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「かぐや姫の物語」にまつわる考察【第六夜】


くらきよりくらき道にぞ入りぬべき
          遥かに照らせ山の端の月
                                              ー和泉式部

行き倒れるかぐや姫

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※ネタバレあります。また、私見多く含んでいます。思考の流れのままに書いて不親切なところもありますが、とりあえず直感メインでいきます。

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映画館の予告で「かぐや姫の物語」を見た時、「姫の犯した罪と罰」のキャッチフレーズと、疾走し雪原に行き倒れるかぐや姫に心を捕まれ、「絶対本編を見る!」と心に決めた。

思えば、昔から「流転」「流浪、流離う」「漂泊」に心惹かれていた。流離う切なさがDNAに確かに刻まれているのだとおもう。

かぐや姫が疾走するきっかけは、外見を品定めされる穢さ、マガイモノ感、もろもろのことが怒りと悲しみとなって爆発したからだ。

かぐや姫は襖を次々と開けて(破り)、着物を次々と剥ぎ取って、満月の下を疾走する。振りほどいて捨てて、下生えの藪に手足が傷ついても襦袢がかぎ裂きになっても走ることをやめない。ここの墨絵のような筆走るアニメーションは秀逸。

思えば、高畑監督の「アルプスの少女ハイジ」でも、ハイジが服を次々と脱ぎ捨てる場面があった。この時のハイジは、都会の窮屈な暮らしから山に来て、空、山、羊、美しい風景に心が解放されての下着一枚だった。見る方もそんなハイジの喜びに一緒に心が軽くなった。

(高畑監督は後に、「ハイジはあまりにも大人が描く理想の子どもだった」と語ったという。かぐや姫のことも「かぐや姫もハイジのことなんですよ」とも言ったというが、ハイジの純粋な幼女性から、かぐや姫の思春期の女子(男子もある)の、幸せな子ども時代が奪われることへの怒りや性の対象とされる気持ち悪さが、リアリティを持って描かれていた)

かぐや姫は脱ぎ捨てても純粋な子どもに戻れない。振り払っても振りほどいても脱げないものが、生きている限り離れない、とわかる哀しみ。穢きところに染まるおののきと怒り。ここは違う、と心は叫ぶ。逃げたいわけじゃない、行きたい。何処へ?

かつて捨丸たちと駆け回った山は枯れ木ばかりの雪山となり、捨丸たちも「定住しない」木地師という職業の常で、既にどこかへ行ってしまっている。

月の人であり、成長の早いかぐや姫にとって初めて訪れた冬。木も鳥も「全て死んでしまった」と思うが、炭焼きの老人に「春はまた還ってくる」と教えられる。
とぼとぼと歩き、やがて真っ白な雪原でぱたっと倒れてしまう。空には大きな月。

「この景色、知ってる…」と呟き倒れるかぐや姫。そして観る者もなぜか懐かしいと感じる景色だった。

どの本での指摘か失念して申し訳ないが、この流浪のかぐや姫が持っている木の枝は「笹」なのだという。能では「狂い笹」というシンボルなのだという。
狂い笹とは。

何事かがあって狂い乱れている人物が、その状態を象徴するように手に持つ笹のこと。子を失った母親がシテの「百万」や「隅田川(角田川)」、男性への恋慕のために狂女となった遊女がシテの「班女」などで用いられる。狂言でも、乙女に恋焦がれる祖父が登場する「枕物狂」や、妻を恋い慕う夫がシテの「法師ヶ母」などで用いられる(能楽用語辞典より)

子や恋人を探し狂う、狂女の姿で旅をするしかなかった女(男)とはどんな人たちなのか。

ちなみに、この笹の由来は「古事記」の天照大神の岩戸隠れで、天細女命が天香具山の葛を襷や髪飾りにし、同じく香具山の笹を手にして岩戸の前で舞を舞った、とされている。岩戸開きの立役者、光と影の、死と再生のあわいを司る女神、アメノウズメ。
キーワードが「カグヤマ」だ。天細女命はカグヤマの神であり巫女であるということだろう。もう、高畑監督、なんですか?繋げるじゃない。天才だから当たり前か。

この神が持つ笹が、なぜ狂女もののシンボルとされたのか。カグヤマの女神は子を恋人を奪われ探し歩いたのか。そして本人も追われ、狂女のふりをしなければならない境遇に置かれたのか。まるで昔の日本に魔女狩りがあったかのような。ここの深堀りもそのうち書きたいと思っている。(あらかた想定だけしている)

笹は竹。そして竹は月。
こじつけではなく、例えば「築」、という字は「ちく」と「つき」と読む。竹と月は同じということだ。そして「調」は「つき」と調べるの「しら」。そこから、しらやま姫(白山姫(菊理姫)は月姫でもある。調はちょう、でもあって蝶も月と関係がある。

ちなみに、蝶のことを「てこな」とよぶ地方もあったそうだ。ピンとくる方も多いだろう。万葉集に読まれた「真間の手児奈」である。色々な男に言い寄られ、それをはかなんで身投げしてしまう。
かぐや姫も五人から言い寄られ、月へ帰ってしまう。

蝶の家紋は平家が有名だ。滅び、漂泊、貴種流離。
竹は空洞。うつろ船、うつほ。空洞ということでは、すかんぽという草もそうだ。すかんぽは別名「イタドリ」。漢字では虎杖。アニメ「呪術廻戦」の主人公は「虎杖悠二」。ここはまた別の記事で下書きを進めている。

まとまらなくなってきた。けれども、なんとなく、触れそうで触れない感じが伝わるだろうか。まだまだ続くよ(^o^;)ゆっくりとだけど。





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