#98 リアナ・フローレス『フラワー・オブ・ザ・ソウル』
リアナ・フローレス『フラワー・オブ・ザ・ソウル』
リアナ・フローレスも20代半ば。インディーズからリリースした曲がバイラル・ヒットとなったこともあって、この『フラワー・オブ・ザ・ソウル』でメジャー・デビューとなった。いわゆるZ世代だけれど、3分以下の曲でイントロなしでいきなり歌い始めるタイプではない。彼女もきっとザ・レモン・ツィッグス同様に伝統的なソングライティングを愛しているひとりだと思う。
UKののどかな田舎町で生まれて、成長する過程で母親の祖国ブラジルのボサノバを聴いて育ったという。その影響が全編で見てとれる。まずは、洒脱かつ先鋭的なアコースティックサウンドだ。とりわけ個人的には『NOW AND THEN』という曲に、大好きなチェリスト、ジャキス・モレレンバウムが参加しているのがうれしい。そして、囁くように歌うヴォーカルと、ポエティカルな歌詞。人生や季節の移ろいをテーマにしたという歌詞は、情景が浮かび、どこか儚さが心地好く感じられる。
リアナは英語で歌っているけれど、ポルトガル語で書かれた歌は、一般的に日本語に訳すと、シンプルにみえても、表現がポエティカルで実に奥深い世界を持っていることが多いけれど、その影響も受けているように思う。だからこそ、聴けば聴くほど味わい深くなってくるんだと…。
こういうアーティストがTikTokなどのSNSから広まるということは、若い世代だって斬新だったり、過激だったりする刺激だけを音楽に求めているわけじゃないと実感できる。世代を超えて親しまれるアーティストである。
服部のり子
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