#84 ジェイコブ・コリアー『ジェシーVol.4』
ジェイコブ・コリアー『ジェシーVol.4』
4部作の始まりは、偶発だった。あまりにジャンルも多岐にわたる曲がいいっぱい出来たことから、本人曰くこの「逃避行」が始まったそうだ。
宅録で全ての楽器をひとりで弾くことがジェイコブ・コリアーの原点だ。その音楽人生は、人気と評価を得るなかで、世界へと飛び出した。そのツアーで録音を重ねた各国の観客の声、彼は、それを「オーディエンス・クワイア」と呼んでいるけれど、その歌声が最終章の重要なエレメントとなっている。
ステージにもひとりで立つジェイコブのコンサートは、観客参加型で、彼の指示のまま会場全体がクワイアと化すのだ。それをまた観客が歓びとしている。その光景に私も胸打たれたけれど、その世界中の観客の歌声を主軸としつつ、コールドプレイのクリス・マーティンやジョン・メイヤーをはじめとする多彩で豪華なゲストを迎えつつ、ボーダーレスな世界、とりわけ1曲目なので、『100,000 Voices』のヘヴィーメタルのギターには驚かされた。
ジェシーは、2019年にインタビューした時、「作曲したあと、録音した素材をどう編集して音楽にしていくか、その過程が最高の楽しみ」と言っていた。新作に耳を傾けると、その無数の素材がモザイク画のようにちりばめられているのがわかる。アヌーシュカ・シャンタールが奏でるシタールなどの民族楽器、スティーヴィ・ヴァイの速弾きギター、オーケストラの演奏、鳥の鳴き声、水音、カーニバルの歓声などなど。
そこに私が感じるのは世界はつながっているということ。彼もコメントで「音楽は、人々のつながりを生み出し変化をもたらすような~」と語っているが、自作曲中心の作品のなかで、名曲『明日に架ける橋』をジョン・レジェンド、トリー・ケリーと共に演奏している。さらに最後を飾る『World O World』は、祈りが込められた讃美歌。それらから私が受け取ったのはこの世界を思うジェイコブ・コリアーの心。壮大な4部作の完成にまた、Vol.1から聴き直そうと思う。
服部のり子
ジェイコブ・コリアーのコメント
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