#66 ジョルジャ・スミス『falling or flying』
ジョルジャ・スミス『falling or flying』
ということで、また気持ちも新たに書き始めたいと思う。
最近「UKソウル」に心惹かれていて、そのひとりがジョルジャ・スミスだ。この新作は、彼女の2作目で、2018年のデビュー作はブリットアウォードを受賞するなど、高く評価されていて、「新星」が当時の誉め言葉だった。そんな彼女の魅力、一番は声だ。よくスモーキー・ヴォイスと言われるけれど、私は紗がかかったような声質で、曲にもよるけれど、どことなく憂いが見え隠れするところに惹かれる。
そして、今回はロンドンから拠点を故郷のバーミンガム郊外に戻して、地元の友達がいる「デイムデイム」というプロデューサーチームと組んだ。まだ、無名のチームだけれど、彼らが作るリズムが洒脱でいい。刺激的で主張の強いビートがR&B界に溢れるなか、デイムデイムの場合は、自転車のベルか、ペッパーミルのような硬い音が場面展開を生み出し、リズムが音楽を支配することなく、ジョルジャの歌と踊るような絡むのが印象的だ。
彼女自身の言葉によると、23歳から25歳までの成長と経験をもとに曲作りをしたそうだが、リアルすぎないというか、f***といった言葉を使うことなく、イマジネーションが膨らみ、この愛はどう解釈すればいいのかな、と考える余白がある歌詞。そのなかで「Greatest Gift」という曲は、自分を肯定する正直な心境を吐露した歌で、それがロンドンを離れた理由のようだ。その歌からも伝わってくるけれど、自分を信じて、気心知れた友人とスタジオで音楽を作る歓びを取り戻した新作。『GO GO GO』のようなアコギがザクザク刻まれるロック調の曲もあるし、多彩さも引き出されていると思う。
服部のり子