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#066 ”人を頼ることができるのが強さ”「Shrink~精神科医ヨワイ」第2話の感想
NHKで放送されたドラマ「Shrink~精神科医ヨワイ」の第2話の感想を書きます。第2話では、双極性障害を患ったラーメン屋店長を描いています。
行列のできるラーメン屋の店長として忙しく働く谷山玄は、過労とノルマのプレッシャーで心身の調子を崩してしまい、第1話でも出てきた早乙女クリニックを受診します。早乙女は疲れによるうつの症状があると診断し、睡眠薬と抗うつ剤を処方、飲み切ってくださいね。と言われます。
玄さんのラーメン屋のファンであり常連のヨワイは、毎日通うラーメン屋で、玄さんが鬱と診断されて休みを取っていることをスタッフに知らされます。玄さんは常連であるヨワイに気を使い、ヨワイではなく早乙女クリニックを受診した、とヨワイは聞かされます。
ある日ヨワイが街中で玄さんと再会したとき、妙にハイテンションな様子に気づき、うつ病ではなく双極性障害を疑います。玄さんの妹、谷山楓がヨワイのひだまりクリニックを訪れた際に、うつ状態のときにうつ病と診断されて飲んだ薬で躁状態に躁転してしまう可能性を指摘、双極性障害の治療方針として、周りの人間がチームとなって戦おうと約束します。この病は本人は病識に気づかない病だから、と。
楓は、ヨワイと雨宮、そして、玄さんが一番に信頼をおく柔道の師匠も巻き込んで、精神病棟につなげて入院をさせることに成功します。患者を入院施設に入れることの難しさをリアルに描いています。私も妻を精神科病棟に入院させたことがありますが、壮絶な体験でした。
玄さんは入院生活で色んな患者とふれあいながら徐々に回復をして、退院までこぎつけます。退院後は生活訓練施設に通うよう、ヨワイに促されますが、早く店に戻りたいと焦る気持ちが垣間見えます。ヨワイは焦る玄さんを制してこういいます。「人を頼ることができるのも強さではないでしょうか。」
玄さんが心身の調子を崩したのは、彼のバックボーンとして、「誰にも頼れない」という責任感があるのかな、と思いました。玄さんは幼いころに親を亡くし、小さいころから妹と二人で暮らしてきました。兄である俺が何とかしなきゃと、食べ物がないときは、コンビニの廃棄食材を求めて妹に食べさせようと、必死にもがきます。自分が強くならなくてはと、鎧をまとおうと努めます。ラーメン店の店長になってからも、「あとは俺に任せて」と、幼子のいるラーメン屋のスタッフを先に帰らせたり、自分で仕事を抱え込みやすい性格です。
ヨワイは退院後の玄さんに、毎日の眠りと気分の点数をつけるように提案します。鬱でも躁でもなく、真ん中の50点をキープするように意識させること。気分の点数化はわたしも11年前からやっていて、今でも毎日続けています。この療法は見える化して振り返ることができるので、後になって役立ちます。
生活訓練施設での前向きな取り組みもあり、緩いペースで症状は回復していきます。躁鬱の波もだんだん減っていきます。しかし、待っていたのはラーメン屋上層部からの解雇通告でした。傷心の玄さんは柔道の師匠を訪ねます。「道を失いました。」と報告します。師匠は玄さんに告げます。「お前の道は何だ?お前はいつかの試合で抑え込まれながらも逆転の一本背負いを決めた。それがおまえじゃないか」と。
帰りの夜道で妹の楓と話しながら歩く玄さん。楓から、結婚すると報告をされます。楓のフィアンセも玄さんの病の告白を受け入れてくれたと告げられます。このとき、玄さんがまとっていた鎧が剥がれ落ちた気がしました。等身大の自分で病と共存する覚悟が生まれた瞬間だったと思います。
玄さんは楓とともにヨワイの元を訪れます。「頑張らない戦い方もあるのかな。それが俺の戦い方です。」と、玄さんはヨワイに所信表明をし、物語は終わります。
第1話と共通しているのは、最初に患者が早乙女クリニックを訪れるけれど、話を聞く時間がとても短いため、正確な診断がされなかったこと、そして、ヨワイが患者のちょっとした仕草を見抜き、正しい診断と治療のアプロ―チをすることと、患者本人の努力で、治療のスピードが加速したということです。精神疾患はプロである精神科医でも正しい診断が難しく、誤診も珍しくはないこと。そのため、ドクターショッピングをする患者が現実にはたくさんいることを示唆しています。
もう1つの共通点は、患者自身が「だれにも頼れない。頼る人がいない。(と思ってしまう。)」ことで、自らを追い込み、やがては壊れてしまうこと。余裕がないとどうしたって、視野狭窄になってしまうんです。これは私自身もそういうところがあるので、いつも気を付けています。
双極性障害は患者自身に病識がない、という点を描いていたのはよかった点です。私の母も20年以上前に双極性障害を患いましたが、躁状態で友達と花見に出かけた時、友達にとんでもない迷惑をかけてしまったことを語っていました。躁の時は本当に自分が何でもできる、無双状態と錯覚してしまう。躁転は回復と間違えやすい。いいことだと思いきや実はとても危険な状態だというところが、この疾患の難しさでもあります。
人を頼ることができるのが強さ。自立とは依存先を増やすこととはよく言ったものです。自分一人では生きていけないのだから。だから人の間と書いて人間なんです。スティーブン・R・コヴィーの名著「7つの習慣」では、依存から自立、自立から相互依存。それが、成長の連続体を導くプロセスだと説いています。玄さんが頑張らない戦い方が自分の戦い方だと気づけたので、予後は良好とみていいのかなと思いました。
このドラマは1話完結で50分間の中で患者が病に落ちるところから、その過去にさかのぼり、回復までを描くので、とにかく情報量がぎゅうぎゅうにつまっていて、あらすじと感想を書くのがどうしても長くなってしまいます。よほどの軽度の疾患でない限り、こんなに早くは治りませんね。
第1話の感想はこちらです。どこかで、第3話の感想もアップしたいと思います。
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