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『三宅雪嶺人生訓』一

衛藤利夫 編『三宅雪嶺人生訓』東亜堂書房、大正四(1915)年
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/933730/1/1

〇自ら侮るもの
 人は先づ自ら侮りて他に侮らる、自ら侮らずして人に侮らるるあるも、自ら侮るに至りては唯だ朽敗を早くするのみ。

【現代語訳】
〇自分で侮るもの
 人はまず自分のことを侮ることで、他人から侮られる。自分を侮らず、人に侮られることがあっても、自分を侮るまでになっては、腐ってダメになるのを加速させるだけである。

『日本及日本人』、『三宅雪嶺人生訓』一頁

【語釈】
◇朽敗…くちてくずれること。腐って役に立たなくなること(『日本国語大辞典』)。



【補説】
「自ら侮る」は『孟子』離婁上「夫人必自侮、然後人侮之。家必自毀、然後人毀之。国必自伐、然後人伐之」(自分で自分を侮るようになると必ず世人からも侮りを受けるようになる。人から侮りを受けないためには、まず自分で自分を重んじなければならない)を踏まえる。
要するに、何事も身から出た錆、自業自得である。
雪嶺の文章には『孟子』を下敷きにするものが散見される。出典を特に明記せず、さりげなく古典の知を散りばめる。
雪嶺は漢学者ではないが、彼の思考には漢学の知が伏流している。


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