24.爆睡のスターウォーズ
どうせ父の関係者は、私の書いたものは読まないと思うので、今日は父の趣味である映画の想い出話。
娘の私から見たらどう考えても、『人生全て思いつき行動』な父にしては、一般的でまともな趣味ではあるが、父本人が周囲に映画が好きなことを秘密にしているらしい。
なぜ秘密にするのかと聞いてみたら、いちいち言うのが面倒とのことだった。
おそらく映画のジャンル・監督・俳優・撮影国などなど細部にわたって聞かれるのが面倒なんだろう。
なにしろ、映画のタイトルも気にしないで観ているので、「この映画、何?」と聞いても「知らね」と言われるのが関の山だし。
邦画は「男はつらいよ」と「釣りバカ日誌」以外はほぼ嫌いで洋画好き。
西部劇やアクション映画がお気に入りなのはいいが、恐怖映画や巨大生物により人間が食べられて血みどろなのを食事中に観るのはやめてほしいと思うけど。
それなのに、映画館で観るのは好きではないらしい。
その訳はおそらく、私が子どもの頃のあの日にある…
ある日曜日。
父が弟2人を連れて映画を観に行ったことがあった。
その映画は、今なお続編がどんどん公開されて、人気の衰えぬ『スターウォーズ』
今のような大型シアターではなくて、場所は街の小さな映画館。
私は母と2人で映画館近くのスーパーへ買い物に行き、映画が終わる頃、映画館前で落ち合うことになった。
買い物を終えて映画館前に行くと、我が家の男3人が映画館前で待っていた。
母が「どうだった?」と聞くが早いか、開口一番に弟が話し出す。
「あのね、パパがね、いびきかいてねてたん!ボクたちもねちゃった!」
父はニヤニヤしている。
暗い映画館。
日頃の疲れからなのか、どうやら映画が始まってさほど経たぬうちに、居眠り経由爆睡とあいなったらしい。
「なに、それじゃあ映画観ないで、みんなで寝てたん?」
「うん!」
呆れる母に聞かれて、弟が元気に答える。
その後、しばらく我が家では『スターウォーズを観に行って、パパはいびきかいて寝てた』と笑うのがブームだった。
買い物へ行っていた私は、この映画はまともに観ていないけれど、今でも『スターウォーズ』と聞くと、どんなにエピソードが増えて、あの頃よりもパワーアップしているとニュースなどで見聞きしても、なぜかよく眠れる映画という印象が拭えない。
なぜなら、テレビで時折放映している『スターウォーズ』を観ながら、やはり父はウトウト居眠りしているから。
あの壮大な音楽を子守唄にするってどうなんだろ?
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