黒雪嶺 一
はじめに
人の心の闇をさぐり、社会の暗部をえぐる三宅雪嶺(本名 雄二郎)。
舌鋒鋭い、時に過激な雪嶺の言説を勝手に「黒雪嶺」(ダーティーユージロウ)と名づけて紹介していく。
『真善美日本人』と並んで『偽悪醜日本人』を発表した雪嶺。
「黒雪嶺」を紹介しても、本人に怒られはしまい。
雪嶺の手にする鋭利な凶器は社会の暗部を縦横無尽に腑分けする。
その激烈な表現はわれわれを驚嘆させ、ときに唸らせる。
言うまでもなく雪嶺が黒いのではない。
雪嶺が見つめた人や社会が黒いのである。
【現代語訳】
教育勅語を拝んでそれを暗誦し、官吏に阿諛追従することを専ら務める輩がいる。神経質な人を脅迫して利益を貪ろうとする輩もいる。児童に教科書を買わせて莫大な利益を獲ようとする輩もいる。こういう輩の忠誠はわずかに鼠のそれに勝るに過ぎない。
【補説】
以前、某大学の一角で目撃した衝撃の一幕。
新学期の教科書販売の時期に、授業後、自身の書籍を受講生に売りつけていた教員がいた。
無論、教科書は大学の書店を経由して販売されることとなっており、教員が直接売りつけるなどありえない。
商魂逞しいのか、それほどまでに金に困っていたのか、ただの世間知らずなのか、後にも先にも目にすることのない光景であった。
まあ、そんな輩は可愛いもので、雪嶺が問題にしているのはもっと巨利を貪っている悪党である。
こういう悪党のチュー誠心はネズミよりちょっとまし、という表現が、黒雪嶺らしい。
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