NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』も好評ですね!
まさに源平合戦のクライマックスがドラマで展開されているこの時期に、
「能」の中で最も大きな流儀、観世流の中の一つの家、梅若会による『謡と仕舞による 源平の盛衰』企画公演があると知り、
企画立案されたシテ方観世流能楽師、梅若紀彰先生に急遽インタビューをさせていただきました。
謡と仕舞についての詳細はこちら
謡に囃子や能面、能装束をつけた所作を加えると演劇の「能」になります。
能の所作を学ぶ「仕舞」は舞台上で紋付・袴姿で舞われます。
*能を習う場合には、謡と仕舞の稽古から入るのが一般的です。
インタビュー場所は東中野にある、梅若能楽学院にて行われました。
Q:今回の企画主催である、梅若会についてまずは教えていただけますか?
「鎌倉殿の13人」については、全く考えてなかったんです。
来ていただければね、結構面白いと思うんです。
平家の部だけでも、本当にこんなにたくさんの演目があるということに、改めて曲が並んでいるのを見ると面白いですね。
能の演目の中でも、特に源平の盛衰の平家の演目というのは、やはりかなり目立つ演目ということでしょうか。
<平家の部>の「熊野」から「仏の原」「駒の段」に至るまで平家の栄華を誇っていたときのお話ですよね、そこからまた一ノ谷の合戦から、源平合戦が続いていくわけですが、その中でもその源氏の武将と平家の武将のそれぞれ心の機微であったりだとか、合戦の中でも美しいものを愛でる話だったりとか、木曽義仲のかつての恩人と知らずに殺めてしまい悲痛にくれる話だったりだとか、単に戦の話だけではない、非常にドラマチックな人間模様が折り重なるようにして壇ノ浦に突入していくという….時系列ならではの醍醐味ですね。
この演目のこの配役に関してこの人がいいんじゃないかという形で選ばれたのですね。
「駒の段」の独鼓も興味が湧きます。
それぞれの曲の時間は大体10分とかくらいでしょうか。
この「船中之語」というのは船の中でワキ方が謡う場面だと思いますが、あまりめったに舞台ではやらないと伺いました。
「鞍馬天狗」にしても<源氏の部>の中では、義経がやはり中心的な存在になっていくんですね。
「巴」御前も「鎌倉殿の13人」で話題になりました。
改めて、能楽の中でもこの源平という題材自体がやはり普遍的なテーマであるということですね。
その巴御前のところから「箙」、「八島」と源氏が攻めていく中にもやはり犠牲者が当然出てくるわけで、壇ノ浦で勝った!で終わりではなく、そこからまた今度は義経が追われていく身になるという…。「安宅」が最終演目になるわけですね。
この「安宅」で終わるというのが、源平合戦が済んで、その後の義経の行く末という….まさに盛衰のお話ですよね…
ガラコンサートのように、”名曲”がたくさん観られる
改めて今回のこの企画の見どころというと、
私自身も初めて”能”を見たときの感動が、その空間だったり、時間軸だったり、非常に自分の想像力を試されるというか、想像することによって世界が広がっていくことに対して、ものすごく感動したんですね。
紀彰先生が以前、インタビューで「能は自由である」っていうようなお話をされていました。
やはりその削ぎ落としていくことによる今おっしゃられたこの事細かに何か全て説明するのではなく、想像することの自由さといいますか…。
この間、厳島神社で桃花祭で行われた能を鑑賞していたんですけども、そのときに小学校5年生のお嬢さんと3年生の男の子が一番最初の朝9時からずっと終わりの夕方4時までずっと見てたんですね、びっくりして。
能が好きなんですって。
何かしらきっかけですね。
ちょっと前に元TOKIOの長瀬智也さんが主演のTVドラマ『俺の家の話』はお能の家のお話だったり、人気歌手のAdo(アド)さんが、Adoというお名前は狂言の用語から取ったということが若い人たちにも知られたり、また今月末から映画で室町時代に実在した能楽師をテーマにしたというアニメーション映画『犬王』が公開されたりと、
今は、こう能楽に対して、目に触れる機会もあったり、情報化社会で自分が探そうと思えば探せられるようになってきていますよね。
最後に今後のご予定を教えていただけますか?
先生の今後のビジョン的なことで、何かこういったことを今後、やってみたいというのはございますか。
すごい、そういったコラボレーションもお考えなんですね。
踊りも紀彰先生が考えられたんですか?
面白いですねー。
でも、そういう一つ一つが面白いですね。
この度は、公演直前のお忙しい中、インタビューありがとうございました。
公演もとても楽しみにしています。
公演のお申し込みはこちら →梅若会事務局:電話:03-3363-7748
梅若紀彰先生 今後のご予定(一部)
6月1日 国立能楽堂 定式能「碇潜」
6月30日 国立能楽堂 「土蜘蛛」
12月7日 国立能楽堂「逆矛」
12月18日 梅若能楽学院会館「定家」
年内にYouTubeチャンネルを開設
<番外>
今回、梅若紀彰先生はお忙しい中たくさんお話いただきました。
その中で配信について先生のお考えも伺ったので、記します。
配信について
能の世界というのは、イメージとしては一期一会というところで、今、能楽協会さんもYouTubeを始められましたが、それはちょっと驚きでした。
違法でアップロードされてるものよりも、ちゃんと正式にアップロードされているものであれば、安心して拝見できますし。
今回の企画では時間的な余裕もなく、配信は断念しましたとのことですが、配信については先生はどのようにお考えでしょうか?
全ての芸能の中で能が一番、生と画面通して観るのと違うんじゃないか
梅若紀彰先生に、お話を伺って、能のことを全ての芸能の中で一番だという誇りとともに、どうやったら観てくださる方に、更により良いものを、面白いと思ってくれるものを提供できるのだろうか、ということをいろんなパターンで本気に常に考えておられる方なのだなと思いました。
そこには、ずっと能に真摯に向き合ってこられた先生の強い思いを感じることができました。
5月15日(日)梅若会『謡と仕舞による 源平の盛衰』企画公演 13:00〜
梅若能楽学院会館:中野区東中野2-6-14
全席自由席:3,000円 お申し込み:梅若会事務局:03-3363-7748
インタビュアー:髙安紗やか(NPO法人ミュージックソムリエ協会)