京都へ出かけた話
『そうだ京都、行こう。』
シルバーウィーク3日目の朝、目覚めとともにふと思った。
窓の外は京都にちょうどいい気候。持て余した時間も元気も、愛も勇気も希望もすべてが京都にむき始めた。
「その日にならないと気分はどうなるかわからないからな〜」
と言い訳をしていつも先の予定を立てないのおで、ゴールデンウィークもお盆休みも、特にスペシャルがないまま終わってしまった。2アウト。
そしてこのシルバーウィークもすでに2日見逃してる。
2ストライク。追い込まれたら、多少ボール球でも振りに行くべし。
そうだ、の勢いのままに宿をとった。
「今日は京都に小旅行です。」
「そうと決まれば、はよ行きますどすえ。」
どうやら妻にはヒットしたみたい。
リュックサックに、着替えとパソコンと「好かれるモノの言い方辞典」という旅先では絶対に読まない本まで詰め込んで、阪急電車に乗り込んだ。
・・・
久しぶりの京都は新鮮で、懐かしい。初めていく場所でさえ、寄りかかって落ち着ける場所を知っていて、通い慣れた通学路のように自分が自然とおさまっている、そんな気がする。
故郷みたい。と思いながら散歩していると、植木屋の樹まで実家の犬にみえてくる。
四条の商店街を歩いていると、雰囲気のよい文具屋にどうぶつのハサミ。小学生の道具箱にあったような、なかったような。つい嬉しくて童心にかえり、お店の人の目を盗んで写真をとる。
すごくキュート。ハサミが動物の耳になってるんですって。
京都のまちを歩きながら、新鮮さと懐かしさを感じて巡る旅。2人は歩き疲れて鴨川にたどり着いた。なんとも気持ちのいい風が2人の間を通り抜ける。
むこうではギターとサックスのセッションをしてる男性たち、反対側ではトレーニングしてる婦人たち。明らかに異なる人たちが川のまわりで融和している。鴨川は自由だ。
等間隔で座るカップルたちのちょうど間に、申し訳なさげに2人で腰をおろした。当然そこだけ非等間隔になったけれど、自由な鴨川では許される。
「今日は来られてよかったね。」と妻がぽつり。
そして心地よい沈黙。
沈黙の間、10分考えた。
「心待ちにしていた今日という日を。鴨川でみよう京都の夕日を。」
10分考えて、韻をふんで返事を返した。
自由な鴨川では誰も聞いていなかった。