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バッハを聴く 聖トーマス教会オルガニスト ヨハネス・ラング 真夏のバッハⅨ

毎年、ミューザ川崎シンフォニーホールではサマーフェスタが開催されています。
今年のフェスタの一つ「真夏のバッハ」は聖トーマス教会オルガニスト ヨハネス・ラング氏のオルガンリサイタルでした。

毎年衣装が変わる4人組のポスター

今回のプログラムは「変容するクラヴィーア練習曲集(ユーブング)」と題されています。
1739年に出版されたバッハの「クラヴィーア練習曲集」第3部を中心に、ドイツの他の作曲家のオルガン曲を盛り込んだプログラムでした。


ヨハネス・ラングってどんな人?

2012年のライプツィヒ・バッハ国際コンクールの覇者で、J.S.バッハがカントール(音楽監督)を務めた聖トーマス教会のオルガニストに弱冠32歳で就任した、今最も注目を浴びるオルガニストです。子供の頃、教会の鐘を鳴らす手伝いをしていて、そこでオルガンが目に留まり、その虜になったのだそうです。また曽祖父のギュンター・ラミン氏(1898〜1956)も聖トーマス教会のオルガニストとカントール(音楽監督)を務めた方だとか。聖トーマス教会にご縁のある方ですね。

聖トーマス教会オルガニストのお仕事とは?

聖トーマス教会は、J.S.バッハが1723年から1750年亡くなるまでカントールとして務めたライプツィヒにある教会です。
この教会のオルガニストは、1528年から続くドイツの教会音楽界の中で最も伝統あるポストの一つ。
1週間の中で特に重要なのは、金曜の夕方と土曜の午後にトマーナコア(聖トーマス教会合唱団)、ゲヴァントハウス管弦楽団と共演するモテット(宗教声楽曲)、そして日曜の礼拝です。教会の暦と密接に関連した仕事なので、当然ながらクリスマスや復活祭の時期は大忙しだそうです。
バッハ自身がカントールを務めたこの場所で、バッハの遺産を維持し、発展させるという責務はすごいですね。
こちらは、ラングさんのメッセージです。


プレリュードとフーガ変ホ長調「聖アン」BWV552

この曲は3という数字が重要な意味を持っています。
三位一体との関連からどちらも3つの主題があり、変ホ長調はフラット3つの調。
そして、この曲に用いられた主題の最初の4つの音は、譜面上に十字架を現していると言われています。

このプレリュードの冒頭は、天から無限の光が降り注いでくるかのようなど迫力。
付点のついた軽快なリズムが推進力となって進んでいきます。
とても喜びに満ちていて優美でした。
生まれてきたことを祝福してもらっていると思える、涙が出そうなくらい素晴らしい曲だと思います。
後半のフーガはおおらかでとても安らぎを感じます。

ちなみに愛称「聖アン」は、聖母マリアの母アンナのことだそうです。


アンコールはヨハネス・ラングさんの即興演奏だったのですが、
これがまたものすごい優しい音色の子守唄のような曲で彼の懐の深さが伝わってきました。

今、聖トーマス教会でオルガニストであるヨハネス・ラングさんが日本に来てくださるなんて、すごい企画です。本当にありがたい演奏会でした。
ますますドイツの教会に行って聴いてみたい!という気持ちが強くなりました。

こうやってみると、オルガンのパイプの大きさがすごいことがよくわかります


<プロフィール>

ヨハネス・ラング パイプオルガン
1989年デュッセルドルフに生まれる。ドイツ・ムジークレーベン財団およびドイツ・フォルクス学術財団などから奨学金を受け、フライブルク音楽大学で教会音楽とオルガンを学び、オルガンを M. シュメディング、即興演奏をK. L. クロイツ、チェンバロをR. ヒルの各氏に師事した。オルガニスト、チェンバロ奏者、ピアニストとして「ドイツ青少年音楽コンクール」の11部門で優勝。その後オルガニストとして、リューベック(2009年)、ベルレー (2009年)、ライプツィヒ(2012年バッハ・コンクール)で優勝。リュブリャナ(2007年)、ヘアフォード(2008 年)、ミュンヘン(2011年 ARD コンクール)で入賞する。現在は、世界各地で演奏活動を行っている。2016年 10月より5年間、ポツダム・サンスーシのフリーデン教会のカントールおよび、ベルリン芸術大学の教会音楽研究所にてオルガン、即興演奏、チェンバロの講師を務めた。審査員、マスタークラス講師、ラジオなど様々な活動を行っている。CDはザンクト・ガレンバッハ財団から『クラヴィーア練習曲集第3巻』や、デビューCD『In the Spirit of Bach』(Rondeau)などをリリース。またカリヨンの専門家としての試験にも合格し、その知名度を高めている。2022年1月6日、聖トーマス教会のオルガニストに就任し、祝祭礼拝が執り行われた。以来、聖トー マス教会の礼拝、モテット、コンサートなどに出演。歴史的資料に基づく通奏低音演奏と即興演奏にも力を入 れている。2022年11月には、その活動に対してマルクグレーフラー芸術賞を授与された。2023年12月20日にライプツィヒ音楽演劇大学の名誉教授に就任、オルガン科で後進の指導にあたっている。

<プログラム>

J.S.バッハ:前奏曲 変ホ長調 BWV552/1
レーガー:『12の小品』から 第7番
J.S.バッハ:すべての世の慰めなるキリストよ BWV670、聖霊なる神よ BWV671
シューマン:バッハの名による6つのフーガ op.60から 第1番
クレープス:いと高きところにいます神にのみ栄光あれ Krebs-WV500
レーガー:バッハの名による幻想曲とフーガ op. 46
J.S.バッハ:これぞ聖なる十戒 BWV678、われらみな唯一なる神を信ず BWV680
シュタイグレーダー:主の祈り(4声)
シューマン:バッハの名による6つのフーガ op. 60から 第2番
J.S.バッハ:われらの主キリスト、ヨルダン川に来り BWV684
ベーム:深き苦しみの淵より、われ汝に呼ばわる
J.S.バッハ:我らの救い主なるイエス・キリスト BWV688
J.S.バッハ:フーガ 変ホ長調 BWV552/2
[アンコール]
ヨハネス・ラングによる即興演奏

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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楽しんでいただけたら幸いです。


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