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#83 リアム・ギャラガー&ジョン・スクワイア『リアム・ギャラガー&ジョン・スクワイア』

服部さんへ

 ノラ・ジョーンズの新作紹介、ありがとうございます。シャーデーとともに、とても好きな女性ソロ・アーティストです。
 と、今回のノラ、雰囲気が違いますね。僕の中で彼女には、お嬢様的なイメージがずっとあって、個人的にそこが玉に瑕(こんな字だったんですね)だったのですが、それを払拭してくれてうれしいです。
 なるほど、本人いわく“ガレージ”なんですね。猥雑と言ったら大げさかもしれませんが、青山、表参道あたりから野毛、伊勢佐木町あたりまで降りてきてくれたかのようです。さらに大げさか。とにかく、いいですこの作品。
 実は僕、クロディーヌ・ロンジェやフランス・ギャルなどの60年代フレンチ・ポップスが好きなのですが、アートワークやヴィジュアルがそれを想起させてくれるところにも、大変そそられました。
 さて今回のレコメンドは、リアム・ギャラガーとジョン・スクワイアのコラボ・アルバムです。

リアム・ギャラガー&ジョン・スクワイア『リアム・ギャラガー&ジョン・スクワイア』

 個人的にリアム・ギャラガーとクリス・マーティン(コールドプレイ)は、タイプこそ全然違うものの、90年代のイギリスが生んだロック史の宝のようなヴォーカリストだと思っている。だから、共演などにも自然と注目することになるのだけど、ついに来た。
 UKはマンチェスターの兄弟分とでも言うべき、ストーン・ローゼズのジョン・スクワイアとリアム・ギャラガーによる、まさに満を持してのコラボレート。しかも、がっつりのフル・アルバムだから、このご両人、本気も本気なのだろう。
 でもそこで、気負うでも奇をてらうでもなく、ジョンが書いた曲をバンドで演奏し、リアムが自身の解釈で歌うという、極めてナチュラルでシンプルなことをやっているところが、余裕というか粋というか。それが結果的に、美しいメロディ、きらめくギター・サウンド、ワン&オンリーの歌声が三位一体となった、“これぞザ・UKロック”な作品に仕上がっているのだから、言うことなしだ。60'Sフレイヴァーのふりかけ具合がまた、なんとも美味。

 そしてうれしい驚きなのが、こんなオーセンティックなブルースもやってくれちゃっていること。まあちょっと聴いてみてください。

 今だったらグレタ・ヴァン・フリートやウルフマザーあたりがやりそうなアプローチを、ひと世代もふた世代も上のレジェンドがやっているところに、何か熱いものを感じてしまう。こんな曲、オアシスでもストーン・ローゼズでもリアムのソロでも、耳にすることはできないしね。
 やっぱりUKギター・ロックはいいなあと、幸せな気分にさせてもらいました。やはりストーン・ローゼズ信者のノエル・ギャラガーが、関係がアレな弟のこのプロジェクトと作品を、なんと言うのかにも注目したい。
                              鈴木宏和


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