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儲かる高付加価値のお仕事 ―プロ特許翻訳者の現状-

翻訳ビジネスは、知財のお仕事の中でも数少ない儲かるお仕事だと思います。
今日は、プロの特許翻訳者の現状について、解説してみました。

翻訳は最も重要なプロセス

僕は、日本とアメリカの弁理士として、数多くの外国出願に携わってきました。
会社の知財部から、20年くらい前にスピンアウトして、先ずやったことというのは、特許の翻訳サービスだったんですよね。
当時、日本企業の外国出願を社内弁理士としてやっていて、痛感したのが、外国への特許出願にとって、翻訳は最も重要なプロセスだったという点でした。

すでに、1990年代から、特許専門の特許翻訳者という方たちがいました。
でも、その品質には、ものすごく幅があったんです。
まだ、知財翻訳専門の翻訳会社がそれほどなかったんです。
日本技術貿易が、翻訳部門を立ち上げるかどうかっていう、タイミングでしたね。

濡れ手に粟の儲かるビジネス、だった?

1990年代は、知財の翻訳ビジネスは、いわゆる濡れ手に粟の、非常に儲かるビジネスでした。
背景にあるのが、知財の専門性と翻訳の専門性という、2つの専門性がある仕事でしたので、非常に付加価値があったんですよね。
ですから、特許専門の翻訳者というだけで、楽に食べていけた時代だったんです。

今はというと、残念ながら、ピークに比べますと落ちています。
理由は、日本企業の特許出願件数の半減と、機械翻訳です。

少しづつ機械翻訳に入れ替えが

まだ、機械翻訳は、誤訳が多いので、権利書としての役目のある特許書類の翻訳には向かないですよね。
そのため、機械翻訳を、そのまま利用している出願人は、それほど多くは無いかと思います。
ただし、一部の翻訳、たとえば、英語から日本語に翻訳するものが、少しづつ機械翻訳に入れ替えられて来ています。

また、日本企業の特許出願の件数は、2006年のピークから、いまや半分くらいに、落ち込んでいます。
このような状況で、プロの翻訳者の人たちは、十分な売り上げを維持していけているのでしょうか?
結論を先に行ってしまいますが、維持できている方もそこそこ多いのではと思います。
理由は、先にいった通り、特許翻訳の品質には、ものすごく幅があるんです。
ですから、一定の品質を維持できる人は、引き続き、需要があります。

受注の経路が多様化

しかし、いろいろと問題はあります。
受注の経路が、いままでに比べて多様化してきた点が、大きいと思います。
今までは、国内の翻訳会社を経由して、多くの翻訳の仕事は、流通してきました。
しかし、仲介の翻訳会社が、もうそれほど多くの仕事を、特許の出願人側や特許事務所などのお仕事を発注する側から、取れなくなってきています。

一方で、クラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングでの副業サイトで、比較的、簡単に新規の特許翻訳や技術翻訳のお客さんは掴めてしまいます。

また、最近多くなっているのは、海外からのお仕事です。
以前、業界の変化として、特許の出願人側や特許事務所などのお仕事を発注する側は、海外の翻訳会社や翻訳者へ直接アクセスしていると説明しました。
特許の出願をする企業や特許事務所の方とお話しすると、海外の翻訳会社へ直接、翻訳を発注するケースがどんどん増えているんですよね。
理由は、国内の仲介翻訳会社の仲介費用が外国と比べて高いためです。

面白いことに、日本から海外に発注して、日本で翻訳する

プロの翻訳者の方たちは、もう外国の翻訳会社から、バリバリ仕事を受任しています。
国内の翻訳会社からの仕事よりも、外国の翻訳会社からの仕事が、倍以上多いっていう、翻訳者さんも多いと思います。

面白いことに、日本の企業や特許事務所は、海外の翻訳会社へ直接、翻訳を発注し、その海外の翻訳会社は、国内の翻訳者に仕事を出しているのです。
あと、気を付けなければいけないのは、クラウドソーシングでの副業サイトや、海外の翻訳会社からの仕事の仕方です。

こういった発注先は、期限がすごく厳しいケースが多いんです。
国内の翻訳会社のように、ある程度、まとまった仕事を持っている訳ではなくて、いま持っている仕事をアレコレ探して、発注しているので、スムースに翻訳者に仕事が流れていません。
ですから、受任したら、数日以内に納品!なんて、案件も結構ザラにあるようです。

発注する側と、受任する側との関係性も、どんどん希薄に

それと、発注する側と、受任する側との関係性も、どんどん希薄になっているので、何かあるとすぐに発注側との関係が消えてしまいます。
そのため、コンスタントに仕事をもらうためには、発注側のいうことを、ある程度は、無理して聞いていかなければなりません。
ですから、現在の状況で、お仕事を十分に維持できている、プロ翻訳者の方たちも、それほど楽には、稼げていないというのが、現状のようです。

また、クラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングでの副業サイトでは、仕事を探しているだけで時間がかかってしまいます。
なので、実質の作業時間は少なくなります。

翻訳ビジネスは、知財のお仕事の中でも数少ない儲かるお仕事だと思います。
クラウドソーシングでの副業サイトや、海外の翻訳会社からの仕事の仕方を工夫していければ、以前よりも、比較的、楽に仕事を得られる方も多いと思います。
一方で、作業時間の短縮や継続して受任していくテクニックなどの対応が必要になってきています。


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