エルミーン『Marking My Time』
人柄がにじみ出ているような優しい声。ベイビーフェイスを若くしたような甘さもあって、その魅力といかつく見える写真のギャップに興味を持ったのがエルミーンとの出会いだった。情報は少ないけれど、調べてみると、スーダン出身の両親とUKオックスフォードで育ったという。ロンドンなどの都会に比べて、アフリカ系の子供は少数派の環境のなか、おとなしい性格のエルミーンは、音楽に心の拠りどころを見出したようだ。
そのなかで、どんどん時代を遡ってR&Bを聴き続けたそうだが、その音楽的バックグラウンドは、このEPを聴けばわかる。斬新さを競うようなビートとは一線を画す、ゆったりと音を紡いでいくクラシカルな歌。もちろん彼自身も曲作りをしていて、タイトル曲『Marking My Time』の歌詞もフィロソフィカルでありつつ、聴く人によって時を刻むことへのさまざまな受けとめ方が出来ると思う。ストレートに日本語に訳すと、常緑樹となってしまう
"evergreen”という言葉だって、いろんな意味を見出すことが出来る。彼にとっても深い意味のある歌なのだろう。美しいファルセット・ヴォイスでせつせつと歌う歌に感情が揺さぶられる。好きだなぁ、この感覚…。
これからどんな歌を書いていくのか楽しみだし、普遍性を突きつめられるようなアーティストだと思うので、息の長い活動を期待したい。
服部のり子