#89 ヴァンパイア・ウィークエンド『オンリー・ゴッド・ワズ・アバヴ・アス』
ヴァンパイア・ウィークエンド『オンリー・ゴッド・ワズ・アバヴ・アス』
季節性の鬱というものがあるらしい。僕が実際にそうのか、単にそういう性質というか、心の傾向があるということなのかは、よくわからないが、秋冬はどうも気分が沈みがちになってしまう。そして今ぐらいの季節になると、靄が晴れたかのようにスッキリしてくるのだ。
そんな時期に必ず聴きたくなる音楽のひとつが、ヴァンパイア・ウィークエンド。僕にはとてもナイスなタイミングで、5年ぶりとなるニュー・アルバムが届いた。
まずは「Ice Cream Piano」で、一気にテンションがアップ。このバンドの魅力を濃縮還元してアップデートしたような、ワクワク感満載のオープナーで、久々の再会の祝福に持ってこいだ。
音楽エリート揃いという出自に関しては、自分の性分的に好きではないが、アフロにカリプソ、パンク、オーケストラ、ソウルにサイケと、多彩な衣装を見事な着こなしでまとって、とろけるようなポップ・ワールドにいざなうことができるのは、その才気と卓抜な技術を持ってこそか。
キャッチーでありつつビター・スウィートで、メランコリアも漂うエンディング「Hope」まで、あっという間の47分。バンドのカラー的にはシャンパン、あるいはスパークリング・ワインといったところかもしれないが、僕はハイボールでもホッピーでも合わせられるもんね。なんの自慢だ!?
鈴木宏和
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?