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#114 マイルズ・スミス『You Promised A Lifetime』

鈴木さんへ

 ハイ、フィーバー333は、3曲でギブアップでした。ごめんなさい。ラウドなサウンドに、厳密にいうと、ジャンルは違いますが、かつてメタリカの代々木体育館でのライヴに行った時、会場はTシャツの白と黒、デニムの青で埋め尽くされていて、今と違ってその頃はスカートを履いていたので、そんな恰好の人は、私だけでした。なんてことが蘇ってきました。ところで、女性メンバーがいるんですね、そこは新鮮でした。
 最近訃報が続いていますよね。昨日なんて1Dのリアム・ペインが亡くなったというニュースに驚きました。まだ31歳ですよ。埼玉スーパーアリーナで彼らのライヴを観ましたが、あの歓声に囲まれて、グループと言えどもパフォーマンスするってどんな精神状態かと思いますよね。そこから舞台を下りた時との落差も。普通の人の何倍もの経験を短時間でやり尽くして、生き急いじゃったのかなぁ、なんて思ってしまいます。
 さてさて、今回紹介するのはUK出身のマイルズ・スミス。シングル『Stargazing』がUKチャートで上がっているのを見て、彼を知りました。
まだ、EPしかリリースしていなくて、夢として「アルバム・アーティストになること」という発言も興味深かったので、EP発売から数か月は経っていますが、今回取り上げることにしました。

マイルズ・スミス『You Promised A Lifetime』

 『Stargazing』を聴いた時、声は明らかに違うんだけれど、コールドプレイかと思った。その第一印象からマイルズ・スミスをチェックすると、なんとジャマイカ系イギリス人だという。子供の頃は、当然両親の影響でレゲエも聴いていたらしいけれど、成長する過程で影響を受けたのがクリス・マーティン(コールドプレイ)、マーカス・マムフォード(マムフォード&サンズ)、エド・シーランといった人達だとか。この3人の名前を知って、だから、この音楽になったんだと納得した。

 さらに育った街の環境も関係しているようだ。ルートンというロンドンから北へ50キロ、東京で喩えると、距離的に鎌倉あたりになるらしいけれど、この街にはアイルランド系パブがあって、そこでアイリッシュ・ミュージックが演奏されたりするらしい。UKでケルト文化圏といえば、スコットランドか、ウェールズだと思っていたので、これも発見だった。
 そんな彼が何を歌うか。まだ26歳の若さなので、やはり恋愛関係を歌っていて、とりわけ『Solo』という曲でやたら"too late"という言葉が連呼されるなと思ったら、天使のように見えていた女の子に振られてしまった歌だった。基本的に低音の野太い声なんだけれど、そこからナイーヴさが見え隠れするのは、彼の人柄なんだろう。

 アコギを抱えて歌うマイルズに伝説のブルースシンガー、ロバート・ジョンソンの姿が浮かんだりする。だから、ルーツにまで遡れば、アコースティック・サウンドとの親和性になんの違和感はないけれど、このところヒップホップとサンプリングのイメージが強すぎるからか、彼のアコースティック・サウンドがとても新鮮に響く。全米チャートではShaboozeyの『A Bar Song (Tipsy)』が14週も1位になっているし、揺り戻しというのもヘンだけれど、アコースティック・サウンドにもっと注目が集まるといいと思う。
 EP『You Promised A Lifetime』に『Stargazing』は、入っていないのがちょっと残念だけれど、このシングルヒットをきっかけに願望をこめて、来年アルバムリリースという感じになれば、いいなぁ~。
                            服部のり子

 


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