音楽とコーヒーの価値を擦り合わせる②
新年早々、少し過激な内容で始まったこのシリーズ
走り出してしまったこの暴走機関車はもう止まらない。
最後まで走り抜けようと思うので
どうか途中下車はご遠慮願いたい。
前回は音楽とコーヒーがそれぞれの業界において
価値が異なる、と言うことを説明させて頂いた。
まぁよく考えると当たり前の事なのだが。
どちらかというと金銭的な価値や
ビジネスにおける価値の違いを中心に書いたが
今回はそれぞれが持つ嗜好としての価値について
書いていきたいと思う。
目指したのは優先順位の低い音楽
常々私が音楽家に対して疑問を感じていることがある。
「音楽の力を過信しているのでないか?」と。
特に音楽に従事する人間がこういう事を言い出すのは
どうにもこうにも鳥肌が立つ。
別にこれは私が天邪鬼だから、とか
逆張りのつもりで言ってるとかではない。
本来生きていく上で必要な「衣食住」の外にある音楽。
言ってしまえば音楽が無くなっても人は生きていける。
例えば音楽で戦争は止められるだろうか?
答えはNOだ。絶対にNOだ。
しかし戦争を止める「きっかけ」になりうるか?
そう尋ねられたら答えはYESになる。
つまりその程度のものだ、という事を自覚するのが
我々音楽家の第一歩なんじゃないだろうか、と思う。
その程度のものに人生を捧げるからこそ
音楽は美しいと言えるのではないだろうか?
そしてこの思いはコーヒーを好きになった事で
ある試みとして私の中に一つの考えを湧き上がらせた。
前回の記事でも書いた飲食店におけるBGM 。
「バックグラウンドミュージック」に対して
とことん本気で取り組んでみたらどうなるか?
「コーヒー屋さんで生演奏をしたい」
ぱっと聞き珍しくもないこの取り組みが
世の中に存在しているソレとは一線を画すものだ
と言う事を今回のnoteでお伝えしたい。
このプロジェクトに
「Low-Priority Music」と言う名前をつけた。
まさにそのまま「優先順位の低い音楽」と言う意味だ。
コーヒーを楽しむ、と言う時間において
味、香り、人、場所に対して音楽がそれを上回らない。
「空間」を作り上げる要素の一つでありたい。
それが今、一番やりたい事。
ミュージシャンとしてステージに立ち演奏する以上は
誰しもが皆自分に注目してもらいたいはずだ。
我々は表現したくてたまらない!と言う人種だ。
それを否定するつもりは一切ない。
そういう音楽はそういう音楽でちゃんと
需要と供給が成り立っているし
もちろん私もそういう音楽を創り上げることも
ミュージシャンとして続けていく。
しかし、コーヒー屋さんでの演奏においては
共に嗜好として同じ空間を創り上げたいのだ。
試験的に行ったLow-Priority Music
この取り組みに真っ先に協力してくれたのは
日本を代表するトロンボーン奏者であり盟友の中川英二郎氏だった。
そう、理想的な「売れてて生活に困っていない素晴らしい音楽家」だ。
加えて自他ともに認める大のコーヒー好きである。完璧だ。
そして私が10代の頃からお世話になっているお店
お茶の水NARUの成田さんが試験の場として
お店を提供して下さった。
このLow-Priority Musicにおいて大事なことは
・必要以上に音量を出さない(会話の邪魔にならない)
・曲紹介などのMCをしない
つまりステージに注目「させない」と言うこと。
「させない」と言うのがポイントだ。
つまり注目したかったらどうぞしてくださいね
的なニュアンスでもある。
会話をしていても、本を読んでいても
PCで仕事をしていてもいい。
お店側だってミルで音を立てようが、
スチームミルクを作ろうが構わない。
音楽に関してもそう、演奏してもいいし演奏しなくてもいい。
我々はこの空間においてコーヒーを通じて繋がっているのだ。
そしてこれらを実現させる上で意外(?)と重要なのが
技術としての音楽力なのだ。
少しマニアックな話になるが皆さんお好きでしょ?
実は小さな音量で演奏する、と言うこと自体が
かなりの技術を必要とする。
特にトロンボーンやトランペットといった管楽器は
小さい音量で音色、リズムをコントロールするのは
相当難しい。
そして音量を抑えると言うことは
抑揚もつけにくくなると言うことだ。
数値的に100の音量を出していい場合
10から50、80、100と言う音量変化は
容易にできるだろう。
誤解を恐れず言うとある程度大雑把なコントロールで
抑揚や緩急をつけることができる。
しかし出せる音量が30まで、と
制限されていたらどうだろう。
今まで容易に大雑把に出来ていた抑揚や緩急を
例えば、1〜5の間で表現しなければならなくなる。
つまり1単位でのコントロールを必要とするのだ。
もっと簡単に言うと
1週間の食費を10000円で過ごしてたのに
来週から3000円で過ごさなければならないって事。
どうだろう?急に難しくなるだろう?
この厳しい状況下で演奏内容も
ハイクオリティでなければならない。
つまりたとえコーヒー愛があっても
実力があるミュージシャンでなければ
このプロジェクトは頓挫してしまうのである。
中川氏は演奏後、目を輝かせながら
「竜さん!面白かった!またやりましょう!」
と言ってくれた。
念の為録音もしておいたので
彼の所属事務所KAJIMOTOが
どんなクレームを入れてこようが
私は断固無視し続ける。
とはいえ山積みな課題の数々
ここまで理想を語り、試験的な試みも重ねてきたが
それでも解決しなければならない課題は山積みである。
まず第一に大切なのは保ち続けなければならない
お互いのリスペクトである。これはどう言うことか。
コーヒー店にとっては素晴らしいミュージシャンが
採算度外視で演奏をしてくれる。
ミュージシャンにとっては大好きなコーヒー屋さんで
演奏できる幸せを手にいられる。
ぱっと聞きwinwinにも見えるが
少しでも互いのリスペクトが失われた瞬間に
「もう少しギャランティ下げられないかな?」
「もう少しギャランティ上げられないかな?」
なんて事にもなりかねない。
お客さんにとってもそうだ。
いわゆるMusic Chargeを取ろうとした時に
それを高い!と思う人も当然いるだろう。
私自身、できる限りこのMusic Chargeを
皆さんから取りたくはないのだが
例えばそれを無料にした際に
「こんな素晴らしい空間(演奏)が無料なんて!」
と思い続けてくれるならありがたいが
どうしたってそれが当たり前になっていくのが人間。
無料になるのが当たり前になる、と言うのは
音楽の、音楽家の価値が下がると言う事だ。
これだけは絶対に避けなければならない。
我々の価値、ひいてはこのプロジェクトの
価値を高めていくためにも
様々なアプローチや展開が必要となってくる。
instagramを中心としたSNSで
この空間、このプロジェクトが
「なんかよくわかんないけどめっちゃオシャレじゃね?」
と言う広がりを見せて行かなければならない。
その為にはコーヒー業界と音楽家が手と手を取り合い
見せ方を熟慮し、写真、動画などを作り上げていく事がマストだ。
この映像での拡散こそ
現代に則った必要不可欠な重要課題だ。
そう、つまりここで第3の仲間
映像クリエーターの参戦も必要になる。
そしてそもそも大前提として
コーヒー屋さんが我々音楽家に対して
価値を見出してもらうための通常的な音楽活動
いわば「High-Priority Music」の活動も
怠ってはならない。
実際この活動の方が我々はめちゃくちゃ楽なわけだが
そこに甘んじていては一生このプロジェクトを成功させられないだろう。
この「Low-Priority Music」プロジェクトに
興味を持ってくださるコーヒー関係者の皆様。
そして我こそはというミュージシャンはいつでも連絡をしてきてほしい。
私自身、これは簡単に形に出来るものではない事は
充分に自覚している。
しかし私にしか出来ない事であることも自覚している。
これは驕り高ぶりの類ではなく
ひとつの使命として取り組んでいる。
ていうかやっぱり難しい方がやり甲斐あるじゃんね?
何度も言うとおりこれは私一人の力では決して
成し遂げることは叶わない。
もちろんコーヒーも音楽も飲んで下さる方、聴いて下さる方がいてこそだ。
様々な人たちのお力添えが必要となる一大プロジェクトなのだ。
と言うわけで皆さん、どうか力を貸してほしい。
まずはこのnoteにスキ!を押して
フォローは当然してほしい。
そしてとにかく色んな人にこの思いを届けてほしい。
いつかこの記事を読んでいるあなたと
同じ空間を過ごせるその日を夢見ている。
最後まで読んで下さってありがとうございました。