#128 スヌープ・ドッグ&ドクター・ドレー『ミッショナリー』
スヌープ・ドッグ&ドクター・ドレー『ミッショナリー』
30年ぶりの共演作だという。ビルボード誌の記事によると、ドレーは「ただ2人で音楽を作るのを楽しんだ」と語っている。それが伝わってくるし、あのハーフタイムショウを思い起こさせるのがいい。それが選んだ理由のひとつ。さらにサンプリングのネタが多彩だし、ゲストもいい。
たとえば、1曲目の『Fore Play』で、ふと聴き覚えのあるフレーズが流れてきて、チェックしてみると、スタイリスティックスの72年のヒット曲『愛の世界』がサンプリングされている。洗練されたトラックのセンスのなかに時間の共有というか、若き日の思い出が蘇ってくる一片を見つけ出せるうれしさ。これが結構ときめくもの。
また、意外性のあるところでは、④『Hard Knocks』にはピンク・フロイドの『Another Brick in the Wall(Part II)』、⑥『Last Dance With Mary Jane』にはトム・ペティの『Mary Jane Last Dance』を、さらに⑨『Another Part Of Me』ではポリスの『孤独のメッセージ』をサンプリングしている。こういうロックも聴いていたのかと、ここでもヒップホップに対する先入観が溶けていく。
さらにゲストで言えば、ハーフタイムショウで共演した50セントがいたり、⑤『Gorgeaous』ではジェネイ・アイコが歌っているんだけれど、まさに彼女の声が華やかでゴージャスというのも発見だった。そして、声と言えば、そもそも威嚇的な鎧をまとったスヌープ・ドッグ。実際に20数年前にLAですれちがった時も、全身にトゲが生えているような他を寄せつけない雰囲気だったので、親近感を抱くことはなかったけれど、ハイトーンの声はいいと思ってきた。ドクター・ドレーの声もそう。魅力的な楽器を恵まれた2人だと思う。
最後にやるなら徹底的に、の精神が垣間見えるのが新作のショートフィルム。基本的にクライム系なので、怖すぎるシーンもありますが、一番に思うのはどんだけ制作費がかかっているのかっ。
服部のり子