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[BTS]Serendipityの歌詞のクオリティの高さについて



はじめに

今回はかねてより誰かと共有したくてたまらなかった曲の歌詞について。
BTS「LOVE YOURSELF 承 ’Her'」のイントロでJIMINのソロ、Serendipityという曲の歌詞の深さについて書き連ねていこうと思います。
元々私がバンタンにはまったきっかけは、その「歌詞」の良さに気が付いたことがきっかけです。(沼落ちした今はビジュアルや人柄やパフォーマンス含めてすべて好きで尊敬しています)
そんな私が、これまで自己翻訳や自己解釈を進めていく中で、バンタンの最も美しいと思える曲の一つがこの「Serendipitty」になります。2017年時点ではありますが、ナムさんが「これまでのイントロの中で最もクオリティが高い」とVライブ(現Wiverseライブ)でも言及しています。ソロ曲なのでもしジミンペンやオルペンではない方は見落としがちかもしれませんが、イントロ曲としてのクオリティが抜群に高い曲の一つなので、ぜひ聞いてみていただけると嬉しいです。

余談ですが、アーティスト、それも制作の根幹に携わっているご本人が曲の紹介をしてくれるコンテンツはそうそうありません。ナムさんはこれまでのアルバムのレビューをメンバーの一人として、そして製作者の一人として貴重な意見を共有してくれる大変ありがたい存在です。感謝してもしきれない。behind動画で知るアナザーストーリーなどもあるので、まだ未視聴の方はぜひ見てみてください。


Serendipityとは

まずは曲名のSerendipityの意味について。
辞書の意味は「偶然と”賢明さ”によって、探していたものと異なるものを発見すること」。1754年にイギリスの政治家/小説家であるホレス・ウォルポールが生み出した造語で、語源は『セレンディップの3人の王子たち』というおとぎ話にあると言われています。
サイトによっては、「賢明さ」という部分が省かれている場合も多く見受けられたため、ここではあえて強調しています。

セレンディップと3人の王子たち

原作を読むことはできていないのですが、記事を参照しざっくりとあらすじを紹介します。

-あらすじ-
セレンディップ王国の3人の王子は有能であったが、より一層の成長を促すために王は彼らを外国に旅に出すことにした。3人は旅の行く先々で降りかかってくる難問を、持ち前の才気と勇気でもっ て次々と解決しながら旅を続けた。やがて月日が経ち,いろいろな経験を積んで帰国した 王子たちは,それぞれに自分の国を統治する立場になって活躍する。

旅に出る前には予想もしていなかった数々の困難(課題)が「偶然に」訪れ、その課題を持前の「賢明さ」を駆使して解決していく過程、あるいは解決した結果、「探していたものと異なるものを発見する」、という意味につながるわけです。一つの単語ではありますが、語源を知るだけでその意味に深みが出るような気がしますね。

LOVE YOUR SELFの命題≪テーマ≫

ではなぜ語源について紹介したかというと、このSerendipityという単語の意味そのものが、アルバムのコンセプトを象徴していると言えるほど重要なものだと考えたからです。
BTSにとって、偶然とその賢明さから得られた出会いとはなんなのか。

アイドルとしてデビューして、誰かに知ってもらって、そういう過程はある意味では偶然の積み重ねかと思います。特に後ろ盾の少ない小さな事務所から出発したバンタンは、初めて自分たちを見つけてくれたファン、支えてくれたスタッフチーム、バンタンのための楽曲、すべて初めから決められていたようなものではありませんでした。
もちろん、その出会いがただの「偶然」であれば、バンタンはここまで成長できなかった。きっかけは偶然かもしれないけれど、その偶然を確かに自分の血肉にして徐々にファンダムを大きく成長させていったバンタン、彼らの実力があってこそ、今のバンタンがある。

「Serendipity」という単語は「偶然」という意味をもつけれども、どちらかというと、瞬間のつなぎ合わせによって、導かれるべくして導かれた「必然」という意味に近い響きの言葉だと思います。
そしてそれは、アルバムタイトル曲「DNA」の歌詞にもつながっていきます。

DNA 歌詞 
걱정하지 마 love (心配しないで Love)
이 모든 건 우연이 아니니까(このすべてのことは 偶然じゃないから)
우린 완전 달라 baby (僕らは完全に違うんだ baby)
운명을 찾아낸 둘이니까(運命を見つけ出す 二人だから)

つまり、この曲に込められたテーマ、メッセージは、アイドルとしての活動を通して経験した数々の困難や、人脈、ファン、そしてメンバーとの偶然ともいえる出会いを通じて、ただ「キムナムジュン」「キムソクジン」「ミンユンギ」「チョンホソク」「パクジミン」「キムテヒョン」「チョンジョングク」として生きていては出会えなかった、今のバンタンソニョンダン、BTSとしての自分に出会えたのだというメッセージだと解釈しています。

歌詞の解釈

前置きが長くなりましたが、ようやく歌詞に触れていきます。
完全に自己翻訳なので、謝りがありましたら申し訳ございません。ぜひご指摘いただければと思います。(かなるびはふっておりません。)
赤字は韓国語の発音で韻が踏まれていることを表しています。

まず最初の詞から。先ほどふれたDNAの歌詞ともリンクしていますね。
そして細かい技法ですが、1,3行目と2,4行目の語尾は、韓国語の発音で韻が踏まれています。

僕の感覚と、君の喜びという、目には見えないものによって、世界が昨日とは違って見える。世界が実際に変わったわけではなく、嬉しいときに世界がきらきらと輝くような感覚のことを指しています。

そして続く歌詞は、キム・チュンス氏の「花」という詩がオマージュされています。下記リンクのブログの方が韓国語解説とともに和訳してくださっている部分を一部抜粋します。韓国ではかなり有名な詩のようです。

(訳)
私がその名を呼ぶまでは
それはただの
一つの仕草にすぎなかった。

私がその名を呼んだとき
それは私のところにやって来て
花になった。

私がその名を呼んだように
私のこの色と香りにふさわしい名を
誰か呼んでおくれ。
その人のところに行って私も
その人の花になりたい。

私たちはみな
何かになりたい。
私はあなたに あなたは私に
忘れられない 一つの意味になりたい。

https://ameblo.jp/oulmoon/entry-12330666086.html

この詩をざっくりと咀嚼してみると、
・名前のないものは、なにものにもなれない
・誰かに名を呼ばれて(定義されて)初めて存在することができる
・誰しもが、誰かにとっての「何か」の存在になりたい
・君の「何か」になるために、僕の名を呼んでほしい
といった感じかなと。
そしてこの詩の解釈を歌詞に落とし込んでみます。

君が僕の名を呼んだ時
 ⇒君(ARMY)に自らが何者かであることを定義された瞬間。
  アイドルとしての僕(BTS)の誕生。
僕は君の花として
 ⇒君(ARMY)が呼んだ(表現した)ものとして相応しくあるように
待っていたかのように
僕らは冷え切るまで咲く
 
⇒何かになりたかった"僕ら"。"君"に名前を呼ばれたことではじめて何者かになれた喜びで、懸命に咲き続ける。

つづけます。

マーカー部分は、こちらもDNAの歌詞に同じ表現がある部分になります。
BTSの曲の歌詞の中にたびたび「宇宙」という言葉が出てきます。「宇宙」という言葉について詳細はまたの機会に書き残せればと思いますが、これは現実とはすこし違う場所にある、BTSとARMYの世界のようなものを指していると考えています。

宇宙の摂理とは、先の歌詞にあるように、
誰しもが誰かの「何か」になりたいということ。
君が僕を「僕(BTS)」という存在にして、
僕が君を「君(ARMY)」という存在にいたということ。
どちらも、片方だけが存在するだけでは成り立たない。
だから「君は僕で、僕は君」という表現につながるわけです。

次です。

舞台に上がる彼らは、そのスポットライトの中で、一般人には想像もできないような歓声を浴びる。歌を歌って、ダンスを踊って、人々に夢と笑顔を与えてくれる。けれどそんなときめきと同じくらい、アンチの存在や、結果を残さなければいけないというプレッシャーなど、彼らにしかわからない不安もあるでしょう。

運命というのは、彼らの成長、成功。アイドルとして花道を歩く人生。バンタンとARMYとして歩む運命を、周囲は妬み数々の試練を与えてくる。
その困難や試練はアイドルにとってもファンにとっても不安で恐ろしいものです。

しかしそれでも彼らは歩みを止めなかった。それはメンバーと、ARMYとの絆、愛があるから。そんな彼らのために、世界はより強く完璧なものになった。ティザーPVでは、このタイミングで皆既月食の映像が映ります。バンタンは月、その月を照らす太陽はARMYでしょうか。ふたつの惑星が、ぴたりと重なっている。
その強固な繋がりは決して偶然ではなく、皆既月食のように、予定されていたものだったんだと。

次は私が一番好きな部分です。

赤字は韻を踏んでいる部分ですが、この短い詞に私の解釈では3つの意味が込められています。すごすぎる。順に紹介します。

①音の対比
 1)「곰팡이」「고양이」 韓国語の発音でそれぞれ「KOMPANI」「KOYANI
 2)「준」「온」UN ON
 
3)「천사」「세상」「now」すべて語尾がA(N/W)

②色の対比
 最初の赤字、푸른 곰팡이は韓国語で直訳すると「アオカビ」になります。つまり青色。
 次に삼색 고양이は、「三毛猫」を意味します。삼색を直訳すると、「三色」。こちらも色を表す単語です。

③意味の類似性
 ここで「アオカビ」と「三毛猫」の意味について。もちろん音だけで歌詞に登場したわけではなく、この2つには「奇跡」という意味が含まれています。詳しく見ていきます。

≪アオカビ≫
アオカビとはつまりペニシリンのことを指します。
ペニシリンは20世紀最大の発明といわれる、世界初の抗体で、多くの人の命を救ったもの。その発見は偶然の重なりによってもたらされたため、奇跡の薬も呼ばれます。まさにSerendipityを象徴するものです。

≪三毛猫≫
歌詞では、「僕は」君の三毛猫となっています。ここで重要なのは、「僕」はBTSである彼ら、つまり男性であるということです。
なぜ男性である事実が重要なのか。
三毛猫はオスの場合、遺伝子の関係で約3万分の1の確率でしか生まれない、いわば奇跡的な存在です。諸説はありますが、三毛猫の毛の色はそれぞれ
白・・来福招福
黒・・魔除厄除
茶・・無病息災
を示すと言われており、いずれにしてもポジティブな意味が強いですね。

この短いフレーズにこれだけの意味と音の調和性を盛り込んだ歌詞がもう奇跡的です。考えていて震えました。。上記の技法的、背景的な部分を踏まえて、歌詞の意味を解釈していきます。

君は僕の青カビ(=ペニシリン)
僕を救ってくれた
僕の天使 僕の世界
ARMYは、BTSにとっての特効薬。偶然の出会いによって、彼らを救うことができた存在。天使であり、世界(全肯定ですね、、)

僕は君の三毛猫
君に会いに来た
今僕を愛して 僕に触れて

⇒一方でBTSは、ARMYに会いに来た三毛猫。つまりは我々に福をもたらそうと会いに来てくれた。

アイドルとファンダムができた時から、僕(BTS)が君(ARMY)を愛することも、僕らが成功することも、すべて決まっていたことだった。

マーカー部分は、こちらもDNAの歌詞とリンクしている内容です。
※サビ前の部分です。「宇宙が誕生した日からずっと世紀を超えて僕らは前世も来世も永遠に一緒だよ」と歌っています。

ブリッジの部分です。
直訳すると「僕らになる」という部分ですが、
これはSave Meでナムさんのパートにもある歌詞ですね。
言葉通りに捉えると少し違和感の残るフレーズですが、
僕らになるとはつまり、BTSとARMY、BTSというアイドルになるために欠かせないARMYとBTSは一緒の存在だよという意味と解釈しました。

悩んだのが、「星たちは浮かんでいて」の部分です。
「星」は何かのオマージュなのか、文字通り「星」なのか・・。
いったん文字通りの星として解釈を進めます。

「星」は月とは違い、自らの存在自体で輝くものです。
星はただ月の傍にあり、小さな一つひとつの光で夜空を彩ります。

ティザーのMVからも、この曲の中でBTSは月にたとえられているかと思いますが、そんな月に寄り添う星はARMY達のことでしょうか。太陽になったり星になったりで大忙しですね笑
こじつけのような気もするので解釈が変わったらこの部分はそっと消しておきます。

月と星、BTSとARMYで、共に夜空を彩る光になる。
そんな幻想的で情熱的なメッセージとして自己都合解釈しておきます。

おわりに

解釈に正解はありませんが、BTSの楽曲の解釈を深めるにあたって複雑なのは、彼ら自身のこと、「花様年華」の7人のこと、アイドルとしての彼らのこと、この3つの要素が絡み合っていろんな意味に捉えることができてしまうところだと思います。
異なる3つの要素のストーリーが絶妙に落とし込まれている…「花様年華」以外の2つは彼らの話でもあるので当たり前なのですが。
彼らの人生そのものが何かの小説のようなものですが、曲をしっかり聞いていると、彼らもただ一人の人間で、人並みの感情を抱えていることがよくわかります。これだから沼!
来年の再集結の時に、少しでも幸せな彼らの姿を見れることを心待ちにしています!


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