#62 東亮汰『Piacere~ヴァイオリン小品集』
東亮汰『Piacere~ヴァイオリン小品集』
桐朋学園大学音楽部を首席で卒業したヴァイオリニストのデビュー作。NHKのEテレで放映中のアニメ『青のオーケストラ』の主人公・青野一のヴァイオリン演奏も担当しているという。
私は、クラシックの専門家ではないので、解説のようなことは出来ないけれど、ヴァイオリンの音色に感情が揺り動かされて、理屈抜きに幸せな気持ちになれるので、ぜひ紹介したいと思った。これぞ音楽の力。心からそう思うので、普段クラシックと縁遠い人にこそオススメしたい。
タイトルに「小品集」とあるように、ヴァイオリンの有名な定番曲10曲を演奏している。そのなかには知ったかぶりして「またこの曲か」なんて思ってしまったエルガーの『愛の挨拶』や、映画『ニュー・シネマ・パラダイス』の『愛のテーマ』があるんだけれど、その知っている曲に心が昂るというか、あらためて深く感動させてくれる素晴らしさ。また、クライスラーの『中国の太鼓 作品3』では演奏に合わせて、体が自然に踊る楽しさがあって。
現在23歳の若々しさもあるし、「何を思い、何を込める」とこういう音色が奏でられるの?と聞きたくなってしまう演奏。もちろん高い技術力があるからこその演奏だけれど、技術力だけでは奏でられない音色と、聴き手に伝わる力……。演奏の背景にあるもののひとつは、イタリア語で”歓び”という意味のタイトル『ピアチェーレ』だろう。でも、どうしてこんなにも、と思うことで、ますますその演奏に引き込まれてしまう。
服部のり子