#93 レニー・クラヴィッツ『ブルー・エレクトリック・ナイト』
レニー・クラヴィッツ『ブルー・エレクトリック・ライト』
過去最長の6年のインターヴァルを経て、通算12作目となるニュー・アルバムが届いた。この間に世界を一変するパンデミックがあり、洋楽シーンを見やれば、ロックはすっかりメインストリームの蚊帳の外に追いやられてしまったわけで、さあどう出る、レニー・クラヴィッツ?
結果、レニーが選択したのは正面突破だった。……いや、正面ではないのか、強行突破と言うべきか。この『ブルー・エレクトリック・ライト』は紛れもないロック・アルバムなのであり、僕は1991年の2ndアルバム『ママ・セッド』収録の「オールウェイズ・オン・ザ・ラン」でレニーと出会い、即ハマったことを思い出した。いやはや、30年以上前なのか。
まずは、リード曲「TK421」を聴いてほしい。レニー・クラヴィッツというミュージシャンの本質を突きまくっている、ゴキゲンなファンク・ロック。カッコよすぎ、気持ちよすぎだ。なんてったって、ゴジラの叫び声まで入っているんだぞ。
ただ、ただですよ、このMVについて僕はレニーさんに問いたいのです。なんで下半身に純白のタオルを巻いただけの姿で、歌い踊るのですか? と。しかも、際どくタオルをひらひらさせたりして、アキラ100%ですか? と。
一方で、還暦目前にしての振り切れっぷりが、うれしくもあると言えばある。ビルド・アップした肉体美をこれでもかと見せつけるさまに、好むと好まざるとにかかわらず、ロック・アーティストとしての自負を感じたりも。とにかく、この変わらなさ加減は、ちょっとすご過ぎる。
どっしり重心の低いスロウ・ファンクに、相変わらず旺盛な実験精神を感じさせるテクノ・ポップ、ギター・リフも痛快なパワー・ポップ、逆に流麗なアルペジオが泣けるバラードなど、楽曲の完成度の高さは、まさに折り紙つき。本当にこの人は、何をやっても外さない。待った甲斐ありの力作だ。
それにしても、タオルひらひらは、ちょっとなあ……。
鈴木宏和