロのコンサルの方が日高村にヘルプに来た日の懇親会でした。冒頭のPCトラブルエピソードからも、助けられ力が伺えました。奮闘している小野ちゃんは美しい。だからみんなが手を貸したくなるし、それが結局は日高村の関係人口創出に繋がっていくのかもしれないと、これを書きながら改めて思います。がんばれ、小野ちゃん!
3.事例② カゴノオト(四万十町)
二例目は、四万十町で地域の素材を使ったシュトーレンを製造・販売しているカゴノオトの前成照さん。東日本大震災を機に、パートナーの小清水緑さん(コッシー)と、関東から四万十町にIターンされています。前さんも小島さんに倣って、資料を公開してくださいました!
前さんとはnoteで繋がっていたのですが、お話を伺うのは初めてで、楽しみにしていました。結論から言うと、前さんの歩んできた道、シュトーレンに行き着いたストーリー、そこからの試行錯誤などが絡み合い、めちゃくちゃ心揺さぶられるピッチでした。
移住して就農し、その後オープンしたカフェを畳み、お菓子作りに切り替えたカゴノオト。若かりし日は「働くって何?」と迷っていた前さんが、シュトーレンと向き合い、「作ることと売ることは別物」と気づいて「売ること」を学び、顧客接点を作るためにさまざまな取り組みに奮起します。
出張販売、シュトーレントリップ、お客様との手書きハガキのやり取りなど、オフラインのコミュニティでは、暖かさをやりとりするようなコミュニケーションを大切にされていました。
シュトーレントリップは、ご購入いただいたお客様のもとへ出向き、シュトーレンとのストーリーを聞いて言語化する旅なのだそうです。素敵!
また、四万十町という流通面で決して便利とはいえない場所から商品をお客様に届けるためには、オンラインでの接点も重要。生産者と顧客をつなぐコンセプトが素敵です。
生産者やお客様だけでなく、関わったすべての方々に感謝するスライド。カゴノオトのHPを作った株式会社SHIFTの孝橋直弥さん(直弥くん)は、2回目の成人式で一緒に幹事をした仲間であり、今も変わらず飲み仲間。直弥くんが「カゴノオトさんらしいHPにしましょう」と伝えた一言が嬉しかったと、前さんから直弥くんに、熱い熱い感謝のメッセージが贈られたのも印象的でした。
以前、コッシーにお会いしたときにシュトーレンを味見させていただいたのですが、カゴノオトのシュトーレンは、真剣に、めちゃくちゃ美味しいんです。その裏側にある丁寧なコミュニケーションを知ることで、もっともっと、カゴノオトが好きになりました。次回のCLS高知にも登壇されるとのこと、こちらも楽しみです!
そして大学の後期(2学期)には、私の授業にゲスト講師としてコッシーをお迎えし、これまでのキャリアや今大切にしている価値観などをお聞かせいただく予定です(シュトーレンづくり最盛期なのにお引き受けありがとうございます)。こちらも楽しみ!
4.事例③ ヤッホーブルーイング(長野・軽井沢町)
今回、ヤッホーブルーイングでコミュニティ・マーケティングを担当されている佐藤潤(じゅんじゅん)さんが高知にお越しくださいました!急遽、時間を延長して事例枠を増やしたそうです。参加者にとってスペシャル・ボーナスな時間です!
クラフトビールの場合、大手メーカーとは異なる戦い方が求められます。緻密なコミュニティ・マーケティング計画とKPI設定(=勝利条件)、その結果、よなよなエールのファンが芋づる式に増えていくコミュニティの進化について、お話を伺いました。少しずつ広げてきたイベント、最終的に4,000人枠が15分で完売!ですよ。
大きな成功を収めているのにはそれなりの理由があって。まずはお客様の位置付けを言語化。
KPIは「ぞっこん度」。お客様から定量的・定性的にデータを取り、分析しています。また、「なぜコミュニティに参加したのか?」についても数値で把握。やっぱり口コミは絶大な広がりを見せるのですね。
東京では、ヤッホーブルーイングを介さずともお客様自らが集まってよなよなエールを楽しむ会を開くようになり、それがさまざまな地方に伝播して行ったのだとか。じゅんじゅんさんはできる限りそうしたイベントに参加しにいくそうです。
さらに、ゾッコン度の高いお客様には、企業の課題も共有して一緒に考える「よなよなこれから会議」にも参加してもらうのだとか。スゴイ!
「何を買いたいか?」ではなく、「誰から買いたいか?」。ここを訴えていく難しさは、大地を守る会(有機野菜や無添加食品の宅配事業)に勤めていた時代に痛感しました。「わかる人にはわかる」の先に向かってスケールしていくための貴重な事例をお聞かせいただきました!
5.事例④ 松田医薬品株式会社(高知市/南国市)
最後の事例は、生薬を使った入浴剤が自慢の松田医薬品・松田憲明さん。今年、一般社団法人化されたCLS高知の代表理事も務めていらっしゃいます。松田さんは20代後半でUターンし、家業を継ぎました。
オンラインショップや入浴剤の商品パッケージは、まもなくリニューアルされるようですよ。今回のテーマは「銭湯コミュニティ」!
そして松田さんも発表スライドを共有してくれています!
幼いころから入浴剤を使うのが当たり前だったという松田さん。Uターン後、改めて商品としての入浴剤に向き合い、「自社製品は最強!」に気づくも、夏の離脱が原因で継続的な売り上げにつながっていないことにも気づいてしまいます。
プレゼンがめちゃくちゃ面白くて、惹きつけられます。笑
しかし、昨年秋のCLS高知で東京で銭湯「湯どんぶり栄湯」を営む「ふがし」さん(ハンドルネーム)に出会います。銭湯と入浴剤、まさに運命の出会い。その後、Zoomを駆使して逢瀬を重ね、栄湯のファン・コミュニティ「湯どんぶりの待合室」と松田医薬品の入浴剤のコラボレーション企画がスタートします。
そしてその企画はまさに現在進行中!
5月には東京でイベントもあるようです。こういう場で拡散してもらうのもまた、素晴らしいですよね。そして、実際に拡散する参加者が多いのは、多くの方がCMC_Meetupのファンであり、松田さんのファンだから、なのだろうと思います。CMC_Meetupが良質なファン・コミュニティであることがその場で実証されていく瞬間でもありました。
それは懇親会の参加率を見ても明らかです。
そして聞きながらここまでサマリーしてアウトプットしてしまう猛者もいるのだがら、参加者の方々、本当にすごいです。
松田医薬品のファン限定入浴剤づくりイベント、このCMC_Meetupの前にも開催されていました。行きたかった〜。生薬の入浴剤、作りたかった〜。
6.私とコミュニティ・マーケティングのつながり
さて。長くなりましたが、ここからが「自分ごと化」の時間です。たくさんの学びがありましたが、いつもすぐには消化しきれず、書くことで自分に落とし込んでいます。私の本業は大学教員であり、マーケターではありません。しかし、生活の中に応用できることは山ほどあります。
まず、私は組織でいくつかのチーム(とか委員会)に属しています。取り組みによっては、「勝利条件」が明確になっていないために、このまま続けることに意味があるのか?と感じている案件がいくつかあります。CMC_Meetupで学んだことを基盤として情報を整理し直し、「勝利条件」とそれに見合ったKPI設定が必要そうです。
それに加えて、私の個人的な課題は「効果的な伝え方」。なにぶん物言いがストレートすぎるんですよね。情報整理と同時に、何をどういう順番で、どういう言い方で伝えれば理解してもらえるのか、という観点も、あわせて磨いていく必要があります。
続いて、学生との関係構築。後期(2学期)は主催する授業を持ちますが、私は学部付きではないために、授業は「共通教育」というカテゴリに属します。学部によらず誰でも履修できる反面、学生にとっては選択しにくいことが想定されます。そもそも学生との接点が日常的にないので、学生にしてみれば「あんた誰?」って感じでしょう。知らない人の授業を積極的に取るとは思えません。
幸いにも、学生主体のキャリアについて考えるイベント@KSBが定期的にあるので参加させてもらっており、そこで学生たちと話す機会を得ることができています。今の悩みを聞かせてもらうことも多いので、その解消に役立つよう、できるだけ4月以降の授業に反映しています。これは、じゅんじゅんさんが顧客主体のイベントに積極的に参加するのと似ているのかもしれません。
くわえて、私のキャリア開発の授業は、多様な価値観に触れることで学生が自分自身の価値観を見つめるきっかけの場になることを目指しています。だからこそ、私一人の力ではなく、さまざまなゲスト講師の視点を共有する時間が必要です。これは松田さんの図でいくと、入浴剤=私、湯どんぶりの待合室=ゲスト講師、入浴剤の新たなファン=学生、になるのでしょうか。
……教員も、商品なんですね!
まだまだやるべきことは山積みですが、小野ちゃんのようにコツコツと、前さんのように心をこめて、じゅんじゅんさんのように戦略的に、松田さんのように自社製品に愛をこめて、進めていきたいですね。気合い入りました!
最後になりましたが、CMC_Meetup高知の運営の皆さま、ご登壇の皆さま、ご参加の皆さま(特に絡んでいただいた皆さま)、学びにあふれる時間をありがとうございました!
↑ かずちゃん、完璧な時間管理でした!笑