![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/140128701/rectangle_large_type_2_6ec767d253ecbd87aefa08e4d5b0f088.jpeg?width=1200)
#91 ベンソン・ブーン『ファイアワークス&ローラーブレーズ』
服部さんへ
ヘイリー・ロレンの新作紹介、ありがとうございます。一聴して歌声に引き寄せられると同時に、お国はどこ!? と思ったら、米アラスカ州の人なんですね。言語感覚はもとより、このふくよかでありながら、凛とした透明感をたたえたヴォーカルは、アラスカ出身であることと無関係ではない気がします。いや、深く関係していると思いたい。そのくらい、心に沁みます。
僕は知らなかったのですが、日本でもジャズ・ファンの間で人気で、「いとしのエリー」をカヴァーしたりもしているそうで。「Sukiyaki」の“You Took Your Love Always From Me”ヴァージョンのほうのムーディなカヴァーや、オープナー(有名なスタンダード曲だったとは……)のボサノバにしてもそうですが、どんなスタイルの楽曲でもオリジナルのように聴こえてくるのは、彼女の歌心、そして声の力ゆえなのではないでしょうか。小さなライヴハウスで、酒でも飲みながら聴きたくなりました。
さて、今週僕が取り上げるのは、「現在もっとも気に入っているロック曲を、ひとつ挙げよ」と言われたら、これ! という大好きな曲を歌っているベンソン・ブーンです。
ベンソン・ブーン『ファイアワークス&ローラーブレーズ』
モーガン・ウォーレンの「ラスト・ナイト」、ザック・ブライアン(feat. ケイシー・マスグレイヴス)の「アイ・リメンバー・エヴリシング」、テディ・スウィムズ「ルーズ・コントロール」、ノア・カーン「スティック・シーズン」など新しい、そして幸福な出会いがあり、ここでも報告してきたが、このところズッパマリ状態なのが米シンガー・ソングライター、ベンソン・ブーンの「ビューティフル・シングス」だ。MVがまた、曲のスケール感、世界観(ラヴ・ソングなんだけど)とマッチしていて、いいのですよ。
なんでも、ふたつの曲を同時進行で作っていた本人が、どちらも完成に漕ぎ着けずに悩んでいた時に、プロデューサーだったか友人だったか失念してしまったが、「くっつけて1曲にしちゃえば?」との助言があって、できた曲なのだとか。感情のジェットコースターとでも呼ぶべき、このドラマ性は、だからこそなのかもしれない。
デビュー・アルバム『ファイアワークス&ローラーブレーズ』も力作揃いで、イマジン・ドラゴンズのダン・レイノルズがバック・アップを買って出ている(助言も彼だったかも)ということに納得しつつ、ベンソン・ブーンのシンガーとしてのポテンシャルの圧倒的な高さを、気持ちよく実感できる仕上がりだ。
個人的には正直なところ、「ビューティフル・シングス」のインパクトがデカすぎて、ほかの曲にあまり意識が向かないので、これからゆっくり聴き込んでいきたい。本人にとっても今後、この曲がひとつの呪縛になってしまうかもしれない。でも、これだけの名曲を作り上げることができたのだから、きっとそこを超えてくれるはず。♬超えて〜いけそこを〜、超えて〜いけそれを〜♬ってやつだ(吉田拓郎「人生を語らず」より)。
鈴木宏和