ロイロノートで音楽づくり
文科省が進めるGIGAスクール構想。
勉強会の仲間内でも「何する?何してる?」と、話題に。
来年度、勤務校では1人1台のiPad購入が決まっています。
今年度は、時間ごとに40台のiPadをクラスに貸し出す形で利用してきました。「ロイロノート・スクール」が導入され、全教員が各科目で活用しています。
いわゆるクラウド型の協働学習支援ツールです。
なので、どの端末でも、なんなら家からでもログインして学習できます。
ロイロノート・スクールは、子どもたちが考えるのを助け、その考えを人に伝えることができる道具です。
主体的・対話的で深い学びづくりが求められる中、先生の授業アイディアをシンプルに実現し、子どもたちの学習活動をサポートします。(Google Playストア アプリ説明より)
子ども達が一人一人クラウド上にノートを持っていて、
その中で
・カードに書き出し、スライドのように繋げていく
・画像や動画、PDFなどもカードになる
・クラスで共有できる
といったところが主な機能。
やっぱり子どもが感覚的に使えるのが便利!
難点はひらがなモードがないので、低学年の授業ではじめは苦労した…けど、意外と子どもたちは慣れました。けど、この記事がロイロ運営のひとの目に留まることがあったら、すぐにでもひらがなモード開発していただきたいです。
なぜ紙ではなくICTを使うのか?
紙を使う良さもあって、何でもかんでもICT使ってやればいいってものでもないとは思う。
むしろ、紙でもICTでもできることが同じなら、紙でいいと思うくらい。
ただ、ICTを活用することで学習内容が深く身につく場面であれば、どんどん使うべきです。
私がロイロノートを授業で実際に使って、大いに活用できるなと感じた主な点は以下の2つ。
・共有が簡単
コロナ禍、グループ活動やペア活動ができない中で、子どもの取り組んだ課題を画面上で共有できる
→対話やグループ活動が制限された中でも、アクティブラーニング型授業を展開することができた!
・録音(録画)機能
国語の先生が音読のチェックに使っていたところからヒントを得ました。その場で録音、再生がかんたんにできる。もちろん、共有も可能!
→音楽の授業の性質から、一人一人の「音」をノートに残せるというのは大きなメリット。
そしてこれは音楽という科目の中での話かもしれないけど、プリント学習がiPadの操作に代わったことで、活動そのものに集中できる!
詳しくは活用例の中で述べたいと思います。
+αとして、自宅待機となっている児童が家にいながら同じ課題に取り組めるということもありました。
低学年の音楽づくりにロイロノートを使ってみた!
上記をふまえて、私が導入しようと考えたのが、低学年の音楽づくり(リズムづくり)の授業です。
音楽づくりに取り組むと、つくった音楽を再現するために、子ども達は自然と「記録」の必要性を感じてきます。
これまで、音符カードを使ったり、自分でプリントにかいたりしていました。
するとカードの扱いだったり、書くことに意識が向いてしまったりして、本来の「どのようなリズムにしようか」というねらいから逸れてしまうのです。
ここをiPad上での感覚的な操作に替えることで、クリアすることができたと感じています。
さらに、録音機能、共有機能を使うことで、「リズムをつくる・演奏する」の一歩先へ学習を進めることができました。
では実際にどのような授業を行ったのか?課題点は?
以下で紹介したいと思います。
・1年生
1年生に感じてほしいことは「リズムをつくった!」だけでなく、「ほかにどんなリズムができるかな?」「こっちのリズムとどっちがいいかな?」などと、演奏しながら試行錯誤をすること。
それを叶えるために、ロイロをどう活用できるかな、と考えました。
1年生の教科書はまだ音符、休符が出てきません。
○○○・でタン、タン、タン、うん、という感じ。
タンくん(音価を大切にしたいので実は4分音符はタァくんなんだけどその辺はまた別の話なので本記事の中ではタンくん)を、画面上で動かすことで、リズムを作ります。
1年生は初めてで、操作に慣れる活動もどうしても必要で、タンくんを動かす練習のカードとかも作りました。
私が事前に作ったカードを、子ども達に共有します。
すると、子ども達はそれぞれのノート上でカードを操作することができます。
このカードはタンくん(黄色い□)だけがタッチ&ドロップで動かせるようになっています。
左の部屋にいるタンくんを、右の部屋にいるウンくん(青い×)の上にのせます。
操作に慣れたら、今度はリズムづくりのカードを共有。
4拍のウンくんの上にタンくんを重ねることで、リズムを作ります。
4拍の次は8拍。
つくったリズムは『ぶんぶんぶん』の「お池のまわりに 野ばらが咲いたよ」の歌詞に合わせて演奏しました。
リズムが作れたらロイロの中にある提出箱へ送信。
やっぱり書く活動にしちゃうと、1年生って書くことに一生懸命(それが正しい姿だと思う)だし、間違えて消しゴム使おうもんなら一大事。その間に音楽的な感覚が失われてしまうと思うのです。
でも、大切にしたいのは「どんなリズムにするか」「どのように演奏するか」。
やり直せるし、何度でも試せる。
「リズムができたら一度打ってみよう。そしたらまた別のリズムを作ってごらん。」
「いろいろ試す」の後には「決める」「記録に残す」ということも大事だと思うので(ロイロにログインすればどこでも見られるけども)、最終版はプリントに書かせました。
・2年生
2年生は今までタンくんとかウンくんとか言っていた□や×の記号が、4分音符、4分休符、8分音符、8分休符、2分音符、、と音楽記号の学習になります。
4拍分の音符を見てリズム読み、といった練習もたくさんしました。(ここは一斉指導)
それぞれの音符の長さを学習したところで、リズムづくりです。
教育芸術社の教科書でいうと「おまつりの音楽」という単元になります。
2拍のリズムが何種類か用意されていて、選択し、並び替え、8拍分のリズムを作るというものです。
さらにその中では同じ2拍をくり返し使用する、というルールが設けられています。「くり返し(反復)」の学習です。
以前同様の単元を取り上げた際は2拍のリズムカードを何種類か用意し、セットにして一人一人に配っていました。使わないカードはバラバラになるし、授業後には数枚落ちてる…誰のだよ…。
それが全部画面上でできるのはとっても楽!
ロイロではリズムカードは「資料箱」というフォルダに予め保存しておきました。そこからダウンロードして使います。何度でもダウンロードできるし、要らなければ簡単に削除できる。
できあがったリズムを見てみると、
A-B-C-Aとくり返す子もいれば、A-B-B-Aとくり返す子もいる。
提出してもらえば簡単に子ども達と共有できるから(私が電子黒板に大きく映すこともできるし、一人一人の画面にある子のリズムを配信することもできる)、みんなで一緒にリズムについて考えることができます。
反復の種類についても学びました。
A-B-C-Aと離れたところでくり返すのか、
A-A-B-Cとすぐくり返すのか。
A-B-B-A 「これははなれてくり返しも、つなげてくり返しも使われてる!」
子ども達は新しいリズムを作りたくなります。
また、2年生は自分で作ったリズムを演奏、それを録音して提出してもらうこともしました。
録音することで、リズムが正しく演奏できているか、あとでチェックすることができました。40人、1人ずつテストしてたら1時間終わっちゃうからね…
子ども達も自分のリズムを聞き直して、ふり返りができました。
録り直しもかんたん。
とりあえずつくって終わる子、何度も録り直す子、作り直す子。それぞれの取り組み方も見えました。
まとめ
つらつらと述べてしまいましたが、ロイロノートをこんな風に使ってみたよ、という紹介と感想でした。
ICTを利用することは、紙で取り組むよりも、書くことに一生懸命にならず、活動そのものに集中できる、プラスの活動ができる、ということを実現できる場面であれば、効果的であると考えます。
・アナログと変わらない点
正直、感じたこと、考えたことを書く→みんなと共有して発表、程度のことであれば、端末を用意したりログインしたりという手間を考えたら、アナログ(プリントやノート)で十分だと思いました。
教員がiPadなどで子どもの書いたものを撮影して、前に投影するとかできれば全体共有は簡単にできるから。
・ウィークポイント1「保存場所」
大人でもあるあるかも知れませんが、「前回作ったの、どこに保存したっけ…」っていうことは少なくなかったです。
ノートやプリントだったらパラパラ…とめくればすぐ振り返ることができるけど、データだと1個ずつファイルを開いていかないといけない。
ロイロノートではファイルにあたる「ノート」の保存する名前はデフォルトが日付になっています。「○月○日のノート」のように。
「前に作ったリズムがありません!」「◯月◯日のノート、無い?」というやりとりもしばしば…
高学年になれば、見出しを単元名に変更するとか、各々工夫できるようになるかも知れません。
・ウィークポイント2「通信」
これはうちの場合だけど、音楽室に1つのWi-Fiスポットしかなくて、そこに一気に40台アクセスすると弾かれちゃう子が出てきました。一度弾かれるとなかなか入れなくなったり。
10人ずつとか、少し時間差をつけることでなんとか全員入れるけれども、端末のバージョンによっては画像の解像度が下がってしまうことも。全員ログインさえできれば、その後の作業はわりとスムーズにできました。
これは普通教室では余り起こらなかった事例のようなので、音楽室の通信環境が特殊なのかも知れない…。
万が一ログインできなかった子のために、同じ画面をプリントにしたものも準備しておき、リズムは頑張って手書きしてもらいました。プリント渡したあとで「やっぱりログインできました!」みたいなこともあったけど。
・今後の展望
やはり「音声」がデータとして残せる点。音楽科としては活用の幅が広がりそうで、楽しみに感じています。
映像と音声の組み合わせとか、クリエイティブな活動に活用していきたいです。
あとは音声の配信とか、とても簡単にできてしまうので、併せて子ども達には著作権の話など、情報リテラシー教育は必須。
2020年4月からの休校で配信授業が全国で行われた際も、音楽科の教材の著作権について、各教科書会社のホームページに音源の取り扱いや注意事項が掲載されていました。
今後の教育の形のあり方に合わせて柔軟に対応してほしいですが、何より取り扱う教員が細心の注意を払う必要があるでしょう。
子ども達の学びの深まりの可能性を秘めたICT活用、これからも模索していきたいと思います!
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