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せつなさを忘れていませんか? 槇原敬之「CALLIN'」

こんにちは。

最近思うのですが、、

私たちは “ときめき” とか “せつなさ” といった感覚を感じにくい世の中で生活しているんじゃないかと。

なにが言いたいのかと言うと、

槇原敬之さんの「CALLIN'」を聴いていると、、

現代に生きる人々が失ってしまった “せつなさ” を思い出して、胸がキュンとなるのです!

というわけで、

何はともあれ、聴いてみてください。

〈 槇原敬之,  CALLIN' 〉

いかがでしたか?

この曲は1991年、まだ平成に入ったばかりの頃の「電話」をテーマにした曲。

時代背景を考えると、この曲の主人公の心情が理解できるのではないでしょうか。

この頃、まだ携帯電話はありません。

パソコンのメールが普及する直前。

つまり、恋人との連絡の手段は、電話で話すしかないのです。

公衆電話から相手の家に電話はできるので、どちらかが家にいれば連絡はつきますが、

お互いが外出していると、もう連絡のしようがありません!

そう思うと、歌詞の次のところの心情が理解できます。

ドアの向こうで呼んでる
ベルにせかされた片足が
くつをはいたままで
部屋にかけ込んだよ 何度も

この時代、携帯電話はありませんでしたが、部屋に固定電話がありました。

ただし、、

相手の番号は表示されないので、誰からかかってきたのか分かりません!

留守番機能はありましたので、留守のときに電話があったとしても、

伝言メッセージを入れてくれれば、誰からか分かるので安心です。

とはいえ、相手が伝言メッセージを入れずに切ってしまったら、もう誰だか分からないのです!

そんなデリケートな状況。

だからこそこの曲の主人公(マッキー?)は、外から家に帰った瞬間、電話が鳴っているのに気づいて、

慌てて、片足くつをはいたまま部屋にかけ込んだのです。

もちろん、友達からの電話の場合もありますし、

どこかの会社からの勧誘電話の可能性もあります。

でも、、

もし大切なあの人からの電話だったとしたら、、

この電話をのがすと、

あの人とつながる機会が永遠に失われてしまうのです。

昼は仕事や学校など、何かと忙しいので、

この頃の恋人は、夜、寝る前にお互いの家から電話をして、その後眠りにつくというのが一般的だったように思います。

私も大学院生の頃、

「今夜、あの人と電話するとき、何を話そうかなぁ、、」

と、そんなことを考えていた初々しい時期もありました。

なぜなら、話すことがないと、あっという間に電話が終わってしまい、

その日は、もうその人とつながることができないからです。

夜に話す電話だけがつながるツール。

そう思うと、次の歌詞の心情も理解できます。

会うといつでも言えない言葉
ラインにたくしてる
“とても好きだよ”

ここにでてくる “ライン” とは、電話線のことだと思います。

固定電話は電話線(コード)でつながっています。

つまり、電話で話している間、「自分」と「あの人」は電話線でつながっているのです。

だからこそ、、

自分の “淡い想い” があの人に届きますように、という願いをライン(電話線)にたくしているのです。

なんてせつないのでしょう。

今なら、、

電話を切った後でも、

「さっきの電話は楽しかったね」

とか、メッセージを送り、

そのまま、たわいのない世間話をメッセージで続けることができます。

24時間相手とつながれるので、とても便利になりましたが、

その一方、“せつなさ” や “ときめき” といった感情がわきにくい時代に、いつのまにかなってしまいました。

槇原敬之さんのこの曲を聴くと、そんなことを強く感じ、胸があつくなるのです。

もちろん、、

便利さにどっぷりつかってしまった私。

もうメールやライン、SNS のない時代には戻れません。

しかし、、

慌てて片足にくつをはいたまま、せつなさを抱きながら部屋にかけ込む、

そんな時代が懐かしくなり、しみじみとします。

というか、、

私たちは大切な何かを失くしてしまったのではないだろうか? とさえ感じます。

というわけで、

平成の後半から令和にかけて、、、

人々が忘れてしまった “せつなさ” がこの曲には込められています。

それでは、最後にもう一度お聴きください。

〈 槇原敬之,  CALLIN' 〉


■ 執筆者 : 松岡 学

高知工科大学  准教授。数学者。音楽ファン。


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