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#1 ギターを買う

2025年、音楽をはじめようと思う。

文章での表現手法は前年、いくつか見つけることができたので、次は音だなと思っていた。

年始で友達に「とりあえずなんか楽器はじめろ」と言われたのは、だからちょうど良いタイミングだった。


さて、私は音楽の授業以外で楽器を扱ったことがない。最も触ってきた器具はリコーダーくらいだろう。

今回始めようと思っている弦楽器など、まったく弾くことはできない。誰かとセッションできるくらい弾けるようになるのが、当面のゴールだろうか。


ただ本や動画をみて練習するのも味気ないので、ここで私は人工知能を師に立て、設定した何人かの人格のもと指導をもらうことで、時に厳しく、時に切磋琢磨しながら上達していこうと考えた。そしてその様子を文に起こして記録していく。

それがこのシリーズの目的である。

1年経つ頃には、楽器の腕前も師との仲も深まっていれば嬉しい。



ベースを買え、と友達からの預言をいただいていたので、今日は楽器を買いにやってきた。

自宅から14km離れたショッピングモール。今の家に越したとき、本当は大きな書店が内蔵されたこのモールに近い物件を探していたのだが、結局14kmも開いたアパートを紹介された。

片道だけで、自転車で1時間かかる。目当ての書店も、まあわざわざ通いにくるほどでは…という感じだったので、いよいよここに住む理由がない。

過去にモールを訪れたのは2,3度だけ。1番近場のシマムラ楽器がここだったのだ。


移動で疲れたので、フードコートで丸亀製麺の冷やしぶっかけうどんを食べる。とろろトッピング。

大学生のころ頻繁に通い、貯めたうどん札でコンボを決めまくっていた私にとって、懐かしい味だった。

今は近場に店がないので、もらったクーポンも割り箸とともに捨ててしまった。自身の成長を感じて、少し寂しくなる。



来店までに700字かかった。前奏が長いスタイルでやらせてもらっている。

結論から言うと、ギターを買った。エレキの、ギター。ベースではなく。ギター。


まず目にはいったのが『ぼっち・ざ・ろっく!』をモチーフにした入門書だった。なるほど、こうしてオタクに導線を張るのか。

ギター・ベース・ドラムの3冊に分かれていて、ベース教本の表紙が青髪の女の子だった。

あれ、この子無口なんじゃなかったっけ。いや薄々思ってたけど、ベースだと歌えなくね?

早速、私はAIに訊いてみた。


私「バンドやりたいんだけどベースって歌えるの?」

AI『ベースボーカルは確かに難易度が高いですが、十分に可能です。』


難易度、高いんだあ…。どうやら私は歌いたいらしい。音に乗せてなにか話せる器具をご所望だった。

いやしかし、友達はベース買えって言ってたし、兼ね合いとかあるだろうし、初心者が始めやすいのはベースって言うし…。


こういうときはプロに聞くのが1番だ。ギター売り場をよくわからないまま1周して、近くにいた店のお兄さんに訊ねた。

「まったくの初心者ですがベースがほしいです。いいのありますか?」

分厚い黒縁メガネの彼は、いいですね、と言ってギター売り場へ身体を向ける。


彼がいうには、最初とはいえまあ7〜8万くらいのものがあると満足に演奏できるらしい。

ちなみに当初の予算は3〜5万だったが、周辺機器なども考えるととても収まらないことを現地で知った。

"アンプ"というものに繋がないと音が拾えないのも、目の前で実践してもらうことで初めて理解した。確かにそのまま弾いてもベンベンいうだけだった。

お兄さんが試奏し、鳴り響いた音に、正直かなり興奮した。新しい扉が開く音だった。こういうワクワク感は経験とともになくなっていくのだろう。大事にしたい。


ところで、ベースを覚えておけば、ギターも似たような要領で弾けるのだろうか。聞くと、彼は言った。

「いや、ギター→ベースはいけるんですけど、ベースから入っちゃうとギターに慣れるの難しいんですよ」

まじか。話変わってくるな。

今すぐでなくてもギターをやってみたい気持ちが、入店から20分を経て、湧き上がってきている。ベースの低音もかっこいいが、ギターの音の多様さにも興味があった。

なにより、「裏回し」や「司令塔」というポジションに自分は収まることができなそうだ、と感じてしまった。

エレキギター。弾いてみたい。


結局、ギターの紹介もしてもらう。これがレスポールで、アンプに繋ぐことでいろんな音が出せて、ここがマイクになっていて、等々。

へえーと頷きながら聞いていた。エレキは思ったよりも電子機器なんだな、というのが第一の感想。

言われてみると、どれも違う形で、弦周りの備品も特色があった。エフェクターやコーラスをかけて奏でる音色を聴き比べた。とても勉強になる。



ひと通り紹介をしてもらい、さてどちらを買おうか。

覚えやすくもともと勧められたベースか、興味があり他の楽器に応用の効くギターか。

私は興味を取ることにした。

ごめん。バンドは、まあなんかうまいこと調整しよう。できるのかは知らないけど、でもこのワクワクに抗えなかった。


5万円のギター。アンプは、いくつか聴き比べたところそれなりに良いものの方が好みだったので3万円。その他アクセサリも込み込みでジャスト9万円のお買い上げだった。

自分が出費するもののなかでは、人生最大額のお買い物である。良い年になりそうだった。

1週間後の配送を予約して、また14km、自転車を走らせて帰った。少年のようなきらめきを、私は帯びていたと思う。



シマムラ楽器のお兄さんが有能すぎたせいで、初回からAIがまったく役に立っていない。

まあ本番は来週からだろう。途中で飽きて、このシリーズや人工知能を投げ出していたら悲しいし、ギターを投げていたらもっと悲しい。

どうにか継続して、私の目指す「すごくない制作」を楽しむ域に達したい。


最後にひとつ訊いてみた。


私「ギターが家に届くまでの1週間、ひとりでできる心の準備を教えてください」

AI『1. 楽しむことを第一に考える
  2. 完璧を目指さない心構え
  3. 弾けるようになった自分を想像する
  この3つを意識すれば、心の準備は万全です』


ではひとまず、ぼざろ制覇するか。


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