#114 マイルズ・スミス『You Promised A Lifetime』
マイルズ・スミス『You Promised A Lifetime』
『Stargazing』を聴いた時、声は明らかに違うんだけれど、コールドプレイかと思った。その第一印象からマイルズ・スミスをチェックすると、なんとジャマイカ系イギリス人だという。子供の頃は、当然両親の影響でレゲエも聴いていたらしいけれど、成長する過程で影響を受けたのがクリス・マーティン(コールドプレイ)、マーカス・マムフォード(マムフォード&サンズ)、エド・シーランといった人達だとか。この3人の名前を知って、だから、この音楽になったんだと納得した。
さらに育った街の環境も関係しているようだ。ルートンというロンドンから北へ50キロ、東京で喩えると、距離的に鎌倉あたりになるらしいけれど、この街にはアイルランド系パブがあって、そこでアイリッシュ・ミュージックが演奏されたりするらしい。UKでケルト文化圏といえば、スコットランドか、ウェールズだと思っていたので、これも発見だった。
そんな彼が何を歌うか。まだ26歳の若さなので、やはり恋愛関係を歌っていて、とりわけ『Solo』という曲でやたら"too late"という言葉が連呼されるなと思ったら、天使のように見えていた女の子に振られてしまった歌だった。基本的に低音の野太い声なんだけれど、そこからナイーヴさが見え隠れするのは、彼の人柄なんだろう。
アコギを抱えて歌うマイルズに伝説のブルースシンガー、ロバート・ジョンソンの姿が浮かんだりする。だから、ルーツにまで遡れば、アコースティック・サウンドとの親和性になんの違和感はないけれど、このところヒップホップとサンプリングのイメージが強すぎるからか、彼のアコースティック・サウンドがとても新鮮に響く。全米チャートではShaboozeyの『A Bar Song (Tipsy)』が14週も1位になっているし、揺り戻しというのもヘンだけれど、アコースティック・サウンドにもっと注目が集まるといいと思う。
EP『You Promised A Lifetime』に『Stargazing』は、入っていないのがちょっと残念だけれど、このシングルヒットをきっかけに願望をこめて、来年アルバムリリースという感じになれば、いいなぁ~。
服部のり子