19.利尿作用アリは間違いない!
ばあちゃんが自宅で過ごした最後の夏。
私の従妹が、ばあちゃんのお見舞いに来ました。
ばあちゃんの好物のひとつ、スイカを持って…。
この頃のばあちゃんは、食事に制限があり、水分の多いスイカはNG食材のひとつでありました。
知らずに持ってきてくれたとはいえ、介護してる身にとっては、夕食時に食べさせるのは、夜中にトイレへ連れてはいけないので、おねしょが心配です。
しかし、目の前でかわいい孫から好物をもらったため、さすがに食べさせないという訳にはいきません。
「叔母ちゃんが責任持って洗濯するから、少しだけ食べさせてあげて」
叔母からそう言われ、黙ってはいるけれど、スイカが食べたくてウズウズしているばあちゃんの無言の圧に負けて、夕食のデザートにほんの少し。
本当にティースプーンで3〜4回すくって、小皿に乗せてあげました。
ばあちゃんは「美味しい」といって、ペロリと平らげました。
翌朝。
いつものように起こしてトイレへ連れて行こうとすると、敷きパッドまでびっしょり。
そんなことはしょっちゅうだったのですが、この頃はある作戦が功を奏して、お漏らしの頻度が減っていたから、久しぶりのこれにはさすがに驚きました。
本当〜にババシャツやパジャマの上衣まで濡れていました。
着替えさせて、デイサービスの迎えを見送ったあと、すべてバケツに入れて水洗いして叔母に伝言メモして自宅にもどりました。
夕方、ばあちゃんちへ行くと、玄関にビニール袋に入れられた朝のひと騒動の洗濯物が、どすんと置いてありました。
待っていた叔母から「出た?」と一言。
「久々に、『こんなに出るか?』ってぐらいの大しょんべんだった!スイカって、本当〜に利尿作用すごいね」
ばあちゃんは、叔母と私の会話をテレビを観ながら聞いていました。
耳が遠いからはっきりとは聞こえてないと思うけれど、事情は察していたのでしょう。
「もうスイカは禁止です!あげません!」
夕食時に私がそう宣言すると、ムッとしてか細い声を張り上げてこう言いました。
「食べますっ!」
私も負けていられません。
「あげませんっ!」
すると、ばあちゃんはさらに言いました。
「食べますっ!」
もう笑うしかありませんでした。
亡くなってからですが、やはり従妹がばあちゃんに小玉スイカを買ってお供えしてました。
あの世できっと、私に怒られることなく、大好きなスイカを存分に食べたことでしょう。
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