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会員制プール

「こちらは会員様専用のプールになります。2時間制です。これから説明する規約を守ってください」、そうスタッフから説明を受けた。

そのプールは5レーンあり、ビジターは2番のレーンを専用で使うことになる。すでにプールには、品のあるおじいさんが泳いでいた。少しして、所作の美しい品のあるおばあさんが、休むことなくクロールで泳いでいた。

「タオルは自由にお使いください。水分補給は忘れずに。常温と冷水の2種類をご用意しています。ジャグジーはボタンを押すと10分間利用できます」

簡単な説明を受け、泳ぎ始めた。複数の人が同じレーンに入らないよう、予約制になっているそうだ。会員の方々が快適に利用できるため、ビジターの私としては少し肩身が狭い。

このジムに加入するには、入会金が数百万円、保証金が百数十万円、さらに年会費も数十万円かかるらしい。そのため、利用できる人たちは限られているのだろうが、見かけたのはお年寄りばかりだった。

これはステイタスなのだろうか? 以前は他者と差をつけて優越感に浸るようなシステムが流行ったが、この時代には少ししらけた感じがした。海の生き物のように美しく泳ぐ人や、水を滑るように波を立てず泳ぐ人を見ると、こんなふうになりたいと憧れるが、人の少ないプールは何となく物足りない。

普段は定額制のプールで泳いでいるので、1回数千円もするプールの良さが正直わからなかった。というか、正会員さんからすれば、それで「聖域」に入られることにあまり良い気がしないのだろう。

ここも完全会員制にすれば良いものの、ビジターという言葉は聞こえは良いが、広く開放すると施設のコンセプトが崩れるのではないかと感じた。

プールの全景は待合室から見られるのだが、スマホで写真を撮っていたら、中年の女性スタッフが慌てて駆け寄ってきた。

「こちらは写真撮影禁止となっております」と注意された。

会員さんの姿が写り、公開されたらトラブルになることを恐れてのことだろう。とにかく窮屈な感じがした。最初から最後まで「よそ者」のような待遇で、あまり良い気はしなかった。

泳いだ後の、あのけだるさはとても良かった、それはどこでも共通なので良い体験としよう。

(旅先での出来事です)

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