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会社を辞めてわかったのは、自分は本当に小さな窓から社会を見ていたってこと

めちゃくちゃ時間が経ってますが…今日はこの記事の続きを。ちなみに、このときは何も思っていなかったけれど、この4月に5年ぶりくらいに出雲大社に行くことになったのでした(なんなら伊勢にも同月に行くことに!旅って、こちら側の意志じゃなくて、ほんと呼ばれるものだから不思議)。


「思いつきで行動する」をやってみる

前回は「会社を辞める」ところで終わっているのですが、次の会社に就職するまでの1年間にしていたことといえば、ざっくりこんな感じでした。

・断食(@伊豆やすらぎの里)
・アメリカひとり旅(@セドナ・マウントシャスタ)
・ぼーっとする
・ジムに通いはじめる
・英語の勉強をはじめる
・資格取ることを考える
・はじめて瀬戸内芸術祭を回る(夏会期・秋会期)
・派遣会社に登録する→半年間の仕事が決まる
・転職活動(決まらない)
・ニュージーランド幼稚園ボランティア+旅
・転職活動(2ヶ月本気でやる)
・お仕事決まる!

何をしていたかというと、ひとまず体と心を休めるということ。最初に行ったのは伊豆やすらぎの里という場所です。

実は、退職する1年前にもここの1週間のプランに参加しているのですが、とにかくリフレッシュできて、仕事を辞めることが自分の中で腑に落ちた場所でもあります。

「断食ってなんだか辛そう…」と思われるかもしれないのですが、正直退職前は飲み会とかがめちゃくちゃあって全然寝れておらず「食欲<睡眠欲」だったのと、食べないと内臓が休まるのでめちゃくちゃ深く寝れて、本当に身体が生き返る感じでした。

あと海沿いとか森へお散歩に行って、身体を動かしたこともリフレッシュにつながりました。会社勤めをしていたときは毎日ヒールだったので、久しぶりにスニーカー履いて森を歩いたら、「わたし歩くの嫌いじゃなかった!てかめっちゃ楽しいじゃん!」って気づいたのも驚きでした。

本館から見える景色
最後の夜はお野菜のフルコース

わたしが参加したコースは平日を含む1週間のものだったので、会社員じゃない人が多くて、フリーランスとか自営業とか休職中とか、自分でペースを選べる生き方をしている人がたくさんいるのもよくて。身体の中だけじゃなくて、脳みそまで緩んでいくというか、考え方が広がる感じでした。


そしてその後すぐ10日間のアメリカ一人旅に行くのですが、これがまたすごく不思議な体験だったのです。ざっくり言うと、セドナは大地のエネルギー、シャスタ山は上とつながるエネルギーなので、上と下にぐいーんと思いっきり引っぱられて、自分の真ん中を確かめる感じ。特にシャスタで出会った日本人ガイドのおじいちゃんがすごすぎて、それまでの自分をキレイに洗い流すような、生きながらに生まれ変わるような時間でした(シャスタという場所自体が、purificationとかrenewalという目的を持っているんだそう)。

わたしはもっと自由でいたいとか、自由に生きたいからアメリカに行くんだって思ってたけど、そもそもわたしたちは自由だった。

セドナは大地のありのままの姿を見て、自然の雄大さに触れて、自分の小ささを知るという感じだったけれど、シャスタは出逢った人の心の深さに触れて、自分の小ささを知った気がする。

セドナの街
ベル・ロック
エアポートメサからの朝日
アンテロープ・キャニオン
グランド・キャニオン
キャッスル・レイク
ハート・レイク
バーニー・フォールズ
マウントシャスタの夕暮れ

この旅の影響もあり、せっかく時間があるなら英語を勉強しようかな?とかジム行こうかな?とか思い始めます。あと、新卒で入った会社を辞めたことで、保険とか税金とか社会の仕組みに対する自分の無知さに気づいて、お金とかの勉強を始めたのもこの頃。

そして、旅行行きすぎてお金がなくなりそう…ということを自覚して、「ひとまず仕事しなきゃ!」でも「転職活動やれる体力も気力もまだない」ということで、短期のお仕事を探しに派遣会社に登録しに行きました。

新卒採用メディアのインタビューがまるで「社会見学」みたいだった

ここで紹介されたのが「マイナビ」の新卒メディアのディレクション。期間は半年と決まっていたのも「ちょうど良い、未来の決まり具合」でした。

わたしが担当していたのは、各企業を担当する営業さんから企画を引き継いで、ライターさんカメラマンさんと一緒にオフィス(現場)に行って、取材をするというお仕事。原稿と写真が上がってきたらチェックをして、企業の人事担当の方に提出、校了したら営業さんにレポートアップという流れでした。

たった半年だったけれど、100社くらいの企業を取材させてもらったことが、わたしにとってとても大切な社会勉強になったのです。1回社会人やってから見た「就職活動」とか「募集要項」には、新卒のときには読みとれないことがたくさん書かれていたし、そもそも日本の新卒採用ってめちゃくちゃお金がかかっていることなんだ…という事実を目の当たりにしました。

次を見据えて、人材とか教育とかサービス業を中心に担当させてもらっていたのですが、それでも会社ごとにカラーとか条件とかが全然違っていて、「一つの会社にいるだけでは見落としていたことがたくさんある」ということも知りました。

個人的に面白かったのは、この土地にはこういう業種が多くて、こういう業種はこういうタイプの人が多いのか、ということがなんとなくわかったこと。例えば日本橋は歴史も古いし、お金に関する業種が集まっているとか、神保町には出版系が多いとか、IT企業とかスタートアップ企業は恵比寿や渋谷が多いとか。そして、わたしが勤めていた西新宿はその中間くらいにできた企業が多いということがわかったり。

ここでも、一つの土地が持つ「エネルギー」みたいなものがあるんだなと、身近なところで気づき直せた機会でもあったし、意識するしないにかかわらず、その場所にいると自然と人間もそういう空気を帯びてくるのだな、ということに気づいたのです。

働き方とか勤め先を選ぶときには、その人の人生観が表れる

たしか、お仕事に慣れてきた年末くらい。取材のオーダーもけっこうピークになってきていた時期のこと。

この日はパチンコの台をつくっている会社の取材で。いわゆる娯楽業界ってめちゃくちゃ儲かるんですね。そのとき対応してくれた人事の人が、たしかこんなようなことを言ってくれたんです。

この業界って、人によってはあんまりいい印象を持たれなかったりするんだけど(親に反対されるとか)、労働環境はすごくいいし、実はお給料もけっこういいんですよ。

僕はこの会社に転職したことで、生活はすごくよくなって、大切なものは守れているから満足しているし、ある意味そこは割り切って働けているかもしれないです。

パチンコが好きな人はまだまだいるから、ここは望んで応募してくれる人も全然いると思うのですが、ほかにも世の中には色んなお仕事があるわけで。そういうところで「自分の意志で」働く人たちを集めていく苦労だったり工夫という視点を初めて耳にして、自分でも無意識のうちに「視界の狭さ」とか「偏り」を持っていたのだと気づきました。


そして次の日は、ある介護施設で働いている新卒1年目の女の子にインタビューをすることに。

その子は、たしか大学生のときのゼミで、東日本大震災の震災復興について調べていて、そのとき地元の人たちに話を聞かせてもらった経験が、自分の職業選択に影響しているという話をしてくれたのです。

安全とか人の命を優先して考えるなら、堤防を高くつくって高い場所に住めばいいのに、って単純に思っていたんです。なんでそこにこだわるのって。

けれど、地元のおじいちゃんおばあちゃんとかと話していくうちに、そういうことじゃないんだなって思ってきて。

ずっと前からわたしたちは海と一緒に生きてきたんだって。わたしたちは海と切り離されて生きることはできないんだって。日々の恵みもいただいているし、海からもらったものは数えきれない。災害があったとしても、それも含めて海と生きていくということ。

高い堤防をつくって、海と生活を断絶することに意味があるとは思えない。それはわたしたちにとって生きていても死んでいるようなものだと。死んだように生きていてもしょうがないんだと。

そのとき、人間は誰しも死と隣り合わせで生きているんだって、言われた気がして。わたしたちは生きることと死ぬことを切り離して考えることはできないんだって気づいたんです。

だとしたら、死ぬということがとても近くに存在している場所でこそ、生きるということがわかるんじゃないかと思って。

だからこの場所で働くことを決めたんです。

(たしかこんな話だったはず…)

もちろん、それに対して色んな意見はあると思うし、実際東北でも県とか地域によってこの震災後の対応ってかなり政策が別れたところでもあるから、すごく難しいことだとは思うのですが。

介護職って体力仕事だし、お給料が高いわけでもない。だからまだまだ全然人が足りていないのが現状。でも日本ではこれからもっともっと必要になるお仕事なんじゃないでしょうか。保育士さんって今でもなりたい職業に挙がっていたりするし、国や都も子育て支援を掲げているから家賃とか補助が出るはずなのですが、当時は介護職ってそういうサポートはあまりなかったのですよね(今はわからないけれど)。

それでも、自分の志のようなものをちゃんと持ってこの場所で働くことを決めたことがすごい覚悟だなって思ったし、彼女の言葉には嘘がなかった。なぜかわからないけれど、ただ話を聞いてるだけで涙が出てきてしまって、あぁ働き方とか勤め先を選ぶっていうのは、本当にその人の人生観が表れることなんだなっていうことに気づいたのです。

自分に合う働き方とか生活のペースって、体感することでしかわからないもの

というわけで、ここで勤めた半年間はめちゃくちゃ学びは多かったし、仕事場の雰囲気も良かったし、楽しかったけれど、「派遣社員」っていう立場上、権限とか自由はなくって、わたしはちょっと物足りなかったのですね。

おそらく派遣社員って、自分が持っている「スキル」を生かして働くお仕事で、「この時間・この範囲で働きます」っていうことが明確に決まっているほうがいい人に向いているお仕事のスタイルだと思います。だから、ジェネラリストとかマネージャー気質の人、自由裁量を求めている人にはあんまり向いていないんだっていうことがわかったというか。

あと、その部署の正社員さんは、わたしの正社員時代と違って全然健やかに働いてて。正社員って、肉体的にも精神的にも限界まで働くイメージが自分の中でついてたのですが、それもまた思い込みだったと気づいて、「やっぱりもっと稼ぎたいし、わたしはいろいろ手を出したい性格だから、正社員のポジションで仕事探そう!」って思うようになったのでした。

ここでまた「働き直す前に海外行っておかなきゃ!」欲が湧いてきて、転職活動と留学準備を同時にやっていたのですが、仕事は全然決まらず、決まらないままとりあえず1ヶ月ニュージーランドに行くことになりました…(本当は、決まってから入社までの予定で行くつもりだった)。

穏やかな暮らしと優しい言葉と美しい景色と

ニュージーランドでは、南島のクイーンズタウンという街に滞在していたのですが、周りをぐるっと湖に囲まれたすごくきれいな街でした。このときは日本人のお母さんと、Kiwi(ニュージーランド人)のお父さん、子ども3人の家庭にホームステイ。

両親ともにパートタイムの仕事を組み合わせていて、それぞれが家事を分担していたり、ホームステイ代も一つの収入になっていて、いろんなパーツから生活が組み立てられているのも新鮮でした。あと、週末は近くの湖に行って、テニスしたりとか。贅沢するわけじゃないけれど、今でいうWell-Beingな暮らしという感じだった気がします。

お家から歩いていける湖
クイーンズタウンの桟橋
クイーンズタウンの街を上から見下ろす

このときは3週間くらい幼稚園のボランティアをやっていたのですが、その幼稚園がすごくいいところで。先生たちのウェルビーイングも大切にしているし、ニュージーランドの先住民マオリの文化を学ぶ時間もあって。そのときに習った歌に”Make a right choice.”という言葉があったのですが、いろんなことが自分の中に積み重なっていたこともあって、「あぁ、自分にとってしっくり納得できる選択をすることが、人生にとってすごく大事なのだな」って思い直せたのです。

いろんな国の言葉でこんにちは
マオリ語(ハワイ語みたい)

その後訪れたマウントクックもテカポも本当に感動の連続で。テカポは世界一の星空と言われていて、「世界初の星空世界遺産」をめざす動きもあるんだそう。わたし自身は天気の関係もあって、マウントクックのほうで満点の星空を見れて、時間を忘れるくらいの美しさに出会うことができました。

テカポの街
テカポ湖を眺めるベンチ
羊飼いの教会
マウントクックに登る朝日
トレッキングコース

たった1ヶ月だけだったけれど、すごく美しい大自然と穏やかな生活とニュージーランドという国の文化に触れたことで、また一つ何か解放された気がして。わたしの大学時代に一番のインパクトを残していった友だちが、なぜニュージーランドに留学場所を選んだのか、やっとわかった気がしました。

結局、わたしを救ってくれたのは「旅」だった

つらつら書いてきてしまったけれど、よく見るとほとんど旅の話。笑

好きだからそれを仕事にしたわけではあるけれど、今振り返ってみても、やっぱりわたしをいつも前に進めてくれるのは、「旅」なんだなと思います。

旅って、いろんな自分の価値観を外してくれるんですよね。自分が、ただそのまま、ただ一人の人間として生きていることを思い出させてくれる。

会社にいても、それなりの人数の人たちには会えるけれど、そういう枠から外れて、たくさん人に会うということがとても意味があるというか。「肩書き」とか「目的」とかを外した出会いの中に、すごく大事なことがある気がします。

結果として、旅から戻ってきた普段の日常さえも、以前とはまた違って鮮やかに見える。当たり前のことなんてひとつもない、全部は奇跡の積み重ねだっていうことに、気づける気がします。

それから、旅先で出会う人たちと生まれるコミュニケーションって奇跡みたいだなって。またいつ会えるかわからない。だからこそ、この瞬間に出会えているあなたとわたしで、何が分かち合えるだろうっていう感じ。あと、旅に出ている途中はその人が変化している最中だから、出てくるエピソードも半端なく面白いし、非日常の雰囲気がその人の素直さを引き出してくれるなって思います。

今でも、旅先で出会った人たちのほうが、そのまんまの自分で話せることってあるし、意外と長くつながっていることは、けっこうある。

人生って、本当に、旅でしかないなと思います。

この後も、旅を通して、わたしは色んなことを学んでいくのだけれど、この1年間はわたしにとってすっごく大きな意味を持っていたし、このときの余白が、今の自分を支えてくれているなって思います。

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