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ポール・バターフィールド・ブルース・バンド / East-West 1966 (1)

2回に分けてレビューします。

◆概要 
ファースト・アルバムをリリース後からの1年で数多くライブを重ね、バンドの成長と進化が反映された2枚目の作品。

ポール・バターフィールドとマイケル・ブルームフィールドのフロント2トップ体制が土台を維持し、さらに構成メンバー全体に「音の表現力と説得力」が格段に増したので各自ソロ箇所が増えた。録音にも奥行きと左右分離が明確になったのがこの作品の特徴。

全ての曲ではないが、メンバーのソロ演奏を増やし民主的方針になった。
キーボードのマーク・ナフタリンのキーボードのソロも、曲によって重要な役割を負う場面がある。そしてもう一人のギタリストのエルビン・ビショップは、前作と比較してもギターの音に存在感が前に出ている。さらにギター・ソロの箇所も与えられている。ジャケットを見ても「演奏に対する自信」が増した印象だ。

◆ドラマーが交代
ドラマーのサム・レイは病気のためにバンドを去り、黒人のビリー・ダベンポートに交代。従来ウィリー・ディクソン、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフで働いていた。
加えて彼の持つドラムのスイング感は、バンドのジャズの可能性を広げ、テンポも気持ち良く、それが本作品に反映されている。粛々とビートを刻んで演奏の土台を支えている。今回も本物のドラマー、シカゴ・ミュージシャンをメンバーにしている。

流行になっていくアシッド&サイケデリック・ミュージックに対してフリーな「モード演奏」で、従来のシカゴ・ブルースに対しては沢山のステージ演奏によって築き上げた「経験値」と「表現力」を以て本作の回答とした。

◆メンバー
ポール・バターフィールド  ボーカル&ハーモニカ
マイク・ブルームフィールド  ギター
エルヴィン・ビショップ  ギター、「ネヴァー・セイ・ノー」のリード・ボーカル
ジェローム・アーノルド ベース
ビリー・ダベンポート ドラムス
マーク・ナフタリン ピアノ, オルガン

◆曲目リスト
Walkin' Blues
Get Out of My Life, Woman
I Got a Mind to Give Up Living
All These Blues
Work Song
Mary, Mary
Two Trains Running
Never Say No
East-West

◆曲目抜粋感想

Walkin' Blues
イントロから始まるポール・バターフィールドのブルース・ハープも切れ味が格段に増した。腰の据わった安定的タイム感の有る演奏だ。ラスト間際の強烈ブロウがソウルフルに鬼気迫る。

オリジナルのサン・ハウスから直系のスライド・ギターはマイケル・ブルームフィールドが弾いてるが、随分と本家に肉薄している。もう片方のギターがもう一人のギタリスト、エルビン・ビショップで、バッキング音がはっきり聞こえている。録音の奥行きも前年よりも立体的に進化している。

Get Out of My Life, Woman
ドラムのビリー・ダベンポートのスイング感と安定した演奏がこの曲の土台だ。マーク・ナフタリンのピアノは前面に中心に添えられて溌溂と弾いている。エルビン・ビショップのシャープなギターのカッティング1つ取り上げても成長が伺える。バンドの民主化に方針の舵を切っているのが分かる。

I Got a Mind to Give Up Living
イントロのギター・ソロは(マイナー)ペンタトニックだけなところから推測すると、エルビン・ビショップのソロかと思われる。ここでも運指やピッキング、チョーキングの上がり具合など格段の成長が伺える。
ポール・バターフィールドの歌唱は、高揚など変化の無いマイナー・ブルースを歌うことによって却って非凡な表現力をアピールしている。

All These Blues
バッキングのギターに粒立ちがある。それと対峙するポール・バターフィールドのアンプリファイド(アンプを通して歪ました)のハープも簡潔でとても切れ味が良い。コンディションの良さが伺える。ビリー・ダベンポート のスイングしたドラムの存在感も耳に残る。

作品の前半は全体的に成長したバンドのスキルを尊重した民主化の方針に舵を切っているのが分かる。

次項に続く


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