サハマンションは辛辣?その感想と書評とは?チョ・ナムジュの社会的作品!
『サハマンション』というチョ・ナムジュさんの作品を読んだ感想を紹介します。
本書は、『タウン』という国に抑圧された、底辺的な地位の人が集まる街に住む人々がもがきながら生き、立ち向かっていくお話です。
チョ・ナムジュさんといえば、『82年生まれ、キム・ジヨン』が爆発的ヒットを記録している作家さんで、サハマンションはそれに次ぐ社会的な作品。
本記事では、本書の概要やあらすじについて説明し、感想や心に残ったフレーズなどを紹介。
また、読者が読んだ際に得られるものや、どのような人におすすめなのかを考察します。
韓国の社会的な作品やチョ・ナムジュさんに興味のある方には、ぜひ読んでみてほしいです。
「サハマンション」とは
「サハマンション」の概要
□タイトル:サハマンション
□著者 :チョ・ナムジュ 訳:斎藤真理子
□刊行年:2021年6月25日
□発売・筑摩書房
□ページ数:273頁
□備考:キムジヨンより前から制作、7年かけて執筆
・あらすじ
『サハマンション』は格差社会が連想されるようなお話で、社会的弱者やマイノリティーに焦点を当てた作品になっています。
韓国の『タウン』という国に支配された区画、住処という舞台設定で、底辺的人物が逃げるようにマンションに住み付き、タウンでもがきながら生きていく話。
タウンに住む人物は、全員がそれぞれ辛辣な経験や経緯を経てタウンにたどり着いています。
そんな社会的ヒエラルキーの最下層にいるような住人に焦点を当てて、過酷なバックストーリーが描かれている作品です。
そして、最終的には支配している国に対して、タウンの住人が立ち向かっていく。そんな物語です。
「サハマンション」の書評と感想
・読んでみた感想
おそらく、日本国内で最も有名で売れている韓国の作家さんが、このチョ・ナムジュさんだと思います。
その中でも『82年生まれ、キム・ジヨン』はフェミニズムなど社会問題について切り込んだ作品で、映画化もされたりと特に韓国ではかなりのベストセラーとなりました。
本作サハマンションにおいても、社会的な要素が盛り込まれています。
たとえば、済州島のイエメン難民問題・MERSを彷彿とさせる感染症・堕胎罪の廃止問題、フェミニズムなど、随所に社会問題に似ている状態が登場人物を通して描かれています。
そしてなによりも、すべてに通じている格差社会という問題。
これらを弱者目線で、その過酷さや厳しい現実を登場人物のストーリーで描かれていて、感慨深い作品です。
物語の中での、登場人物の辛辣な経験や起こる事件や出来事に驚いたり憐れむこともありました。
弱者やマイノリティーが、必死に生きて権力に立ち向かっていく姿に感情移入できますし、打ちひしがれながら生きつつ、社会は少しづつ前進しているのだとも考えさせられます。
最初の方からシリアスで、人物のバックストーリーや展開が起こるまでは設定を理解するのに難しくも感じましたが、後半に進むにつれてどんどん引き込まれていきます。
・心に残ったフレーズ
これは終盤でのシーンで、サハマンションの管理人のおじいさんと、主人公のジンギョンとの会話で、おじいさんがうさぎとすっぽんの神話を用いて話すところです。
修羅場をくぐり抜けてきたからこそ、出てくる人の言葉だなと感じますし、真理のようでもあり、個人的にすごく好きなシーンでした。
最後まで読めばわかりますが、おじいさんのこの発言の意味や真意もしっかりと理解できます。
終盤は怒涛の畳み掛けで、どんどん展開していき、非常に面白かったことをこの文を書きながら思い出しました。
確かに、命がかかる自分にとって重要な場面では、嘘をついたりするのは真理のようにも思えますし、人の本性は極限的な場面で出てくるのかもしれません。
・こんな人におすすめしたい
サハマンションも82年生まれ、キムジョンに次ぐ社会派ヒット小説です。
社会的弱者やマイノリティーが住むサハマンションに住む住人の生きていく姿が生々しく描かれています。
住人たちの過去やエピソードが辛辣でリアル過ぎる部分もあり、そこに感情移入してしまい少し辛くなってしまう人もいるかもしれません。
世界観に引き込まれると同時に、社会や政治など現在自分が置かれてる環境と照らし合わせたり、色々な過酷な人がいることに考えさせられます。
そんななかで、この作品をおすすめしたい人は…
☑︎韓国の社会的な小説を探している人
☑︎社会的弱者やマイノリティーに触れたい人
☑︎チョ・ナムジュさんの作品に興味のある人