音楽療法士とセルフケア Part1
執筆者:細江弥生
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1. セルフケアは泡風呂に入れば良いというものではない
今回から、セルフケアに関する “quote=引用”やイメージと共に、音楽療法士としてセルフケアを行う大切さと私の経験をシェアしたいと思います。対人援助職従事者にとって、セルフケアは「エッセンシャル = 必要不可欠」です。
クライエントさんのための臨床をしっかり行うために、自分自身が健康に長くこの仕事を続けていくために、とても重要です。私はここ数年、その重要性をより実感するようになり、実践を試みています。
しかし、「セルフケアが大事なのは分かるけれど、今一つつかめない・実際どうしたら良いのかは分からない」と思う音楽療法士も多いようなので、その大切さや捉え方についてお伝えしたいという気持ちでこのブログを書くことにしました。
「セルフケア」という言葉は、自分をケアする用語として一般に知られていますが、少し誤解されている部分もあるようです。
「セルフケア」と称して、普段より少し贅沢をしてみたり、マッサージを受けたり、ヨガをしてみたり、泡風呂に入ったり、自己分析をしてみたり、というイメージを、インターネット上でよく見かけるようになりました。何か一時的に気分が良くなるような行為はストレス解消として無駄ではありませんが、それはセルフケアの本質ではありません。
今回ご紹介するquote&イメージは、「Self-care is not all about bubble baths = セルフケアとは泡風呂に入れば良いというものではない」というものです。
セルフケアというと、「何か特別なことをすることによって気分が良くなる」というイメージがあるかもしれません。
もちろん、気分が良くなる事をすることに問題ないのですが、本質的なセルフケアではしっかりと全体をアセスメントし、泡風呂に入ることだけでは解決されない自分の課題に無理なく継続的に取り組む過程が大切になってきます。
何か特別な事をするわけではないので、セルフケアの本質を知る事さえできれば、その日からすぐに実行する事も可能です。
音楽療法士として、バランス良い状態で日々の臨床に臨めるよう、より自信を持って快適に仕事とプライペート時間を過ごせるよう、共にセルフケアを習慣化していきませんか?
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2. セラピストにとって一番大事な楽器(道具)は・・・?
セルフケアの重要性を感じさせてくれるquote=引用として、グループ・サイコセラピーで有名な精神科医、アーヴィン・ヤーロム博士の言葉をよく思い出します。
「therapist’s most valuable instrument … the therapist’s own self. セラピストにとって一番大事な楽器(道具は?)…セラピスト自身である。」
音楽療法士にとって、音楽やそれを奏でる楽器は大事な道具です。しかし、その前に自分自身という楽器が整っていなければ、効果的なセッションはできません。そして、自分という楽器を整えてくれる行為こそがセルフケアになります。
私がセルフケアを初めて体験したのは、大学院時代にカウンセリングのクラスを履修した時です。大学では「Holistic Health」という、健康を包括的に考える学部でカウンセリングの授業を履修することが可能でした。この授業では、様々なサイコセラピーの技法を学ぶと同時に、まずは自分の健康を考えようという課題もありました。
そして、実践訓練として自分自身の健康を包括的にアセスメントして、改善するプランをたて、実行するという体験をしました。
それは自分自身を知る新たな発見という楽しい過程であったと同時に、こんなにも何かに継続的に取り組み、改善を試みることは大変なことなのか、と実感した体験でした。人間が変わるには大きなエネルギーを必要とし、決して楽しいばかりではない。
また、セラピスト自身も人間であり、脆い存在であり、クライエント同様に日々のケアと自分自身への思いやりが重要であるということを学んだ貴重な体験でした。セルフケアを実践することはクライエント体験にもなります。
決して、何か卓越したようなスーパーセラピストになることが「セルフケア」を行う目的ではありません。
セラピストも一人間であるということを実感し、クライエントと同じ目線で自分という「楽器」を見つめ直せる機会にもなると思います。
このカウンセリングのクラスは、セルフケアを行うきっかけにはなりましたし、時々思い出しては実行していましたが、この時はセルフケアの鍵である「日常的に行うものである」という認識を欠いていました。
次回、この点について書いてみたいと思います。
3. セルフケアとは、定期的にそこから逃げる必要のない日常生活を築くことだ
セルフケアの重要性を理解していても、日常的に実践している方はまだまだ少ないかもしれません。その原因の一つには、「セルフケア」というものが、何か特別なことで非日常体験をするイメージがあるからかもしれません。今回のquoteは日常の大切さを思い出してくれるものです。
皆さんも、忙しい日や心に余裕がない日が続くと「ああ、もう全て投げ出したい」、「これさえなければもっと余裕があるはずなのに」と愚痴りたくなる事はありませんか?
私たちセラピストも一人間ですから、日常生活では色々な難しいこと事を体験します。
「セラピストだから日常生活で何があっても仕事には影響させない」と、強い決意を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、「自分は大丈夫」という思い込みが実は大変危険で、知らず知らずのうちに日々のストレスや悩み事が仕事に影響を与えてしまっているかもしれません。
また、仕事のストレスと日常のストレスを混ぜ合わせて問題をより複雑にしてしまっていたり、どこから手をつけて良いのかわからなくなりただ時間だけが過ぎてしまう、という事があるかもしれません。
日常生活には、自分を映し出す行動が散りばめられています。「くだらないかも」と思うような小さな目標でも、そこから自分自身が浮かび上がってくるのですから不思議です。
私自身もセルフケア講座を通して長期的に実践を行っていますが、私の個人目標は、皆さんがびっくりされるくらいシンプルで簡単な目標です。
しかし、自分の凝り固まった考え方や行動に変化を与える事はそう簡単なことではないため、それくらいシンプルである必要があります。
そのような小さな目標でも、少しでも変化が見られたときの達成感や変化が循環し始めた時に起こる、「変化の連鎖」のようなものを体験できると、セルフケアの効果を実感することができます。
変化や成果の大きさはあまり関係ありません。どんなに小さな変化でも、その変化を起こす過程での気づきがセラピストとして様々な困難に遭遇した時の対処能力や判断力を向上させてくれます。
皆さんも、是非一緒に日常生活の中でできるセルフケアを実践しませんか?
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