小説投稿サイトをめぐる3つの立場(作者だけに努力を課しても意味が無い)
「投稿サイトで小説がヒットするまでを時系列順に追うと、そこには6つの壁がある」と以前の記事で書きましたが…
この「小説投稿サイトに立ちふさがる壁」を「時系列」ではなく「立場ごと」に整理すると、そこには3つの壁が存在することになります。
図にすると、以下のような感じです。
ヒットは作者の努力だけで成立するものに非ず。
小説投稿サイトには「投稿サイト(の運営)」「作者」「読者」の三者が関わっています。
投稿小説界隈では、何かと作者の努力や工夫がクローズアップされがちですが…
実は作品のヒットを阻む「壁(課題)」は「作者」の中だけではなく、「サイト(運営)」「読者」それぞれの中にも存在します。
しかし、そちらは何かと注目されず…
…というより、ほとんどの人が「ノーマーク」なのではないでしょうか?
正直、知ったところで作者個人にはどうすることもできない壁(課題)も多いのですが…
知らずにいるよりは、知っておいた方がメンタルやモチベーションの維持に役立つのではないでしょうか?
作者の努力ではどうにもならない「他の二者が原因」の失敗まで、全て「作者のせい」にされたのでは、メンタルがいくらあっても足りません。
作者はただ「作者の立場としてできる努力」だけに注力して、あとのことは「運」だと思っておいた方が、精神的にずっとラクに創作活動ができるのではないでしょうか?
1.投稿サイト(運営)の壁
投稿先のサイトを「なんとなく」で決めてしまっている方も多いかも知れませんが…
この「投稿先の選択」で作品の運命が左右されてしまうことも大いにあり得ます。
なぜなら、サイトによってだいぶ評価機能やランキングシステムに「違い」があるからです。
たとえばランキングの元となる「ポイント(数値)」を計算する期間も、サイトによって違います。
ポイントを直近24時間以内で計算するか、1週間以内で計算するかによって、順位はだいぶ変動しますよね?
(計算期間が短ければ短いほど、新着ブーストや完結ブースト等の影響が出やすい「バズリ型」のランキングになりがちです。)
それに「評価のしやすさ」もサイトによって異なります。
アカウントが無ければ一切のアクションができないサイトもあれば、アカウント無しでも「ひとこと感想」なら送れるというサイトもあります。
(評価できる人数が限られれば、その「結果」としてのランキングも「一部の人間だけの偏ったランキング」になりがちです。)
つまり、ランキングの精度(信頼性)というものは、サイトのシステム次第なのです。
…とは言え「どういうシステムを組めば精度の高いランキングが作れるか」というのは、かなりの高IQ者であっても難しい命題ですので、どの運営さんも「手探り状態」なのではないかと思われます。
現状、作者が「自分の投稿スタイルに合った」システム(サイト)を選ぶのが一番なのでしょうが…
「どのシステムなら自分の作品に合うのか?」ということ自体、データサイエンスの素人には難しい問題ですよね…。
あとは「作品の露出機会がどの程度あるのか?」や「作品が探しやすくなっているか?(ページ構成が見やすいか・検索機能が使いやすいか)」も大事な問題です。
なにせ、読者と作品が出会ってくれないことには何も始まりませんので、その「出会いの場」がちゃんとあるかどうかは、作者にとって死活問題なのです。
2.読者の壁
小説投稿サイトをめぐる三者のうち、最も「ノーマーク」で注目されていないのが、この立場なのではないでしょうか?
運営さんも作者の皆さんも「良い作品さえ生み出せれば、読者は勝手に流れ込んでくるもの」と思っていたりはしませんか?
しかしそれは読者に「作品を見る目」があれば、の話です。
読者と一口に言ってもそのレベルは千差万別で「おもしろい小説を見出すのに長けた読者」もいれば、そうでない読者もいます。
「自分の好み」をしっかり把握していて、それに合った小説を探せる読者もいれば、ただランキングやその時々の「人気」に流される読者もいます。
コンテンツは「創り手」だけでは成立しません。
それを楽しむ「受け取り手」にも、それ相応の能力が無ければ、やがては廃れていってしまうのです。
むしろコンテンツの命運を握るのは、そんな「受け取り手」の方なのではないかと、個人的には思っています。
昨今の小説投稿サイトは「投稿戦略」ばかりが独り歩きし、「いかにクオリティーの高い作品を生み出すか」よりも「いかに効率良く数値や順位が獲れるか」の方に注目が集まりがちです。
しかし、読者の立場で考えてみれば「数値を獲ることばかりに熱中して、クオリティーがおろそかになっている」なんて状況、全く歓迎できませんよね?
少し想像力を働かせれば分かること…それなのに、実際のところその手の投稿戦略は大人気です。
それは何故なのか…?
答えは「そうやって数値や順位を獲らなければ、作品を読んですらもらえないから」です。
「高い順位」「大きい数値」を獲っていれば獲っているほど「おもしろそうな作品」に見える…そんなことって、ありませんか?
実際のところ、その順位や数値は「戦略の巧さ」で獲れただけのものかも知れず、中身の「おもしろさ」を保証するものでは全くないのですが…
そうやって数字に踊らされる読者が多ければ多いほど、投稿戦略に踊らされる作者も増えていくのです。
この悪循環を打ち破る方法はただ1つ。
読者が「うわべの数字」に惑わされず「自分が本当に面白いと思える小説」を「自分の感覚」で探し出してくれることです。
どんな名作も「誰にも読まれない状態」では誰にもその面白さが伝わらず埋もれてしまいます。
そうならないためには、どうしても読者の「見る目」――真の名作を探し出す能力が必要になってくるのです。
3.作者の壁
作者の中にも、もちろん課題はあります。
…と言うか「作者に課題がある」ということは、既にほとんどの方が気づいていらっしゃるのではないでしょうか?
ただ…多くの方は「作品のクオリティー」「執筆スキル」などの「いかにも」な課題にばかり目が行ってしまい、その他の課題に気づいていないのではないでしょうか?
上の項目でも触れているように、小説投稿サイトでは「ただ作品の質を高めるだけ」ではヒットできません。
なぜならそこにはサイト(運営)の課題や、読者の課題が絡んで来るからです。
その二者の弱点を補うために、作者の側にも工夫や努力が求められるのです。
たとえば、読者に「自分のニーズに合った作品を探し出す能力が無い」あるいはサイトに「需要(読者)と供給(作品)のマッチング性能が無い」なら、作者の側が「読者のニーズに寄せていく」努力(マーケティング)をするしかありません。
同様に、読者に「検索能力(検索意欲)が無い」あるいはサイトに「充分な露出機会が無い」なら、作者の側に「作品アピール」の努力が求められます。
正直、「物書き」としてのスキルとは別の種類の能力ですし、純粋に創作にだけ力を注げず、別の部分に力を割かなければならない状況はどうなんだ…というのはあるのですが…
現実問題として、他の二者が改善してくれないことには、その重荷が作者の肩に乗って来てしまうのです…。
逆に言えば、サイト・読者の二者が改善してくれさえすれば、作者の負担は激減し、純粋に創作にだけ力を注げるようになります。
なので、以前から過去記事などでちょこちょこ、投稿サイトを取り巻く人々の意識が変わらないかと情報発信し続けているのですが…
過去記事にも書いた通り「読者の意識を変えるのは、作者の倍難しい」ので、一朝一夕には変わらないかも知れません。
「作者が創作以外の部分に労力を取られる」状態は、結局はサイト・読者にとってもかなり「損」な事態なんですけどね…。
3つの立場それぞれが平等に負担(労力)を分け合って「どこか1つの立場に重荷を押し付け過ぎない」ようになれれば一番良いのですが…。
(たぶん「読者」に限って言えば、ほんの少しの+αの労力を払うだけでも事態は劇的に改善する気がします。具体的にはもっと「検索機能」を使って「数値」ではなく「要素」や「展開」の好みで作品を選んで欲しいということなのですが…。)