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小さな防音室の理想と現実

防音室があったらなぁ。

以前は防音室と言ったら、専ら演奏用でしたが、最近では、YouTubeなどの収録や配信、オンライン会議・レッスン・ゲームなど、その用途が広がっています。逆に言えば、「趣味の演奏だけのために、防音室を買うのは厳しい」とためらっていた人が、家族を説得しやすくなったとも言える状況です(笑)。

当方、仕事の関係で、ヤマハ、カワイ、オーダータイプと、異なる3種類を購入した経験がありますが、「イメージと違ったな」と感じるのは、いつも、実際に使い始め、しばらくたってから。購入前に、具体的な利用イメージを描くことができたら、どんなに良かったかと思います。

防音室に関する記事は、カタログに即した商品紹介記事と、「こだわりの防音室を作りました」といった、専門家の記事が多く、どうにも、知りたい情報に辿り着かない。スペックや「音のこだわり」といった内容は、そういう記事にお任せし、「一般の人」が購入を検討する際に知っておくべきポイントを、実体験をもとに整理しました。
(※本記事では、業者が現場で組み立てるユニット型の防音室をイメージしています。)


防音室は「音を減らす」ための装置

防音室というと、完全に音が漏れないことをイメージする人もいますが、自宅に設置するユニット型の防音室は、完全防音ではありません。「生活音レベルまで音量を下げること」が防音室設置の主な目的。そういう理解が、実態に一番近いと思います。
はじめに「防音室内で出す音の大きさ」を想定し、防音室の性能を選びます。例えば、人の声だけならば、高い性能は必要ありません。用途を見極め、適切な性能を選ぶことで、値段を抑えることができます。

大きさをイメージする

大型家電なども似た傾向がありますが、実際に、部屋に設置されると「予想以上に大きい」と感じることが多いです。購入前は、「箱が設置される」というイメージを持ちますが、実際には、「壁で部屋を仕切られる」という感覚に近いように思います(高さがあるので、圧迫感がすごい)。
設置前に、ビニールテープなどで、床面に寸法通りの印をつけ、壁が立つことをイメージしてみると良いと思います。

設置場所を確認する

設置後は動かせない

小さな防音室なら、設置後も押せば動くのでは?位置の修正ぐらいはできるのでは?なんて、昔は思っていました(笑)。でも実際は、一度設置してしまうと、基本的には動かせません。動線も含め、事前にしっかりと検討が必要です。ちなみに、重さという意味では、防音性能が高いほど、重くなりますが、例えば、カワイのナサールでは、2畳で400キロほどです(1点にかかるわけではないので、通常は問題ない)。
見落としがちなのが、ドアの開閉に必要な空間、あと、換気扇が外に飛び出して付きますので、そういった圧迫感も考慮する必要があります。

思った以上に難しいエアコン設置

カタログを見ると、エアコンは、防音室1.2畳以上は設置可能と書いてあります。が、狭い防音室にエアコンを設置したら、風が直撃しますね。そんな運用上の問題の他にも、防音室内のエアコン本体から屋外の室外機までの経路について考えなくてはなりません。排水がうまくできるかどうかという問題(壁穴の位置と勾配の関係)も解決する必要があります。また、防音室を設置する部屋に、元々ついていたエアコンとの兼ね合いも出てきます(壁穴や専用コンセントなど)。壁に穴をあける?室内に水を貯めて、都度捨てる?嫌だなぁ。
そういう諸々の問題を考えると、小さな防音室の場合は、音を出すときだけドアを閉める、それ以外の時間は、ドアを開けて換気というのが、実質的なのかなと思います。ただ、1.2畳程度の防音室ですと、夏はあっという間に汗だくになります(汗)。防音室が2畳くらいあると、事前に、設置してある部屋のエアコンで冷やしておくことで、ある程度、長持ちします。

1.2畳だと、こんな広さ(旧型)

閉塞感を和らげる

壁で囲って音を漏れないようにする。それが防音室です。だから、当然と言えば当然ですが、小さな防音室では、閉塞感がかなり強くなります。閉所が苦手な人は、オプションで窓をつける、ガラス戸を選択するなどして外の光を取り込むと、印象がだいぶ変わります。また、広さが取れなくても、高さのあるモデルを選択すると、開放的な空間へと変わります。
短時間の利用であれば、それほど違いは無いと思いますが、長時間を想定するならば、優先順位が上がる項目だと思います。

通信環境を確保する

仮に演奏目的だとしても、防音室内でスマホを使うなど、通信環境も気になるところです。結論から言うと、防音室の構造・素材が原因でwi-fiが繋がらないということは基本的に無いと思います(隣の部屋でwi-fiが繋がるなら、防音室内もOK)。メーカー公式ではありませんが、壁に穴をあけてケーブルを通し、パテで隙間を埋める方法で、各種有線接続も可能です。ちなみに私は、施工業者に相談して加工してもらい、音楽関係のケーブルを通しています。

納期はどれくらい?

欲しいと思って注文しても、すぐに届くわけではありません。時期的なものや、在庫品があるかどうかというところも関係するのだと思いますが、私の場合は、仕様を確定し、正式に注文、工場でパーツを作成し、設置場所の下見があって、という手順で1か月かかりました。これが通常と比較して、速いか、遅いのかはわかりません。当日の組み立て作業はお一人で、半日程度で出来上がりました。

新品と中古はどちらがお得?

定価を見ると、中古価格と大きく離れているように感じますが、実際に見積を取ると、キャンペーン値引きがあったり、オプションがついてきたりと、価格が接近していくことがあります。本体のほかに、運送代、エレベータ荷上げ代、組み立て代が掛かりますので、それらが含まれているのか、今後加算されるのかを確認したうえで、全て込みで比較すると良いと思います。
新旧で性能の優劣もありますが、個人的には、最近のモデルの方が、防音室内が明るく開放的になっているように感じ、そこに価値を感じます。部屋に置いた時に溶け込みやすく、生活にもなじむ。それが愛着に繋がるからです。

外が見えると、心も軽やかに(現行)

どのメーカーを選べば良い?

コロナ禍以降、防音室の種類が一気に増えたように感じます。最終的には予算を踏まえたうえで、用途に合ったもの、気に入ったものを選べば良いと思いますが、私は、少々高くても、あえて王道である、ヤマハかカワイをオススメしたい。その理由は、「最後どうするの?」という問題が付きまとうからです。
購入時は、ある種の興奮状態であり、バラ色の生活を描きますが、いつか、その購入した防音室を手放す時が来ます。それは、引っ越しなのか、「使わなくなって」なのか、わかりませんが、何らかの方法で処分しなければならない。そんな時、ヤマハやカワイなら、中古の市場があるので、売却できる可能性が高いのです(業者が引き取りに来てくれます。)。

以上、何らかの参考になれば、嬉しいです。

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