感想 映画 『蜩ノ記』
原作との違いは、この映画には圧倒的な悪がいないということです。
監督の小泉堯史さんは、黒澤明監督のお弟子さんです。28年間にわたって助手を務めたというキャリアがあります。
ただ、黒沢さんのような圧倒的な何かはないです。
雨あがる(2000年 監督)
阿弥陀堂だより(2002年 監督/脚本)
博士の愛した数式(2006年 監督)
明日への遺言(2008年 監督)
蜩ノ記(2014年 監督/脚本)
作品群を見てもわかるのですが、優しいタッチのものが多く。本作もそういう感じです。だから、原作本と比較すると、何か違う作品という印象を受けました。
お家を守るため、戸田秋谷は自らの生命を犠牲にというのが、この作品の核になっていますが、原作は違います。殿様が戸田に謝るシーンとか、原作にはないし、悪家老が何か本当はいい人っぽい印象も原作にはないです。
古い価値観というのか、武士道的な価値観で上手にまとめたという印象。
これはこれで悪くはないのです。主君のため、お家のために自己犠牲。それなりに感動する場面もあります。しかし、どちらかというと、原作のほうが好きだったりします。
何のために死ぬのか。
そこが大切な気がする。
役所広司の演技力に、その助手として存在感を発揮する岡田准一。この二人がいい。
そして、役所広司の娘役の堀北さんがとてもかわいい。
2023 1 9
原作小説と映画を比較する企画
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