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バッハを聴く ジャン=ギアン・ケラスのチェロ
ジャン=ギアン・ケラスのチェロ・リサイタルを聴きに神奈川県立音楽堂に行ってきました。タイトルは、
「世界的チェリストが無伴奏で登場、歴史あるホールに広がる、バッハの宇宙」
です。J.S.バッハの不朽の名作、無伴奏チェロ組曲から4曲がピックアップされました。
第1番 ト長調 BWV1007
第1曲目の気取らないアプローチは、スムーズに音響空間の中に誘い入れてくれました。そこはあたかも無重力空間であるかのような浮遊する感じ。別の言い方をするならば、椅子ごとふわっと持ち上がる感じです。実は、同様の感覚はイザベル・ファウストのリサイタルの時にも感じました。言葉で説明するのは難しいのですが、一言で言えば「バッハの宇宙へ没入した」ということでしょうか。再びその体験ができたことに驚きつつ、それはすぐに喜びとなり、楽器は気持ちよく歌い、音はサラサラと宇宙を漂い、そして、やがてどんどんと深い深い広大な空間が、自らの内面にひろがっていくのです。
ちなみに、これもちょっと驚いたのですが、タワーレコードのCD紹介にも、私が感じた「独特の浮遊感」と似たようなことが書かれていました。科学的にはどういう現象なのか、非常に興味があります。
….どこまでも自然な流れで、音楽やパッセージ自身がもつ方向性や力学にまったく逆らうことはなく、ここちよい重力の上下運動のようなものも感じさせます。同時に、ふとしたパッセージには無重力的な浮遊感もあり、聴き手はケラスの放つ音楽宇宙に包み込まれるようです。驚異的な技術でどんな難所もやすやすと弾いているのは相変わらずなのはいうまでもありません….(キングインターナショナル)
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今回の使用楽器は、1706年頃製作のストラディヴァリウス "Kaiser”(カナダ Canimex Inc.より貸与)ということですが、11月23日の神戸での演奏で初めてのお披露目だったそうです。テクニック抜群なのはいうまでもありませんが、それぞれの曲に合わせた音色作りについて、全く妥協していないなと感じました。あっという間の2時間でした。
アンコールは
バッハ: 無伴奏チェロ組曲第4番 プレリュード
デュティユー : ザッハーの名による3つのストロフ より第1楽章
デュティユーは、映画の中の効果音のようで、このような曲を聴くのは初めてでした。間近で見たテクニックは凄かったです。現代音楽もお得意のようです。
夏に同じバッハの曲を鬼才パオロ・パンドルフォのヴィオラ・ダ・ガンバで聴きました。ヴィオラ・ダ・ガンバのとてもダンサンブルな音楽は、私にとって新しいバッハの発見でした。
そして、今回のチェロの心に染み入るような響きによって、まさに『バッハの宇宙』を、より深く体験することができました。
ジャン=ギアン・ケラス氏は、初めて日本でリサイタルをしたのは2001年とのこと。私は2019年にフルーティストのエマニュエル・パユとピアノのエリック・ル・サージュ、チェロのジャン=ギアン・ケラスの3人によるコンサートで、既に彼のことは知っていたのですが、ソロリサイタルは今回が初めてでした。毎年といっていいほど日本での演奏活動も多くなっているようです。本日のアンコールを聴いて、今度は彼の現代音楽も聴いてみたいなあと思いました。
<プログラム>
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲
第1番 ト長調 BWV1007
第3番 ハ長調 BWV1009
第2番 ニ短調 BWV1008
第6番 ニ長調 BWV1012
<ジャン=ギアン・ケラス プロフィール>
モントリオール生まれ。リヨン国立高等音楽院、フライブルク音楽大学、ジュリアード音楽院でチェロを学ぶ。
1990年より2001年までアンサンブル・アンテルコンタンポランのソロ・チェロ奏者を務め、02年にはグレン・グールド賞を受賞したブーレーズの選考により、傑出して有望な若手芸術家に対して贈られるグレン・グールド・プロジェ賞を受賞。
レパートリーはバロックから現代まで多岐にわたり、ウィーン楽友協会、コンセルトヘボウ、ウィグモアホール、カーネギーホール等、欧米の権威あるコンサートホールの多くでリサイタルを行っている。また、フィルハーモニア管、パリ管、チューリッヒ・トーンハレ管、スイス・ロマンド管、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、BBC響、フィラデルフィア管、N響、読響、都響、東響をはじめとするオーケストラ、F.ブリュッヘン、J.ビエロフラーヴェク、L.スラットキン、D.スターン、1.フィッシャー、Y.ネゼニセガン、R.ノリントンを含む指揮者と共演。
これまでに、ドヴォルザーク、エルガー等のチェロ協奏曲、バッハおよびブリテンの無伴奏チェロ組曲、ベートーヴェンおよびシューマンの室内楽作品(ピアノ:A.メルニコフ、ヴァイオリン:1.ファウスト)、A.タロー(ピアノ)とのデュオによるアルバム等、数々のCDをリリース。
ドイツ・フライブルク音楽大学教授。
こちらの CDジャケットの後ろ姿の写真は今までにない発想でカッコイイ!
そういえば、今回のファッション、全身BLACKでしたが、シルエットが面白いなあと思って、帰ってきてから神奈川県立音楽堂のXの写真を見たら、PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKEだと思われます。イザベル・ファウストも同じくISSEY MIYAKEのドレスだったけど、一緒にお仕事しているし、彼らの間で流行っているのかな?軽くてシワにならない素敵なシルエットだから演奏家にとって、弾きやすい衣装かもしれませんね。
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